パーティーを解消しない理由
邸宅の正面玄関にいた無法者を片付けると、
「急ごう。こうしている間にも、令嬢の命が危ない!」
バーンは先頭を切って邸内に躍り込んだ。
「バーン、少し落ち着きなさいよ! 邸宅の中でも、どこかに無法者が隠れて、待ち伏せしているかもしれないわ」
と、マリーナ。これは正論……、普通の発想であろう。
しかし、バーンの耳には入らない。後ろを振り返ることもなく、先に進むばかり。マリーナはまたもや「ふぅ」と息を吐き出し、仕方なくバーンを追う。サイラス、エディ、ジギスムントも同様である。
このように、実力がないのに激しく独善的、トラブルメーカーで協調性ゼロのバーンであるが、どうして他のメンバーはバーンとのパーティーを解消しないのであろうか。合理的に考えれば、バーンを追放し、もう少しマトモな戦士を加えれば、パーティーの戦力は格段に向上するはずである。実は、このようなことは、バーンを除くパーティーのメンバーは、重々承知していた。しかし、世の中、合理性ですべてが片付くわけではない。
マリーナの場合は、彼女自身がバーンとは相思相愛の関係と思っているためであり、エディの場合は、バーンとは幼馴染みの自分がバーンの保護者あるいは兄貴分としての役割を果たさねばならぬという義務感をもっているためであり、サイラスの場合は、バーンを観察していると彼の独特の知的好奇心が満たされるためであり、ジギスムントの場合は、そもそもサイラスの用心棒としての役割を果たしているだけに過ぎない。
このように、各人各様に、合理的ではないがそれぞれの理由があるため、バーンのパーティーからの追放あるいはバーンとのパーティーの解消には、まったく考えが至らないのであった。
バーンたち一行は邸内の長い廊下をひた走り、廊下の突き当りにあったドアを開け、大きく開けたスペースに出た。そこでは高い天井に巨大な絵が描かれ、床には幾種類もの大理石により幾何学模様が構成されている。また、壁際には美しく繊細な装飾が施された太い柱が幾本も立ち並び、壁には大きな窓が幾つも設けられている。ここは邸宅の大広間のようだ。
そして、その大広間の真ん中には、黒いフード付きローブを着た魔法使い風の人物が、どこからか持ってきたのであろう、玉座のごとく宝石や貴金属がコテコテにあしらわれた椅子に腰かけている。その周囲には、一見でそれと分かるいでたちをした数名の無法者がたむろし、黒いローブの人物のすぐ前には、美しい女性と風采の上がらない男が縛られ、転がされていた。その女性は、人質にされているという令嬢であろう。
「おまえたちが悪党だな、今すぐ令嬢を解放するんだ! さもなくば、ここにいる将来の大騎士、バーン・カニングが、直々に成敗してやる!!」
例によって、バーンがいきなり大音声を上げ、剣を抜いた。




