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第9話

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 ふた晩目の警護の日。サーシャは重たい腰を上げて、馬車を降りた。足が地面に着いた瞬間、わずかに身体が重く感じた。


 あの面倒くさいイヴァンと関わらなければならないと思うと、気分は沈む一方だった。あいつ、いちいち俺に突っかかってくるから、心底面倒くさい……。


“くすくす”

“サーシャ元気ない、くすくす”

“面倒だね、くすくす”


 耳にまとわりつく声に、サーシャは軽く眉を寄せる。うるさい。いらん代弁するな。


「ほら、お兄ちゃん! みんな待ってるよ!」


 少し離れたところで、カティアが手を振っている。変わらず楽しそうな顔で、他のメンバーの集まる方へと指差していた。


「……はぁ。なんで、あいつ、あんなに楽しそうなんだよ……」


 だるそうに息を吐きながら、サーシャはぼそりと呟いた。


 正直、夜の活動っていうのが一番しんどい。眠くて仕方ない。身体が重い。思考も鈍る。そんな状態で動く意味が、いまいち分からなかった。


 他の連中が普通にこなしているのが謎すぎる。


「あいつらみんな夜行性なのかよ……」


“くすくす、眠くなっちゃうね”

“くすくす、眠いね”


「うるさいなあ。お前ら眠らないだろ」


「何が?」


 背後から不意に声をかけられ、サーシャは振り向いた。ミハイルが立っていた。


「別に、ひとり言だよ。夜に活動すんのダルいだけ」


「そっかー。初日も眠そうにしながらも頑張ってたもんね。サーシャは偉い偉い」


「よく見てるんだな」


「僕、観察力だけはあるからね! えっへん」


 ミハイルは自分の胸を拳で軽く叩いた。


 無駄に元気だな、とサーシャはぼんやり思う。ああいう調子で周りを見ているのかと、わずかに視線を向けた。


 何だろうな。ミハイルって、父さんに雰囲気が似てる気がする。魔力がこう──


「おい、ミハイル。何やってるんだよ。イヴァンが早く集まれって、うるせぇんだわ」


 気だるそうな声が割り込み、サーシャの思考は途切れた。ダニールだった。


 ダニールはサーシャを見るなり、笑顔で手を上げる。


「よお、サーシャ。今日も何か飯作るのか? あのスープ美味かったよなあ」


 思い出すように目を瞑るダニールに、サーシャは軽く肩をすくめた。


「作らない。カティアがうるさいんだよ。あいつも面倒くさいし」


 そう言って、イヴァンの方へ視線を向けた。


「確かに、あいつ面倒くさいよなあ。何かにつけてすっげー睨んでくるしよ。目だけ煩い」


「あはは。もしかしたらイヴァンはダニールの事が好きなのかもねえ」


「え、あいつ俺に惚れてんのか? 嫌だわー。男に好かれても嬉しくねーわー」


「おいダニール。お前、ミハイル呼びに来たんだろ。何してるんだ」


 くだらないやり取りに、別の声が割り込んだ。そちらに視線を向けると、アンドレイが歩いてきた。


「イヴァンが睨んでくるから、早くしろ」


「あいつ目だけ煩いよなー。アンドレイもそう思うだろ?」


「何言ってるんだ? よくわからんが、それを言ったら、お前は存在自体が煩いじゃないか」


「え? どういう事だよ」


「そうだね、ダニール一人で五人分くらいの存在感あるよね」


「は? どんなんだよそれ」


「もういいだろ。今も凄い目で睨んできてるんだ、行くぞ」


 アンドレイが親指で示した先を見ると、無表情のまま鋭い視線をこちらへ向けているイヴァンの姿があった。


「うげぇ」


 ダニールが露骨に顔をしかめ、そのまま歩き出す。アンドレイとミハイルも、それに続いた。


 サーシャは小さく息を吐き、遅れずに歩き出す。面倒だと思いながら、皆のいる場所へ向かった。


“くすくす”

“楽しいね、くすくす”


 全然楽しくない。こんなのを楽しんでいるのはカティアくらいだ。


 そう思って焚き火の方へ歩き、少し離れた位置で立ち止まって様子を眺める。話している声は聞こえていたが、頭には入ってこなかった。


 気づけば、イヴァンの合図で今夜の仕事が始まっていた。


「じゃあ、お兄ちゃん。ちゃんとレオニードさんの言うこと聞いて、しっかりやってね!」


 カティアはそう言って手を振り、そのまま橋の警護へ向かっていく。


「うるさい」


 短く返した。だがカティアは気にする様子もなく、「うふっ♡」と笑って去っていった。


 ……頭おかしいんじゃないか?


“近くにいるね”

“ときどき、近くにいるね”


 サーシャはわずかに意識を向け、自然と周囲へ視線を巡らせる。何かがいる。奥の方──視界の届かない位置に、それがある。


 音はしない。こちらへ寄ってくる様子もない。なら、刺激する必要もない。


 そう判断して視線を戻すと、レオニードが同じ方向をじっと見ていた。


 これ、多分普通の索敵には引っかからないよな。


 そう思いながら視線を向けていると、ふと目が合った。サーシャは特に気にすることもなく視線を外し、焚き火の傍へ歩いていき、そのまま腰を下ろす。


 少し遅れて、レオニードも隣に座った。


「今日は料理をしないのか?」


「あんたまでそれを聞いてくるのか?」


 そう返すと、レオニードはくすりと笑った。


「しないよ。カティアが煩いんだ。今日は来る前にいっぱい食べてきたし、夜食も用意したから大丈夫だよ」


 軽く息を吐きながら言う。


「そうか、お前の料理、美味いのに残念だな」


「作るのを許さない奴がいるだろ。それに、料理ならそっちのリーダーも上手いらしいから、いいじゃないか」


 その言葉に、レオニードはわずかに目を見開いた。


「興味なさそうにしてたわりに、話は聞いてたんだな」


「聞いてはいた。興味がないのは確かだけど。あの場では、どっちでも同じだっただろ」


「確かにな」


 レオニードはそのまま口元に笑みを残した。


「それより俺は、あんたの方が興味深いよ」


 サーシャは視線を逸らさず、見続けた。


「あんたのは普通の索敵じゃないだろ? さっき、向こうを見てた。もしかして、見えてるんじゃないのか? あの──」


「ああ。見えてる」


 サーシャの言葉に重なるように、静かに返された。


 黒髪の隙間から覗くその瞳に揺らぎはない。何の感情も浮かんでいなかった。何かを隠している……ように見える。


 それ以上レオニードは何も言わなかった。なら、聞くだけ無駄だ。サーシャも追及はしなかった。


“くすくす”

“見えてるね、くすくす”


 サーシャは軽く息を吐いた。


 ……ま、いいか。


「また見えたら教えてくれ。お前の方が正確みたいだからな」


「いいけど、眠くなったら無理だ」


「別に構わないさ」


 そう言ってレオニードは微笑んだ。


 その表情を見て、どこかで見たものに近いと感じる。だが、わざわざ辿るほどのことでもない。


 ミハイルといい、レオニードといい──人間なんて、誰かに似ているものだ。


 そう思って、サーシャはそれ以上考えなかった。

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