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第6話

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 『なかよし団』との合同が決まり、イヴァンたちは仲間の元へ戻った。ギルドの端で、ボグダンとラリッサが待っている。二人はイヴァンたちに気づくと、顔を上げた。


「お待たせ〜」


 ルカが手をあげ、明るく声をかけた。


「あ、どうだった? いい依頼あった?」


「うん。腐葉の森で角兎の討伐が出ててさ。今回は『なかよし団』の二人と一緒にやることになったよ」


 そう言ってルカは、軽く親指でカティア嬢とサーシャを指し示す。


「よろしくお願いします♪」


 カティア嬢が満面の笑みで挨拶すると、ラリッサが興味津々の表情でルカに近づき、声が漏れないように口元に手を当てて小声で尋ねた。


「彼女って、イヴァンさんの……?」


 ルカはにやりと笑いながら、軽く頷く。


「うんうん」


 ──いや、聞こえているんだが?


 違うと言っているのに、こいつらは……。イヴァンは眉間に、わずかな力が入るのを自覚した。


「何がだ?」


 何も知らないボグダンが、ルカとラリッサに密着して小さく尋ねる。


「彼女がイヴァンさんの……コソコソ……」


「ほぉ……。リーダーにも春が……」


「うんうん」


 三人の妙な雰囲気に、カティア嬢はきょとんと首をかしげた。


「お前らいい加減にしろ。ふざけてないで腐葉の森に向かうぞ!」


 イヴァンは咳払いをひとつしてから、三人に向かってそう言い放ち、背を向けた。すると背後から、こそこそと囁き合う声が聞こえてくる。


「リーダー、照れてる」

「照れてますね」

「照れてるな」


 からかうような言葉に苛立ちが込み上げ、イヴァンは無表情のまま振り返って睨みつけた。すると全員が一瞬で固まる。まさか自分が、こんなふうにおちょくられる日が来るとは思わなかった。ため息が、自然と漏れた。


「カティア嬢、待たせてすまない。さあ、行こうか」


「はい♪」


 それからイヴァンたちは、再び腐葉の森へ足を踏み入れた。あの時の“やつ”が、まだどこかに潜んでいるのではないかという不安が、頭をよぎる。


「ルカ、今日はレオニードがいない。お前が魔物の大体の場所を把握してくれ」


「了解です」


 そう言うと、ルカはすぐに索敵を始めた。だが、しばらくして首を振り、イヴァンの方を振り返る。


「角兎だと気配が薄すぎて、俺だと分からないみたいです」


「そうか、ならとにかく奥に向かってみるか……」


「あ、お兄ちゃん! 待って!」


 カティア嬢の声に振り返ると、サーシャが勝手に別の方向へ歩いていくのが見えた。


「おい、待て! 勝手に行動するな!」


 イヴァンが制止すると、サーシャは振り返り、面倒くさそうに「は?」とだけ言って歩みを進める。その様子に、イヴァンの胸に苛立ちが込み上げた。カティア嬢は戸惑いながらも慌てて、サーシャの後を追いかける。


「ちょっとちょっと、二人とも待って!」


 ルカが声をあげ、すぐに二人の後を追い始めた。


「イヴァンさん、とにかくついていきましょう。角兎の居場所が分からないのは変わりませんし」


 ラリッサにそう促され、イヴァンは苛立ちを押し殺して歩き出す。早くもこの調子だ。この先、本当にまともに戦えるのか──不安しか湧いてこなかった。


 しばらく歩いたところで、先を行くルカたちが足を止めた。


「リーダー、いましたよ。角兎が群がってます」


 茂みの奥を確認し、イヴァンは一瞬、言葉を失った。これだけの群れに、手探りで辿り着くものなのか。偶然にしては、出来すぎている。


「なんでこんなに角兎が大量発生しちゃったんでしょうね」


「いや、なんか発生とか繁殖とは違うって説明書きがあったよ」


「強い魔物が倒されて、生態系が崩れたとかじゃないのか?」


「え、いや……そんな風には書いてなかった気がするな。俺もちゃんと読んでないけど。リーダーは読んでましたよね?」


「ああ、読んだが──」


 その時、サーシャのぼそりとした呟きが耳に引っかかり、イヴァンの言葉は途切れた。周囲は誰も反応していない。聞こえたのは、自分だけか。


 ──これだから人族は……


 自分を人族の外に置いたような言い方だ。胸の奥に、小さな違和感が残る。


 ……どういうことだ。


 だが、それを問いただす間もなく──


「魔物は、そもそも生態系がないらしいですよ?」


 あまりにも当然のように口にされた言葉に、一行は一斉に動きを止めた。全員が驚いた表情で、カティア嬢を見る。


「え? そうなんですか?」


「はい。なんか、魔物って動物とは違うとか何とか……私も詳しくないんですけど……そういうのはお兄ちゃんが詳しくて! ね!」


 そう言って、カティア嬢は何の迷いもなくサーシャの方を見た。だが当の本人は、こちらを見ることもなく、まるで聞こえていないかのように黙っている。それでもカティア嬢は気にした様子もなく、さらに声を弾ませた。


「お兄ちゃん、説明してあげて!」


「やだ。どうせ説明しても、そっちには理解できないだろ」


 その一言が落ちた瞬間、空気がピシッと張り詰めた。胸の奥で何かが軋み、イヴァンの体が思わず反応する。一歩踏み出しかけた、その瞬間、左右からルカとボグダンに押さえ止められた。ラリッサは笑顔を保ったまま肩を強張らせ、感情を押し殺すようにかすかに震えていた。


「と、とにかく、角兎の討伐を開始しましょう」


 ラリッサは笑顔を崩さないまま、怒りを噛み殺すように言葉を絞り出した。声は抑えられているが、滲み出る感情までは隠しきれていない。その様子を見て、イヴァンは一度大きく息を吸う。胸に残った苛立ちを押し込めるように、無理やり呼吸を整えた。


 その時──


「大地の精ゼムリャよ、槍となりて、我が敵を穿て──《大地の槍》」


 唐突な詠唱の直後、サーシャが魔法を放った。


「おい! 何を勝手にやってるんだ!」


「そうだよお兄ちゃん! あんな可愛い姿なのに、そんな無慈悲に酷いよ!」


「え、いや、カティア嬢……そういうことじゃ……」


「カティア」


 名を呼ぶと同時に、サーシャがカティア嬢の背に手を当てた。


「どんなに可愛い姿だろうと、魔物だってことを一回確認してこい」


 そのまま、ぐっと押し出す。押したというより、放り投げたに近い。なんて力だ。──それよりも、カティア嬢だ。


「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」


「カ、カティア嬢っ!!」


 その直後、角兎たちが一斉に反応した。頭の角を突き出し、突進してくる角兎を、カティア嬢は悲鳴を上げながら必死にかわす。


「いやぁぁ! お兄ちゃんの意地悪ぅぅぅ!」


「カティア嬢!」


 反射的に、イヴァンは前へと踏み出していた。


「ボグダンは俺と! ルカは援護を! ラリッサはサポートを頼む!」


 指示を飛ばしながら、次々と角兎を斬り捨て、一直線にカティア嬢のもとへと向かう。当の本人は相変わらず泣き叫びつつ、迫る角兎の攻撃を必死にかわしていた。彼女は討伐に来たんじゃなかったのか。そんな思いが一瞬よぎる。だが、今はそれどころじゃない。呆れを飲み込み、イヴァンはさらに踏み込んだ。


「雷の精グローザよ、その光を分かち、敵を裂く刃となれ──《雷光の舞》」


 サーシャの魔法が放たれ、周囲に無数の雷が降り注ぐ。雷光は角兎を次々と打ち据え、群れが一気に乱れた。が、その直後だった。閃光が、カティア嬢の足元を掠めるように落ちる。


「わっ!」


 一瞬の驚きに体勢を崩し、彼女は厚く積もった落ち葉の上を滑った。そのまま抵抗する間もなく、視界から消える。落ち葉が弾け、深いくぼみへと落ちていった。


「カティア嬢!」


 反射的に前へ踏み出し、イヴァンはその先を覗き込んだ。


「あ……」


 サーシャが、しまった、という顔で短く息を漏らす。


「いたた……」


 くぼみの底で、カティア嬢がゆっくりと身を起こした。イヴァンの目に映ったのは、彼女の足元一面に蠢く大量の角兎だった。


「お兄ちゃん、酷いよーーー!」


 悲鳴のように叫ぶ彼女をよそに、サーシャは彼女が落ちた窪みの中を一瞥しただけで、淡々と言い放つ。


「カティア、全部倒して登ってこい」


「やだぁ! こんなに可愛い生き物、こんなに倒せないよぉ!」


「そいつらは可愛い生き物じゃない。魔物だ。殺らないと殺られるぞ」


「お兄ちゃんの鬼ぃぃぃぃ!」


 泣き叫びながらも、カティア嬢は深く覚悟を決めた。その決意が動きに乗り移ったかのように、迷いなく次々と角兎を斬り伏せていく。倒れる数に比例して、周囲の群れが目に見えて減っていった。


「うわ、カティアちゃん凄い……。あんな大量の角兎を一人で……」


 ルカが感心した声を漏らしながら、カティア嬢の戦う姿を見つめていた。


「ルカ! 感心して見てる暇があったら、どんどん射抜け! とにかく数を減らすんだ! ラリッサ、カティア嬢が怪我したら優先的に回復を頼む!」


 イヴァンは仲間に指示を飛ばしながら、角兎を次々と薙ぎ払っていく。サーシャも魔法で数を減らしている。


 だいぶ数が減った頃、くぼみの下からカティア嬢の呻き声が聞こえてきた。


「うぅぅ。上がれないよぉ。お兄ちゃん、魔法で何とかして〜」


「いや、あっち回って登ればいいだろ」


「お兄ちゃんのケチ! いいでしょ! 落ちたのはお兄ちゃんのせいなんだから!」


 駄々をこねるカティア嬢の様子に、仲間たちから思わず笑い声が漏れる。


 イヴァンたちはほぼ角兎の討伐を終え、逃した個体はそのままにして、深追いせず魔石の回収へと移っていた。


「だいぶ倒したし、これで十分だろう。残りは他の冒険者に任せよう」


「ええ、角兎くらいなら新人でも討伐できるでしょうしね」


 そんな会話が交わされる中、サーシャの詠唱が森に響き渡った。


「大地の精ゼムリャよ、揺るがぬ掌となりて、彼の者を救い上げよ──◎△$♪×¥○」


「え?」


 思わず、イヴァンたちはサーシャの方を振り返った。詠唱を噛んだのか。そんな疑問が頭をよぎった瞬間、足元の地面が盛り上がり、ぼこぼこと波打ち始める。


 次の瞬間、突き出た土塊に押し上げられ、イヴァンは不自然な体勢のまま宙を舞った。


「きゃあっ!」


 カティア嬢の悲鳴が耳に届き、思わず視線が下へ走る。彼女は盛り上がった地面に押し出される形でくぼみの外へ出ており、そのまま体勢を崩して尻もちをついていた。ルカは逆にくぼみに落ち、ボグダンは転倒している。ラリッサだけが、呆然とこちらを見上げていた。


「イ、イヴァンさん!!」


 ラリッサがようやく声を上げる。高く弾き飛ばされた姿を見て、顔から血の気が引いているのが分かった。まずい。このまま落ちたら、さすがに無事では済まない。だが体勢を立て直そうとしても、思うように動かせない。もう終わった──そう思った、その時だった。


「イヴァンさん!」


 カティア嬢の声とともに、ふわりと柔らかな感触に包まれる。何が起きたのか理解できないまま、甘い香りが鼻をくすぐり、柔らかな髪が頬に触れた。


 すぐそばには、大きく輝く瞳と透き通るような肌がある。柔らかな頬が、触れそうなほど近い。


 ち、近い……!


「カ、カ、カ、カティア嬢!!」


 反射的に顔を覆い、慌てて横を向くと、ラリッサが目を輝かせ、口元に手を当ててこちらを見ていた。窪みから這い上がってきたルカは、生暖かい視線を向けている。状況がまるで理解できない。


 呼吸を整え、ようやく状況を把握する。


 イヴァンは、カティア嬢に両腕でしっかりと抱えられていた。


「わー、お姫様抱っこ……!」


 ラリッサの少し興奮した声が響いた瞬間、顔に一気に熱が集まり、頭の中が真っ白になる。


「カティア嬢! す、すまない! お、下ろしてくれ!」


 必死にそう告げると、カティア嬢はそっと地面に下ろしてくれた。だがイヴァンはその場にへたり込み、動揺がなかなか収まらない。片手で顔を覆い、深く呼吸を繰り返す。


「イヴァンさん、大丈夫ですか? どこか怪我しました?」


 カティア嬢の声に、顔を上げられないまま答える。


「い、いや……大丈夫だ……」


 本当は平静とは程遠かったが、それ以上はどうしても言えなかった。


「カティアちゃん力があるんだね。リーダーを受け止めちゃうなんて」


「えへへ。お兄ちゃん程じゃないんですけど、我が家はそういう血筋なんで♪」


「え? どんな血筋……?」


 そんなやりとりを聞きながら、イヴァンは少しずつ心を落ち着けていた。その時、小さな足音が近づいてくる。


「もう、いいんだろ? 帰りたいんだけど」


 サーシャのその一言で、イヴァンの内側に溜まっていた感情が、一気に怒りへと切り替わった。


「お前っ!!」


 声を荒げた瞬間、すぐさまルカが慌てて間に入る。


「まぁまぁ、リーダー。今日はこれで帰りましょう! 色んな意味でいい事あったんだし!」


「そうですよ! いい事あったじゃないですか!」


「そうだな、いい思い出になったな」


「う、うるさい!」


「いいことあったんですか?」


「いや、カティア嬢。なんでもないんだ、気にしないでくれ……」


 そんなやり取りを終え、イヴァンたちは街へ戻り、ギルドに報告した。魔石と引き換えに報酬を受け取り、人数分に分配する。


「はい、これがカティアちゃんとサーシャの分!」


「わあ、ありがとうございます♪」


 ルカが手渡すと、カティア嬢は嬉しそうに受け取り、サーシャは相変わらず無表情だった。


「じゃあ、俺はパンを買ってから帰るから」


 そう言って、サーシャは振り返ることもなくギルドの出口へ向かった。


「ちょっと待ってよお兄ちゃん! あ、じゃあ、皆さん、今日はありがとうございました!」


 カティア嬢は元気よく手を振りながら、慌ててサーシャの後を追っていく。イヴァンたちは手を振り返し、二人の背中を見送った。


 急に静寂が訪れ、イヴァンのため息だけがその場に響いた。抑えきれなかった。押し込めてきた想いが、強く疼く。まるで体の奥がずっと震えていたかのように、心の中心を締め付けられるような痛みを感じていた。


「ルカ……すまない」


 イヴァンは観念したように呟いた。


「え? どうしたんです? 謝って」


 ルカが首をかしげて問い返す。


「お前が言ってたことは正しかった」


 そう告げると、ルカは嬉しそうに笑った。


「俺、応援もしますし、協力もしますから!」


「私もです!」


「俺もだ」


 皆の言葉を聞き、イヴァンの胸の奥に温かいものがじわりと広がった。否定してきた感情が、ようやく自分の中で確かな形を取り始めている。


 この気持ちに、もう背を向けることはできない。

ご感想・レビュー・誤字報告など、ぜひお気軽にいただけたら嬉しいです。

「ここが気になった」「このキャラが印象に残った」など、一言だけでもとても励みになります。


いただいたご感想は、今後の創作の参考として大切に読ませていただきます。

楽しんでいただけましたら、ぜひ気軽にお声を聞かせてください。

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