5-9 シェリーの奮闘
追い詰められたシェリーたちに応援の人々は向かって来ている気配はない、、どうにかしなければ 彼女は必死に対策を考えていた。
もう一度ワイバーンの攻撃で教会の壁は崩れそうだ、ならばするべきは、、
考えが纏まる間もなく二度目のワイバーンによる体当たりが始まった。
「「「きゃーーあ!!」」」
物凄い衝撃と共に皆の悲鳴が教会内に響き渡った。
「お お姉ちゃん ワイバーンが、、」
とうとう壁が破壊されて空いた穴から魔物の顔が差し込まれていたのだ。
・・ひっ 何なのあの顔は、、、
ワイバーンの目は勝ち誇ったように内部にいて震えている人間に視線を向けていた。
「・・ここは私に任せて そのドアから隣に早く移動して!」
夢中になって泣き叫ぶ子供や母親を隣の部屋へと指示を出して移動させることに全力を尽くす彼女であった。
「「「お お姉ちゃんも早く、、ひぃぃぃぃ、、」」」
ワイバーンが逃がすものかと壁の穴を広げ始めたのだ。
「・・私は考えがあるから、、早く部屋に入って内部から鍵を閉めて!」
壁の厚さに比べれば魔物にとって室内のドアなどは物の数ではない、ましてはワイバーンは1体ではなく数体が協力して壁の破壊に共同で行っているが見える。
「「お姉ちゃん 早く 早く、、死んじゃいや、、、」」
締め切ったドアの向こうから悲痛な声が聞こえてきたが、シェーンは腹が座ったかのように魔物達の侵入する様子に見入っていた。
・・母に救われた命をここで皆の為に使うまでよ、、お母さんそしてタローさん力を私に、、、
そう言いながら太腿に隠してあったレーザー銃を取り出して、ドアの前で魔物に向けて構えて行く。
・・タローさん 緊急以外は使用を禁止されていたけど、今は誰も見ていないし正に非常時よね、、
彼女は震える手で今まさに教会内に入り込んで来た魔物に向かって引き金を引いた。
「住民を見殺しには出来ない 誰か教会へ、、、」
「ギルマス此方も手一杯で負傷者が多数です、残念ですがとても支援の手が、、、、、」
絶望的な報告が先ほどから彼の元に次々に届いていた、それでもギルマスは何か有効な手は と模索していたのだが、、
「ギルマス 朗報です!討伐隊の者達が帰還して来ました!今先だって何名かの者達がギルドに到着しました!」
うおぉぉぉぉぉ!!!
途端にその知らせに皆から歓喜の声が響き渡る。
・・そうか よくぞ戻って来てくれた、、勝利の目がまだ残っているんだな?!
先程からワイバーンに押されていた暗い空気がいっぺんに明るく希望に満ちた声に替わる。
「「「ギルマス ギルマスは何処だ!!」」」
「ああ ここだ!良くぞ戻ってきたな、感謝する、、」
戻ってきた冒険者達は手短に報告をして本体の到着もすぐ間近だと報告を行う。
「到着したばかりで申し訳ないのだが、近場の教会をワイバーンが襲っているという情報が入った、出来ればその現場に誰か、、、」
「俺が行きます!」
話の途中で一人の男が顔色を変えて志願をすると再び外へ出て行こうとする。
「ま 待て 一人では、、」
「私に任せて下さい!皆さんは他の場所へ、、、」
「「待て 危険だ タロー!!」」
必死に止める声を彼は無視してギルドから飛び出して行く。
「ま 不味い一人では、、誰か何人か教会へ、、、」
「いや 追うな!彼に任せてやってくれ、、彼ならば必ず成し遂げる筈、、、」
追従する冒険者を止めたのは他ならぬギルマス自らの発言だった。
「「しかし ギルマス、、」」
「いや、、、確信はないが 彼なら救出できると私は信じている、、」
「「「・・ギルマス?、、、、」」」
ギルマスの奥歯に何か詰まった様な発言に皆が黙り込んでいた。
・・シェリーさん いま行きます!それまで持ちこたえて下さい、、
懸命に路地を走り出すタローは必死に祈りながら教会へと懸命に向かった。
「こっちに来ないで 撃つわよ、、、」
だがワイバーンには残念ながら言葉は通用しない様だ、それどころか目の前に素敵な餌があると判断したらしく、のそのそとシェリーに向けてふてぶてしい態度で近寄り始めた。
「本当に撃つわよ! くたばれ?!」
目の前数メートルに近寄ったワイバーンに対して彼女は遂に銃の引き金を引いた。
余りの恐怖にある意味めくら撃ちに近い発射であったが、相手は10メートルはあると思われる大物であり、両翼を広げていた事も幸いして見事に翼の中心辺りに大穴をあける事になった。
ぎゃおおおおおーー?!
彼女からの思わぬ反撃にワイバーンは面食らい室内にて暴れ出す。
そのワイバーンに続いて壁から入ってこようとした次のワイバーンと激しく衝突して、二体が絡まり転倒する羽目になった。
・・へっ?当たったの、、、何か暴れているけど、、
目を閉じて撃ったために当初は何処に当たったのか彼女自身も確認していなかった、1体のワイバーンは激痛からか今だ暴れまわり、二体目のワイバーンはそれに腹を立てたようで暴れまわるワイバーンの首元に噛みつき部屋の端に放り投げたのだ。
室内に大きな音が響き天井からも崩れた石が落下してくる、ワイバーンは見かけより重くはない?空を飛ぶ為にはそれなりに軽量でないと長い時間は飛び続けられないからだ。
しかしその図体は大きい、その為に重量は其れなりにあるのだ。投げつけられたワイバーンは打ち所が悪かったのか片翼が根元から折れ曲がり、更なる激痛に奇声を発してのたうち回っていた、その体が倒れた場所が何とたまたま地下室への入り口の隠しドアで、激しく暴れるワイバーンにより半壊していた。
「「「ぎゃーー ワイバーンよ ワイバーンが襲ってくる 助けて!!」」」
地下室に隠れていた人々からの一斉に甲高い大きな悲鳴が聞こえてワイバーン達の興味がそちらに移って行った様だ。二体目のワイバーンが地下室への入り口ドアーに強靭な口先をぶつけると、堪らずに地下入り口のドア-がメリメリと壊れ中に隠れていた大勢の人を確認する事となった。
食べ放題?巣へ運び放題と二体のワイバーンは興味をシェーンから大勢の人間へと嬉しそうに目標を変えた模様だ。
「「「「助けてーー ひぃぃぃ 早く助けを、、、、」」」
「俺は不味いぞ 食べるならこのクソ野郎を、、、」
シェーンは今の声に記憶があったこの教会の専属牧師の声であった、、。
「お前がこれ以上は入れないと無理やり扉を閉めさせたのに結果的に見つかったじゃないか!」
・・あの声はこの町の有力者の声に間違いない、、、
「う 五月蠅い、ここは元々牧師である私専用の隠れ場所だ、お前達みたいな人間を守るべき場所ではないのだ!」
「何を言うか この教会は儂の親父が大金を寄付して出来た教会だ、その大儀ある子孫の儂を守らなくてどうすると言うのだ!」 ・・・
・・・あの二人何を言い争いをしているのだろうか?
地下室に居る他の住民もそしてシェリーも半ば呆れたように地下から聞こえてくる怒鳴り合いの声を聞いていた。
ワイバーン達も当初は少し呆気にとられ二人の大声での言い争いを見つめていたが、やがて煩わしくなったのかいきなり体を沈め長い首を挿し込むと言い合っていた片割れを口先にしっかり咥えてしまう。片方もそれにつられたのか負けじと首を伸ばしもう一人の牧師に噛みついて行く。
「「ぎゃーーー 痛い 痛い!助けろ 早く!!」」
忽ち地下室から引き出された二人は高く持ち上げられて勢いをつけ地面に叩き落した。
「「ぎぇぇぇぇーーー?!」」
体全体が打ちつけられて何度もバウンドし体の自由が利かなくなった様だ、其処に魔物の片方の足で押さえつけると再び鋭い口先により二人は体が裂けて半分になっていく、その半分を美味そうに飲み込み始め、最終的に一人の人間を食するのに大した時間は必要ではなかった。
「「お姉ちゃん 何が起きているの?説明して、、」」
シャリーが守っていたドアの向こうから、不安からか子供達の声が聞こえて来た。
「・・しっ 静かにして、、後で説明するから、、、」
とても後から説明できるような事ではないが、そう言って子供達を諫める彼女であった。
大きな体ではとてもまだ満腹な状態ではないみたいで、魔物の2体は再び地下室内を覗き込み始める。
途端に地下から無数の阿鼻狂乱の声が響いて、シェリーはようやく正常な判断が出来る状態になった。
「止めなさい!今度こそその体に当てて見せるから、此方を見なさい!」
ありったけの大声で彼女は注意を此方に向けようとワイバーンに向けて叫び声をあげた。
それに反応したのか2体は当初の餌?を再確認したらしく、互いに顔をチラリと見合わせるとその巨体をゆっくりとシェリーに向け始めたのだ。
・・ひぃ 2体もどうすればいいの?タローさん助けて、、、
後退りしながら彼女は再び震えだした手で1体のワイバーンへと銃口を向けて行く。
・・運よく1体を倒してもその間にもう1体に襲われる?! 助からないわ、、、
彼女の目から涙が溢れだし、ただでさえ狙いが付けにくいのにどうしようもない状態へと彼女は追い込まれていった とその時に。
「・・くそワイバーン、こっちを見ろ!」
ワイバーン達が侵入してきた入り口に一人の男が飛び込んでくると、2体のワイバーンに大声で怒鳴ったのだ。
・・誰?誰なの、、涙で良く見えない、、でもあの声は、、、、
その男は声に反射して振り向いた先の魔物の頭に正確に赤い光線を命中させると、そのワイバーン頭部が半分綺麗に吹き飛んでしまう。
続けて振り向いたもう1体も同じ運命であった、あっと言う間にあの凶悪なワイバーンが大きな地響きを上げて教会の床へと倒れ込んでしまったのだ。
「・・シェリーさん 怪我は無いか?!」
涙でその男の顔がぼやけてはいたがその声は確かに想像した人物の声に間違いはなかった。
・・た タローさん?!
彼女は夢中になりその男の胸元へと飛び込んでいくのであった。
「うん 無事でよかった、、間に合って本当に良かった、、、」
その男もしっかりと彼女を抱きしめてにっこりと微笑む。




