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第7話

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 どうにも胸の内が落ち着かず、イヴァンはモラナに、いつものように手紙を書いた。


──────────

モラナへ


春の陽光が森を優しく照らすこの頃、君が健やかに過ごしていることを願う。

こちらは相変わらずだが、ふとした時に君のことを思い出している。


今日は、最近知り合った人の話を、少しだけ書こうと思う。


冒険者の中に、二人きりでパーティを組んでいる兄妹がいるんだ。

妹のカティア嬢は明るく陽気な娘で、言動はいつも俺の想定の外にある。

それなのに、なぜか胸に溜まっていたものを、少しずつ軽くしてくれる。

不思議な娘なんだ。


ある時、一緒に食事をした際、彼女は言った。

“可愛いというものは大切であり、幸せの源だ”と。


俺には到底理解し難いが、どうやら彼女は自身の兄を可愛いと感じているらしい。

しかし、その兄が彼女に相応しいとはどうしても思えず、見ていると胸がざわつく。


何を書きたいのか、自分でも分からなくなってしまったが、彼女と出会い、俺は一つ気づいたことがある。


モラナ、君は


いや、やはり手紙ではうまく伝えられそうにない。

次に逢う時、直接尋ねたいと思う。


朝夕はまだ冷える日もある。

どうか身体には気をつけてほしい。

君の笑顔がいつも輝いていることを、心から願っている。

また会える日を楽しみにしているよ。


イヴァン

──────────


 何故か、手紙にはカティア嬢のことを書いてしまっていた。本当は、モラナが自分をどう思っているのかを知りたかっただけのはずなのに。


 カティア嬢が口にした、“兄が自分を犠牲にして守っているのは嫌だ。苦労も喜びも一緒に分かち合いたい”という言葉が、イヴァンの頭から離れない。


 モラナも、同じように思っているのだろうか。それとも、自分の知らない、彼女なりの考えがあるのだろうか。


 何度も書き直そうとしたが、結局うまく言葉にできなかった。


 こんな中途半端な文を送る自分は、兄として失格なのではないか。叱責されるのが、正直なところ怖かった。


 だが、モラナの返事は、イヴァンの想像していたものとは違っていた。


──────────

春の柔らかな陽射しが木々の芽を優しく揺らす頃、健やかにお過ごしのことと存じます。

こちらも変わらず、穏やかな日々を送っております。


お手紙拝見いたしました。

最近知り合われた方のお話は、少し驚きました。

お兄様がそのようなことを書き記されるのは、あまりなかったので。


“可愛いというものは大切であり、幸せの源”という言葉に、私も深く賛同いたします。

カティアさんという方は、素敵な考えを持つ方のようですね。

ぜひ、その方と仲良くなってください。

お兄様のように少し堅い方には、時にそうした予想外の方が必要だと思います。


またお会いできる折には、ぜひカティアさんのことを直接お聞かせください。

その際までに、私に聞きたいことを整理しておいてくださると嬉しいです。


まだ寒さが残る日もありますが、風邪などひかぬよう気をつけてくださいね。

新しい季節の訪れが、お兄様にとって穏やかで実り多きものとなりますように。


また近いうちにお話できることを楽しみにしています。


モラナ

──────────


「……返事が、長い。しかも……カティア嬢の考えに、賛同している……」


 思わず声が漏れた。いつもなら数行で簡潔に終わるはずのモラナの手紙には、今日は予想以上の文字が綴られている。読み進めるうちに、胸の奥がじわりと熱を帯びていった。


 そのとき、扉を叩く控えめなノック音が部屋に響いた。


「リーダー、ギルドから呼び出しがありましたよ〜」


 イヴァンは手紙を机に置き、扉へと向かった。開けると、そこには相変わらず気の抜けた笑みを浮かべたルカが立っていた。


「そこまで急ぎじゃないらしくて、昼飯の後でも大丈夫みたいですよ」


「他のみんなは?」


 問いかけると、ルカは一度天井を見上げ、記憶を辿るようにしてから口を開いた。


「確か……デニスさんは道具屋に行きたいって出かけました。ラリッサさんは欲しいものがあるとかで買い物に行って、ボグダンさんはその付き添いですね。レオニードさんは……いつの間にか居なくなってました。あはは」


「そうか。昨日はそれなりに大きい報酬が得られたからな。なら、食事は二人分でいいな。俺が作ろう」


「やったー。リーダーの飯、楽しみにしてたんですよ」


 ルカが両手を大きく掲げ、ぱっと顔を明るくした。


「お前も手伝うんだぞ」


「わかってますって!」


 そう言葉を交わし、イヴァンとルカは連れ立って階段を下りた。厨房に入ると、イヴァンは貯蔵庫から食材を引っ張り出し、ナイフを手に取る。


「ルカ、こっちの野菜を頼む」


「はいはーい、了解です」


 ナイフの音だけが規則正しく響く。しばらくは互いに黙々と手を動かしていたが、ふいにルカが口を開いた。


「リーダー、その後、カティアちゃんにはアプローチしてるんですか?」


「……見かけたら、挨拶はしている」


「挨拶だけですか?」


「……いや、世間話というか。最近どんな依頼を受けたか、とか……そういう話もしている」


「え、それ会話してます? 一方的に話してるだけじゃないですか?」


 ルカがナイフを止め、心配そうにイヴァンを見てきた。


「会話はしている! 俺を馬鹿にしているのか? カティア嬢の近況だって、きちんと聞いている」


「なにそれ! 近況報告じゃないんですから! で、他には?」


「他に……?」


 イヴァンは手を止め、これまでのやり取りを思い返す。


 この前、お兄ちゃんがパンを食べていたら──

 今日もお兄ちゃんが詠唱を噛んで──

 お兄ちゃんが──


「……カティア嬢の話の大半は、サーシャだな」


 思わず手にしていた食材に力がこもり、握り潰しそうになってはっとする。慌てて指を緩めた。それを見て、ルカが苦笑する。


「それに、だいたい、カティア嬢はサーシャを追いかけて行ってしまうから、長く会話など出来ん」


「あー……、それは、そうなりますよね〜」


 最初から険しい恋路だ。それでも、どうにかしたいと思っている自分が厄介だった。


「そもそも、人を好きになったら……どうすればいいんだ」


「……えー、そこからですかぁ……」


 ルカはナイフを止め、心底困ったように眉を寄せた。


「仕方ないだろ……。大人になってから、女性を好きになったことがないんだ。俺に近付いてくるのは、見た目や名声にしか興味がない者ばかりで、やたらと積極的で……正直、面倒な人間しかいなかった。そんな相手を、好きになれるはずがない」


「確かに。お陰で、うちのパーティはラリッサさん以外、女性メンバーがまったく定着しませんもんね〜。リーダーの女性不信が深刻化した結果、恋愛下手が完成するとは……いやはや、トホホです」


 思わず、小さく息を吐いた。


「まあ、とはいえ。まずは恋人同士になって、きちんとお付き合いすることを目標にアプローチですね」


「……恋人、か……。正直、どう踏み込めばいいのか分からない」


「んー……。カティアちゃんを本気で狙うなら、やっぱり、サーシャと仲良くなるしかないんじゃないですかね?」


 その言葉が、胸の奥に直撃した。手にしていたナイフが、するりと指から抜け落ち、床に鋭く突き刺さった。


「ひぇっ!」


 横でルカが小さく声を上げる。サーシャと……仲良く、だと……? あのサーシャと? 冗談じゃない。だが、否定しきれないのも事実だった。


 まがりなりにも、サーシャはカティア嬢の兄だ。しかも、彼女が誰よりも大切に思っている兄。その存在を無視したままでは、前に進めない。……できるのか、俺に。あのサーシャと、歩み寄るなど。


「リーダー! ナイフ、俺の足に刺さるところでしたよ!」


 床に落ちたナイフを拾い上げながら、ルカが慌てた声を上げる。


「すまない。あまりにも衝撃的で……手が滑った」


「まあ、リーダー、どう見てもサーシャのこと嫌ってますもんね……。だからこれは“最善策”ってだけで、何が何でも仲良くしろって話じゃないんですよ。ただ──」


 ルカは少し言葉を選ぶように間を置いてから、続けた。


「カティアちゃんがあんな感じですし、どうしてもサーシャの存在が障害になるのは、間違いないと思うんです」


「ああ……そうだな」


 否定できず、短く答えた。


「恋に障害は付き物ですよ! とにかく、もっと一緒にいられる時間を増やさないと話にならないです」


「一緒にいられる時間、か……」


 口にしながら考えるが、すぐに現実が立ちはだかる。パーティが別である以上、意図して時間を作らなければ、顔を合わせる機会すら限られる。簡単な話ではない。そう思いながら、イヴァンは鍋の中身を無言でかき混ぜ続けた。


 昼食を済ませたイヴァンとルカは、ギルドへ向かった。奥まった一室に通されると、職員から今回の呼び出しの理由が告げられた。


「実は、王都ブラニツァと隣街ロドミールを繋ぐ街道──ザリヤ川に架かる橋に“街道喰らい”が巣を作り、橋の約三割が破損してしまいました」


「“街道喰らい”って、確か巨大な蜘蛛の魔物ですよね?」


 ルカが職員に確認する。


「はい。昼間に橋の修復を進めていますが、“街道喰らい”が夜行性とはいえ、念のため各冒険者パーティに護衛をお願いしている状況です」


「その護衛に俺たちを任せたいのか?」


「いえ、『蒼銀の翼』の皆さんには夜間の橋の警護をお願いしたいのです」


「それでついでに討伐も、というわけですか?」


 ルカが笑みを浮かべながら問いかけた。


「もし可能なら、ぜひお願いしたいと思います。ただ、この“街道喰らい”の討伐は我々も初めてでして、『蒼銀の翼』の皆さんだけで対処できるかは判断がつきません。それに、これは国からの依頼ですので……失敗は許されません」


「なるほど。断れない、失敗も許されない……か」


 イヴァンは小さくため息を漏らした。


「この街道は街の生命線です。いつまでも通行禁止にはできません。修復を進めながら通行可能にして、改めて討伐するのが国とギルドの方針です」


「ええ。討伐してから修復じゃだめだったんですか? 討伐時に橋が壊れたらアウトじゃないですか」


 ルカが、少し面倒くさそうに返す。


「ギルドとしても本来はそう考えていましたが、国が先に修復を始めてしまったため、急いで護衛を付けることになったんです」


「でなければ、こんなことギルドに依頼しないだろうしな」


「……そうですね。あはは」


「毎度、尻拭いは冒険者に回ってくるな……」


「はああ……どうせどこかの貴族の自己都合で無理やり押し通したんだろうな。これだから貴族ってやつは」


 ルカが両手をあげ、ため息交じりに首を振った。ギルド職員が苦笑いを浮かべているのに気づく。遅れてルカが「あ……」と呟き、こちらを見た。


 ルカは時々こういうことを言う。悪気がないのは分かっている。だからこそ、注意しづらい。イヴァンは何も言わず、ただ一度だけ睨みつけた。


「ひぇ……。すいません、リーダー……」


 イヴァンは軽く息を吐き、話を本筋へ戻した。


「それで、急ぎではないと言ったが……内容は随分と切迫しているように聞こえるな?」


 問いかけると、ギルド職員はすぐに頷いた。


「ああ、それはですね。夜間の見張りを複数のパーティで二班に分け、交代制で担当していただく予定だからです。『蒼銀の翼』の皆さんには、明日からお願いする形になります」


「なるほど。だから急ぎではなかったのか。準備に一日あれば十分だな」


「はい。ただ……昼の修復作業にも、念のため高ランクパーティを配置する必要がありまして。全体のバランスを考えると、皆さんの班に低ランクパーティを一組加えていただく形になります」


 そこまで説明してから、職員は一枚の紙を差し出した。


「その代わりと言っては何ですが、『灰色の刻』も同じ班に入りますので、戦力としては十分に補えるかと」


 イヴァンは紙を受け取り、軽く目を通す。


「それで、その低ランクパーティですが、イヴァンさんに選んでいただければと思いまして。そちらに、ギルドで評価の高いパーティの一覧をまとめてあります。メンバー名とランクも記載していますので」


 その言葉に、ルカが身を乗り出して紙を覗き込んだ。


 そして次の瞬間、大きく声を上げて立ち上がる。


「リーダー! これは運命的なチャンスですよ!!」


 訳が分からずルカを見上げると、彼は自信満々の笑みを浮かべ、紙の一番下を指差した。


──────────

『なかよし団』ランクD

カティア ランクC

サーシャ ランクD

──────────


 ランクC以上のパーティ一覧の最後に、控えめに記されたランクDのパーティ。どう見ても違和感しかない。


 イヴァンはルカの腕を引っ張り、無理やり座らせてから、ギルド職員に尋ねた。


「なぜ『なかよし団』がここに入っているんだ?」


 職員は少し考え込んでから答えた。


「あー、彼らですか。正直、少し悩みました。サーシャさん自身も、実力が不足しているわけではありません。ただ、評価が安定しない部分がありまして……。


 それでもパーティとして見れば、今回の護衛任務を任せられる水準には達していると判断しています。それに、サーシャさんが活動していない時には、カティアさんが他のパーティに臨時で入って依頼を受けていることもあるようですし。総合的に見て、今回の一覧に入れさせてもらいました」


 その言葉を聞いた瞬間、イヴァンは思わず拳に力を込めていた。


「なんだと?」


「いててっ! リーダー! 手! 手を離して!」


 サーシャが活動していない時に、カティア嬢が他のパーティに臨時で入っているだと?


 納得できない。妹より低ランクでありながら、あの態度でいるのか。そんな状態で、兄と呼んでいいのか。イヴァンは、胸の奥に澱のようなものが溜まるのを感じていた。


「あ゛あ゛っ! リーダー! リーダー! マジで! 俺の腕が死んじゃう!!」


「あ、すまない、気づかなかった」


「ぜ、絶対これ、腕にヒビ入ってる……後でラリッサさんに魔法をかけてもらわないと……」


 ルカは半泣きになり、弱々しくそう呟いた。


「それはさておき、リーダー! 『なかよし団』にしましょう!」


「いやしかし、危険じゃないか?」


「大丈夫ですよ! 腐葉の森でのカティアちゃんの動き、覚えてます? あんなに何匹もの角兎の攻撃を一つ残らず避けて、全部倒したんですよ! “街道喰らい”に直接攻撃できなくても、避けるくらいは絶対にできるはずです!」


 ギルド職員は少し首をかしげながらも、口を開いた。


「カティアさんなら大丈夫だと思いますよ。CランクとはいえB寄りですし、持久力もあるようですから、安心して任せられるかと」


「なら大丈夫です! サーシャは魔法使いで後衛ですし、案外強力な魔法も使ってたりしましたよ!」


「あはは、たまに詠唱を噛んじゃうみたいですけどね」


「それにリーダー!──」


 ルカはイヴァンに顔をぐっと近づけ、声を潜めながらも鋭い眼差しを向けた。


「このチャンス、本当に逃していいんですか? この依頼、多分長期戦になりますよ? カティアちゃんにアプローチする絶好の機会なんです!」


 イヴァンは一瞬、言葉に詰まり、視線を伏せた。


「もう! いい加減にしてください! 『なかよし団』で決まりですよ、いいですね!!」


 ルカが立ち上がり、イヴァンに指をビシッと突きつけて言い放った。その勢いに押され、イヴァンは思わず頷いた。


「よし! じゃあ、『なかよし団』にしてください!」


 勢いそのままにルカがギルド職員に告げると、圧倒されるように職員が返事をした。


「りょ、了解しました。では、『なかよし団』に依頼を出しておきますので、明日の夕方にこちらに集合でお願いします」


「ああ、わかった」


 ルカに押されるまま決めてしまったが、恋に依頼を利用するなんて、果たして許されるのだろうか。それでも他に方法がない以上、この気持ちを抑えきることはできない。


 たとえ間違いだとしても、それに縋るしかない。精一杯やるしかない──そう思った。

ご感想・レビュー・誤字報告など、ぜひお気軽にいただけたら嬉しいです。

「ここが気になった」「このキャラが印象に残った」など、一言だけでもとても励みになります。


いただいたご感想は、今後の創作の参考として大切に読ませていただきます。

楽しんでいただけましたら、ぜひ気軽にお声を聞かせてください。

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