3-1 目指すは森の最深部
ドタバタしながらも二人は旅立つ事となる、目指すはこの森の最深部に近い場所、何やら不可思議な遺跡らしいものがある場所となる。
森の深部へと踏み入れて約一週間が過ぎる、奥に入れば入る程魔物の手強さは増してくる。
タローとしては真面に魔物と戦えたのは当初の4・5日だけになる、どう見ても一人で対応するには無理があると言う辛い現状が待っていた。
「ひっ 師匠 またあいつだ、宜しくお願いします、、」
慌てて彼女の後方に逃げて木の陰に隠れ始める。
「馬鹿者が、、少しは手助けしてレベルアップの点数を稼がんか!」
キングスネークと呼ばれる巨大な大物が木を倒しながら突入してくる。
「わ 解かっていますが、相手が悪い、、、」
当初この魔物と初めて対応した時に散々な目にあい、特に魔物が発する毒液に汚染されて地獄の苦しみを味わったトラウマが頭から離れないのだ。
師匠がぼやきながら魔物と激突する、二・三合の切りつけ後に魔物は頭を見事に切断されたが暫くはバタバタと身を捩らせて生きていた、やがて大人しくなっていく。
「・・お見事、、流石師匠、、、」
「ふん この程度は当たり前だ、レベルはどうだ 少しは上がったのか?」
「はい、、今は 37まで来ました」
「うーん 流石にその程度ならこの魔物は無理があるかもな、、」
そうは言っても出発してから5日後でレベルが2も上がる事は異常だ、それだけこの森は特別な魔物達が住んでいる事になる。
「師匠 そろそろ野営の準備もしなければ、、」
「そうだな、、もう少し先に見晴らしの良い場所がある そこで野営とするか、、魔石と少し肉を回収してくれ こいつは淡白な肉で美味いからな」
彼女一人なら無駄な戦いを回避しながら先へと進めるのだろうが、同行の彼はどうしても足枷になるケースが増えて来た、しかしだからと言って彼女が手を出し過ぎると彼のレベルが上がらずに益々苦労する事となる。
「・・もう少し 機敏性があれば最悪逃げおおせる事も可能性があるのだが、、」
「・・無理です 師匠の様に木から木へ身軽に移動できません」
森の民と呼ばれるエルフたちは敵わぬ乃至面倒と感じるとその敏捷性により逃走する技術に長けていた。
これに関しては持って生まれた素質のひとつであろうから人族が真似するにはかなりのレベル上げが必要となってしまう。
「・・師匠 まだ目的地の、、、」
「ああ 1/3程度を進んだぐらいだな、、」
落胆して今回の同行を少し後悔する彼であった。
「・・そう 悲観するな、そのうちレベルが上がればお前でも対応できるようになるさ、、」
彼女だって最初から強かったわけではない、一人でこの森に棲まざるを得ない環境が彼女を強くしたのだが、エルフとは時間観念が違う 彼女等は人族とは違う長命を利用してコツコツと個人のレベルを上げて行ったのである。
「まぁ 考えれば当初は私も万一を考えて結界のすぐ近くでの活動だったからな、、でもお前達短命族は無理を承知で活動しなければ強くならないしな、、おっと 開けてきたぞ ここが今夜の野営地だ」
「・・ふう 今日も無事に生きのびた、、そうだそろそろ師匠の結界もきつくなるのでは?」
「ははは この辺りではまだ余裕だ 安心しろ、、」
さらに最深部近くになると流石に彼女の結界でも防ぎきれない状態になるらしい、それまでに少しでも彼のレベル上げが必要となる。
「そうですか、、ならば今夜も安心して眠れますね、、」
「過信はいかんぞ いつ何時森の中央部に住んでいる魔物が流れてここまで来るかもしれんからな」
強い魔物が縄張り争いに負けて他の地区に移動してくることがある、その地区に元々住んでいる魔物達にとっては迷惑な話であろう。
彼が野営の為の設営準備をしている間に彼女は10メートル四方程度の結界を張る為に四隅に魔石を地面に埋め込んでいく。
「・・おっ 師匠も結界を張り終わったか、、此方も野営テントを張り終えたし食事の準備を始めるか」
新しいスキルのお蔭で材料さえあれば新虚空庫内にて短時間で調理ができる、当然今後製作できる物の限界もあると思えるが今は重宝して利用しているのが現状でもある。
「・・火も使わずに調理できるが、どの様な原理で出来るのか不思議なスキルだ、、、」
彼は簡単な生活魔法程度なら覚えたが、それなりの魔物相手にはとんと役には立たない。何とかして剣の腕を上げて行くしかないのだ。
「・・でも かなり剣も修行しているがそれなりのスキルには恵まれないな、、」
ふとほぼ一年程前に別れたパーティ員たちの事を思い出す。
「・・あいつ等は元気にやっているのかな?また新しいスキルを各自が覚えて活躍しているのだろうな」
皆と別れてからまさかこんな秘境での修行を行っているとは元のメンバー達が聞いたらさぞかし驚くだろう。
「・・彼女も元気かな」
幼馴染のクララの最後の夜での逢瀬がふと頭に浮かぶ、、、
「この世界で初めての女性だったな、、あれから一年 益々綺麗になっているのかな、、」
彼女は彼との別れがつらく泣きながら彼に縋り付いて来た事を思いだしたのだ。
「まぁ、、別の男を見つけて元気に活動しているだろうな、、、」
「うん 何だ?別れた女の事を思いだしたのか?何なら私が慰めてやろうか?」
ひっ 師匠!何時の間に、、、
突然の問いかけにあたふたと騒ぎ出したタローであった。
「・・何時の間に?私がテント内に入ったのが気が付かなかったのか 不用心め!」
言葉はきついが目は優しさに溢れてはいた。
「おい そこをどけ!ベットを出すからな、、」
彼女のお気に入りのベットを今回の遠征でも持ち運んでいた、お陰で彼女の荷物をかなり彼が持ち運ぶこととなってしまう。
「・・ふむふむ この感触、、今夜も熟睡かな?どうする お前もこのベツトに一緒に寝るか?」
結構です! 強く否定はしたが地面に毛布を置いただけの睡眠は体には少し疲れが残る。慣れの問題もあるが彼はまだそこまで野営には経験が足りなかった。
「さて 食事は出来たか?早く食して休むぞ、、、」
慌てて虚空庫を確認すると既に食事の準備は完了していた。
「・・あっ 調理完了してます、直ぐに準備しますので、、、」
慌ただしく食事の準備を開始するのであった。
「・・腹も満腹だ お前のスキルは便利だな、、異世界人は本当に変ったスキルを賜るな、、発想の違いなのかな?知識量の違いも考えられるか、、まぁ いい 寝るぞ、、」
師匠は寝心地の良いベットに潜り込むと幸せそうに眠りに就く。
やれやれ 少し外で星を見ながらお茶でも飲むか?
テントの前で焚火をして此方でコーヒーに似た豆をすりつぶして小型の湯沸かし容器に投入して一息つくと独特の香りが漂って来た。
ふう、、独り言は少し注意しないとな、、、
少し反省をしながら夜空を見上げる、森の狭間にある空間から星を見上げて改めてここが異世界であると思い知らされる。自分の知らない星座や小さな月が三つも浮かぶ夜空に深いため息を吐く。
さて ここまでにして俺も寝るか、、、
火の始末をして冷たい大地にひいてある毛布の中へ彼は潜り込む。
タローは苦労しながら森の最深部へと移動していく、ようやく旅の終わりが最終に近付いたのは更に2週間近くが過ぎる時だった。
「・・いいか ここからはエルフの村が近い、なるべく近寄らずに迂回しながら村を通過する予定だ。くれぐれも周りに注意をしてくれ、、」
・・了解です つい 小声になる。
こっちだ、、、
右へ行ったり左に向かったり魔物もついでに出てくるが、師匠が瞬殺にて騒ぎを最低限に収めて行く。
それは突然だった、、、、
「おい お前等何している?」
木の上から突然に声がかかる、反射的に師匠が剣を構える。
「あん?キャロルじゃないか お前は村へ立ち入り禁止だろう!」
・・・ゲルンか!?
驚いたように互いが見つめ合っていたが、軽やかに彼が木の上から飛び降りて来る。
「お前 こんなところで何をしていた?」
「ば 馬鹿 聞いているのは俺の方だろう、、」
「ははぁ 狩りをサボって昼寝の最中だったな、、、」
「さ さぼってはいない 少し疲れたから休憩中だった、、それより何をしに来たんだ?」
「・・お前の隠遁は名人クラスだな 良い方に使え、、」
「う うるせいわい!それよりなんでこんなところに居るんだ?」
どうやらどちらも脛に疵を持つ者同士らしい?
「・・うー 仕方ないな、お前は秘密を守れるか?そう約束するなら話してやる、、」
「おっ 何か面白そうな展開だな、、よっしゃ 俺も男だ 森の精霊に誓って約束を守る!」
どうする・・? そんな目でタローに視線を向ける。仕方ないとタローも了解をするのだ。
「おい 約策したぞ、早く話せ!」
「はぁー 実はだな私が追放になった例の儀式場に用があるんだ、、、」
「何だと あそこは幼子は、、誰もいないな、、いや聖なる場所だから特別の許可が必要な場所だぞ」
「お前に聞くが、、あれは何だと思う?」
「儀式場か?無論聖なる場であろう?」
ふふん と彼女が鼻で笑う。
「おっ おい 何だその態度は?そうやって教わってきたんだ、、何故にそんな態度を・・」
「・・お前はめでたいな、、その言葉一つで何も考えずに信じ込めるのだから、、、」
暫くは二人の言い合いが展開していく。




