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その後。
縛り上げた万禮は、飛象と黄麟という、胤の高官でもあるダンテとの内応者に預けた。
彼らも目を白黒させていたけど、万禮の捕縛作戦自体は前もって大枠を伝えてあったので、すぐに彼らの部隊を出動させて事態の鎮静化に動いてくれた。
王をないがしろにする奸臣を罰するという名目で近衛軍も動かし、降ってわいたような大騒動はすぐに落ち着いていった。
黄麟いわく、「万禮を殺さなかったのがよかった。そのほうが彼の影響下にある者たちを動かしやすい」とのことで、これはダンテも同じことを言っていた。
私たち四人はフェイルーを飛ばして夜の中を駆けに駆け――さすがにほかの動物は連れてこなかった――、さすがにダンテとホウメイは余裕があったけど私とアゾは疲労困憊の中、ついに国境に出てハウザール軍に保護された。
ダンテとホウメイは手勢だけ連れてすぐに胤に戻り、飛象たちと事後処理に当たった。
もともと万禮には政敵が多いというのは本当だった。
彼の失脚とともに万禮の胤での影響力は地に落ち、悪辣な宦官を廃した政治体制が早急に構築されていった。
ホウメイが、ダンテからの進捗の手紙を毎日ハウザールに届けてくれた。
私は、無事を喜んでくれたイトラとともにハウザールで数十日を過ごして。
そして、胤に呼ばれた。
■
後宮はすでに、解体が始まっていた。
胤の王様に呼ばれた私は、ダンテとホウメイを伴って王座の前に立った。
かしずく必要はない、と事前に言われていた。
「あなたが、一国の王女ながら自ら我が国に乗り込んで奸臣を倒し、後宮を廃するに至らせた女傑か」
そう言う玉座の王様は、十歳という年に相応の顔立ちで、こう言っては失礼だけどとてもかわいらしい。
会うのは二度目だけど、今回のほうが前よりもずっと明るい表情に見えた。
「はい。後宮を廃止、というのは私の望みではないといえば嘘になりますが、それはあくまで私情によるものでして。今回の件は、胤の国王陛下をないがしろにする宦官を退けたことこそが誉れであると――」
その私の言葉の途中で、幼王がかぶりを振った。
「よい。余も十を数える歳なのだ、これでも分別くらいはつく。後宮などというおぞましいものを、今は牢にあるあれが再び設けると言い出した時、余はその言を退けられなかった」
王様が悔しそうに表情をゆがめながら、続けた。
「今はまだ余は子をなすことできないが、後宮が当然のものとして確立されてしまえば、余は十五の成人の儀を迎えるとともに、それに通うこととなっていたであろう。国体の欲望のつけを罪もない女人にのみ負わせる、人を家畜にするがごとき悪の宮と、分かっておるのにな。……礼を言うぞ、璃杏殿」
……さ、さすが王様。十歳とは思えなく禮しっかりしてるし、しっかりしゃべる。
かわいらしいなんて言って、失礼しました。
「あの」今度は私のほうから口を開いた。「後宮妃たちの、その後の処遇について。こちらこそ、ありがとうございました」
「なに、そちらからの提言の合った通りゆえ、大儀ではない」
ダンテが書いてくれた手紙で、彼女たちのことはハウザールにも知らされていた。
国に帰れる人たちは、国へ。ソウシソウのように帰ることができない――帰りたくないという人たちは、国から仕事を斡旋して、胤やその他の、彼女たちが望む場所へ。
それぞれに暮らしていけるように、偏見や文化の違いで苦労しないよう胤がバックアップしてくれていた。
中には後宮で成り上がろうと考えていた女性もいて、彼女たちとしては後宮の解体は望まないものだったらしいけど。……それは、申し訳ない。
王様との謁見の後、ソウシソウとも再会できた。
「どこまでも暗く閉じていくばかりだと思っていた私の人生に、あなたはとんでもないことを起こしてくれたわ」
そう言った彼女は、子供向けの塾の先生をやっていた。
ちょっと厳しそうなイメージあるなあ……と思いつつ、授業風景を覗かせてもらった。
すると、大変そうながらも明るい顔で奔走しているソウシソウが見られて、こっちまで楽しくなってしまった。
ほかの後宮妃とも、何人かは会えた。
お茶を飲んだり、胤での暮らしがどんなものかを教えてもらったりした。
でも、すぐにお別れの時がきた。
ダンテやホウメイが、胤でやるべき仕事が終わったので。
私たちは、全員でハウザールに帰還した。




