僕の決意
僕は妻の美紀が必ず帰って来るものだと信じて、まずは愛と別れることを決心した。
壁の時計を見ると時刻は六時半くらい。
愛は夕食でも食べているだろうか。
それとも、風呂だろうか。
かばんの中からスマホを取り出し、愛に電話をかけてみた。
すると、三回目の呼び出し音が鳴りつながった。
「もしもし、どうしたんですか?今、食事中でーす」
と、ずいぶん呑気な口ぶりだ。
「終わったら会えないか?話がある」
「話し?いいですよ。どんな話しですか?」
「それは、会ってから話す」
愛は、そう言われ一瞬、ひるんだかのように黙った。
でも、すぐに、
「暗い話しなら、嫌ですよ…。私、改心したんだから!」
僕はそれには応じず、
「とにかく、あとでな。食事終わったら連絡くれ」
そう言って、早々に電話を切った。
僕の気持ちは既に固まっていて、決して揺るぎないものになっていた。
僕は食事をとる気分にはなれず、ただ、黙って煙草を吸っていた。
居間で煙草を吸っても美紀に注意されない今この時、僕は初めて独りという気分を味わった。
それはひどくさみしく切ないものに感じられた…。
きっと美紀もこんな気持ちになったのではないだろうか…。
そう想うと悲しいという気分にもなった。
そんな時間が三十分くらいはつづいただろうか。
スマホがうなりをあげて鳴りだした。
気付いたとき、僕は涙を流していた。
それに対し僕は驚いた。
独りという辛さ、美紀を裏切ったという罪悪感…。
様々な感情が渦を巻いていた。
電話の相手は、愛からだった。
涙を一拭きしてから、電話にでた。
「もしもし。ご飯食べ終わりましたよ。来ますか?」
「ああ。今からいくから」
僕は出来る限り冷静を装いながらそう言った。
そして、一息ついてから家を後にした。
車を運転しながら僕は思った。
たかが不倫?されど不倫!
自分自身を諭すようにそう心に刻んだ。
僕は美紀を甘くみていたようだ。
その証拠に、妻は出て行ってしまった。
まさか、こんなことにはなるわけがないと、高をくくっていた。
自分はとんでもない馬鹿な男だと思った。
そのようなことを考えながら十五分程走って、愛の住んでるアパートに着いた。
これからどんな修羅場が待っているだろうかと考えると若干だがゾッとした。




