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第6話

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 イヴァンたちは『なかよし団』の二人を連れてギルドの端へと移動した。待っていた仲間のボグダンとラリッサが、イヴァンたちに気づくと顔を上げた。


「お待たせ〜」


 ルカが手を上げ、明るく声をかけると、ラリッサが立ち上がって尋ねた。


「あ、どうだった? いい依頼あった?」


「うん。腐葉の森で角兎の討伐が出ててさ。今回は『なかよし団』の二人と一緒に受けることにしたよ」


 そう言ってルカは、軽く親指でカティア嬢とサーシャを指し示した。


「よろしくお願いします♪」


 カティア嬢が満面の笑みで挨拶すると、ラリッサが興味津々の表情でルカにすっと近づき、声が漏れないように口元に手を当てて小声で尋ねた。


「彼女って、例のイヴァンさんの……?」


 ルカはにやりと笑いながら、軽く頷いた。


「うんうん」


 ──いや、聞こえているんだが?


 違うと言っているのに、こいつらは……。イヴァンは眉間に、わずかな力が入るのを自覚した。


「何がだ?」


 何も知らないボグダンが、ルカとラリッサに密着して小さく尋ねた。


「イヴァンさんが……コソコソ……」


「ほぉ……。リーダーが……」


「うんうん」


 三人の妙な雰囲気に、カティア嬢はきょとんと首を傾げた。


「お前らいい加減にしろ。ふざけてないで腐葉の森に向かうぞ!」


 イヴァンは咳払いをひとつしてから、三人に向かってそう言い放ち、背を向けた。すると背後から、こそこそと囁き合う声が聞こえてきた。


「イヴァンさん、照れてる」


「照れてるね」


「照れてるな」


 からかうような言葉に、イヴァンは無表情のまま振り返って睨みつけた。すると全員が一瞬で固まった。まさか自分が、こんなふうにおちょくられる日が来るとは思わなかった。ため息が、自然と漏れた。


「カティア嬢、待たせてすまない。さあ、行こうか」


「はい♪」


 カティア嬢は弾む足取りで、イヴァンの隣に並んだ。


    ◇ ◇ ◇


 イヴァンたちは、再び腐葉の森へ足を踏み入れた。あの時の“やつ”が、まだどこかに潜んでいるのではないかという不安が、頭をよぎる。


「ルカ、今日はレオニードがいない。お前が魔物の大体の場所を把握してくれ」


「了解です」


 そう言うと、ルカはすぐに索敵を始めた。だが、しばらくして首を振り、イヴァンの方を振り返った。


「角兎だと反応が弱すぎて、俺だと分からないみたいです」


「そうか、ならとにかく奥に向かってみるか……」


「あ、お兄ちゃん! 待って!」


 カティア嬢の声に振り返ると、サーシャが勝手に別の方向へ歩いていくのが見えた。


「おい、待て! 勝手に行動するな!」


 イヴァンが制止すると、サーシャは振り返り、面倒くさそうに「は?」とだけ言ってそのまま歩みを進めた。イヴァンのこめかみが、ぴくりと引きつった。カティア嬢は、戸惑いながらもサーシャの後を追いかけた。


「ちょっとちょっと、二人とも待って!」


 ルカが声を上げ、すぐに二人の後を追い始めた。


「イヴァンさん、とにかくついていきましょう。角兎の居場所が分からないのは変わりませんし」


 ラリッサにそう促され、イヴァンは納得しきれないまま歩き出した。早くもこの調子だ。この先、本当にまともに戦えるのか──不安しか湧いてこなかった。


 しばらく歩いたところで、先を行くルカたちが足を止めた。


「リーダー、いましたよ。角兎が群がってます」


 茂みの奥を確認し、イヴァンは一瞬、言葉を失った。これだけの群れに、手探りで辿り着くものなのか。偶然にしては、出来すぎている。


「なんでこんなに角兎が大量発生しちゃったんでしょうね」


 ラリッサが茂みから覗き込むようにして言った。


「いや、なんか発生とか繁殖とは違うって説明書きがあったよ」


 ルカがラリッサを見て答えると、横からボグダンが尋ねてきた。


「強い魔物が倒されて、生態系が崩れたとかじゃないのか?」


「え、いや……そんな風には書いてなかった気がするな。俺もちゃんと読んでないけど。リーダーは読んでましたよね?」


 ルカがそう言い、イヴァンに話を振った。


「ああ、読んだが──」


 そのとき、サーシャのぼそりとした呟きが耳に引っかかり、イヴァンの言葉は途切れた。周囲は誰も反応していない。どうやら、聞こえたのは自分だけだったようだ。


 ──これだから人族は……。


 それは、自分を人族の外に置いたような言い方だ。小さな違和感が残った。


 ……どういうことだ。


 だが、それを問いただす間もなく──


「魔物は、そもそも生態系がないらしいですよ?」


 あまりにも当然のように口にされたカティア嬢の言葉に、一行は一斉に動きを止めた。全員が驚いた表情で、カティア嬢を見た。


「え? そうなんですか?」


 ラリッサが聞き返した。


「はい。なんか、魔物って動物とは違うとか何とか……私も詳しくないんですけど……そういうのはお兄ちゃんが詳しくて! ね!」


 そう言って、カティア嬢は何の迷いもなくサーシャの方を見た。だが当の本人は、こちらを見ることもなく、まるで聞こえていないかのように黙っていた。それでもカティア嬢は気にした様子もなく、さらに声を弾ませた。


「お兄ちゃん、説明してあげて!」


「やだ。どうせ説明しても、そっちには理解できないだろ」


 その一言が落ちた瞬間、空気がピシッと張り詰めた。胸の奥で何かが軋み、イヴァンの体が思わず反応した。一歩踏み出しかけたところを、左右からルカとボグダンに押さえ止められた。ラリッサは笑顔を保ったまま肩を強張らせ、感情を押し殺すようにかすかに震えていた。


「と、とにかく、角兎の討伐を開始しましょう」


 ラリッサは口角を上げたまま、怒りを噛み殺すように言葉を絞り出した。声は抑えられているが、滲み出る感情までは隠しきれていない。その様子を見て、イヴァンは一度大きく息を吸った。胸に残った熱を押し込めるように、無理やり呼吸を整えた。


 そのとき──


「大地の精ゼムリャよ、槍となりて、我が敵を穿て──《大地の槍》」


 唐突な詠唱の直後、サーシャが魔法を放った。


「おい! 何を勝手にやってるんだ!」


「そうだよお兄ちゃん! あんな可愛い姿なのに、そんな無慈悲に酷いよ!」


 イヴァンは、思わずサーシャの肩を掴んでいたが、カティア嬢の一言に一瞬で力が抜けてしまった。


「え、いや、カティア嬢……そういうことじゃ……」


「カティア」


 サーシャは、肩を掴んでいるイヴァンの手を軽く払うと、カティア嬢の名を呼んだ。それからカティア嬢に近づき、彼女の背に手を当てた。


「どんなに可愛い姿だろうと、魔物だってことを一回確認してこい」


 そのまま、ぐっと押し出す。押したというより、放り投げたに近い。


 なんて力だ! ──いや、それよりも、カティア嬢だ!


「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」


「カ、カティア嬢っ!!」


 角兎たちが一斉に反応した。頭の角を突き出し突進していく角兎を、カティア嬢は悲鳴を上げながら必死にかわす。


「いやぁぁ! お兄ちゃんの意地悪ぅぅぅ!」


「カティア嬢!」


 反射的に、イヴァンは前へと踏み出していた。


「ボグダンは俺と! ルカは援護を! ラリッサはサポートを頼む!」


 指示を飛ばしながら、次々と角兎を斬り捨て、一直線にカティア嬢のもとへと向かう。当の本人は相変わらず泣き叫びつつ、迫る角兎の攻撃を必死にかわしていた。


 ……彼女は討伐に来たんじゃなかったのか? だが、今はそれどころじゃない。呆れを飲み込み、イヴァンはさらに踏み込んだ。


「雷の精グローザよ、その光を分かち、敵を裂く刃となれ──《雷光の舞》」


 サーシャの魔法が放たれ、周囲に無数の雷が降り注ぐ。雷光は角兎を次々と打ち据え、群れが一気に乱れた。閃光が、カティア嬢の足元を掠めるように落ちる。


「わっ!」


 一瞬の驚きに体勢を崩し、彼女は厚く積もった落ち葉の上を滑った。そのまま抵抗する間もなく、視界から消える。落ち葉が弾け、深い窪みへと落ちていった。


「あ……」


 サーシャが、しまった、という顔で短く息を漏らす。


「カティア嬢!」


 イヴァンは焦って駆けつけ、その先を覗き込んだ。


「いたた……」


 窪みの底で、カティア嬢がゆっくりと身を起こした。イヴァンの目に映ったのは、彼女の足元一面に蠢く大量の角兎だった。


「お兄ちゃん、酷いよーーー!」


 悲鳴のようにカティア嬢が叫んだ。後からやってきたサーシャは彼女が落ちた窪みの中を一瞥すると、淡々と言い放った。


「カティア、全部倒して登ってこい」


「やだぁ! こんなに可愛い生き物、こんなに倒せないよぉ!」


「そいつらは可愛い生き物じゃない。魔物だ。殺らないと殺られるぞ」


「お兄ちゃんの鬼ぃぃぃぃ!」


 泣き叫びながらも、カティア嬢は深く覚悟を決めたようだった。その決意が動きに乗り移ったかのように、迷いなく次々と角兎を斬り伏せていく。倒れる数に比例して、周囲の群れが目に見えて減っていった。


「うわ、カティアちゃん凄い……。あんな大量の角兎を一人で……」


 ルカが感心した声を漏らしながら、カティア嬢の戦う姿を見つめていた。


「ルカ! 感心して見てる暇があったら、どんどん射抜け! とにかく数を減らすんだ! ラリッサ、カティア嬢が怪我したら優先的に回復を頼む!」


 イヴァンは仲間に指示を飛ばしながら、目の前の角兎を次々と薙ぎ払っていく。サーシャも魔法で数を減らしている。


 だいぶ数が減った頃、窪みの下からカティア嬢の呻き声が聞こえてきた。


「うぅぅ。上がれないよぉ。お兄ちゃん、魔法で何とかして〜」


「いや、あっち回って登ればいいだろ」


 サーシャが素っ気なく返すと、カティア嬢は頬を膨らませた。


「お兄ちゃんのケチ! いいでしょ! 落ちたのはお兄ちゃんのせいなんだから!」


 駄々をこねるカティア嬢の様子に、仲間たちから思わず笑い声が漏れた。


 イヴァンたちはほぼ角兎の討伐を終え、逃した個体はそのままにして、深追いせず魔石の回収へと移っていた。


「だいぶ倒したし、これで十分だろう。残りは他の冒険者に任せよう」


 周囲を確認してイヴァンが言うと、ルカが魔石を拾いながら答えた。


「ですね! 角兎くらいなら新人でも討伐できるでしょうし」


 そんな会話が交わされる中、サーシャの詠唱が森に響き渡った。


「大地の精ゼムリャよ、揺るがぬ掌となりて、彼の者を救い上げよ──◎△$♪×¥○」


「え?」


 思わず、イヴァンたちはサーシャの方を振り返った。詠唱を噛んだのか? そんな疑問が頭をよぎった瞬間、足元の地面が盛り上がり、ぼこぼこと波打ち始める。


 次の瞬間、突き出た土塊に押し上げられ、イヴァンは不自然な体勢のまま宙を舞った。


「きゃあっ!」


 カティア嬢の悲鳴が耳に届き、思わず視線が下へ走る。彼女は盛り上がった地面に押し出される形で窪みの外へ出ており、そのまま体勢を崩して尻もちをついていた。ルカは逆に窪みに落ち、ボグダンは転倒していた。ラリッサだけが、呆然とこちらを見上げていた。


「イ、イヴァンさん!!」


 ラリッサがようやく声を上げた。高く弾き飛ばされたイヴァンを見て、顔から血の気が引いているのが分かった。


 まずい! このまま落ちたら、さすがに無事では済まない! だが体勢を立て直そうとしても、思うように動かせない。もう終わった──そう思った、そのときだった。


「イヴァンさん!」


 カティア嬢の声とともに、ふわりと、柔らかな感触に全身を包まれる。背と膝裏をしっかり支える腕、触れ合った体から伝わる温もり。甘い香りが鼻をくすぐり、さらりとした髪が頬に触れた。すぐそばに、大きく輝く瞳と透き通る肌がある。吐息が触れそうなほど、近い。


 ──息を呑んだ。頭が真っ白になり、ただただカティア嬢の顔を見つめた。


 ……な、何が……起きた? はっとして息を吐き、ようやく思考が追いつく。


 ち、近いっ!!


「カ、カ、カ、カティア嬢!!」


 反射的に顔を覆い、慌てて横を向く。


 すると、ラリッサと目が合った。瞳を輝かせ、口元に手を当ててこちらを見ていた。窪みから這い上がってきていたルカは、生温かい視線を向けていた。イヴァンは二人の視線の意味が、一瞬分からなかった。


 呼吸を整え、状況を把握する。改めて確かめると、イヴァンはカティア嬢に両腕でしっかりと抱えられていた。


「わー、お姫様抱っこ……!」


 ラリッサの少し興奮した声が響いた瞬間、顔に一気に熱が集まり、思考が弾け飛ぶ。


「カティア嬢! す、すまない! お、下ろしてくれ!」


 必死にそう告げると、カティア嬢はそっと地面に下ろしてくれた。だがイヴァンはその場にへたり込み、動揺がなかなか収まらない。片手で顔を覆い、深く呼吸を繰り返す。


「イヴァンさん、大丈夫ですか? どこか怪我しました?」


 カティア嬢の声に、顔を上げられないまま答えた。


「い、いや……大丈夫だ……」


 本当は平静とは程遠かったが、それ以上何も言えなかった。


「カティアちゃん力があるんだね。リーダーを受け止めちゃうなんて」


 近づいてきながらルカがカティア嬢に声をかけた。


「えへへ。お兄ちゃん程じゃないんですけど。我が家はそういう血筋なんで♪」


「え? どんな血筋……?」


 カティア嬢とルカのそんなやりとりを聞きながら、イヴァンは少しずつ心を落ち着けていた。小さな足音が近づいてくる。


「もう、いいんだろ? 帰りたいんだけど」


 サーシャのその一言で、胸を占めていた動揺が、一気に怒りへと切り替わった。


「お前っ!!」


 声を荒げて立ち上がると、ルカが慌てて間に入ってきた。


「まぁまぁ、リーダー。今日はこれで帰りましょう! 色んな意味でいいことあったんだし!」


「そうですよ! いいことあったじゃないですか!」


「そうだな、いい思い出になったな」


 ルカに続いて、ラリッサが言うと、更にボグダンが続いた。


「う、うるさい!」


 イヴァンは声を張り上げた。


「いいことあったんですか?」


 背後から聞こえるカティア嬢の声に、振り向くものの、恥ずかしさのあまり顔を直視できなかった。


「いや、カティア嬢。なんでもないんだ、気にしないでくれ……」


 まだ熱い顔を片手で覆いながら、イヴァンは答えた。指の隙間から見ると、カティア嬢が首を傾げていた。


 ……もう、訳が分からない。サーシャに腹を立て、カティア嬢に取り乱し、またサーシャに腹を立てる。今日だけで、何度感情を揺さぶられたのか。どっと疲労が押し寄せ、イヴァンは深くため息を吐いた。


    ◇ ◇ ◇


 イヴァンたちは街へ戻り、ギルドへの報告を済ませた。それから、魔石と引き換えに報酬を受け取り、それをルカが人数分に分配し始めた。


「はい、これがカティアちゃんとサーシャの分!」


「わあ、ありがとうございます♪」


 ルカが手渡すと、カティア嬢は嬉しそうに受け取り、サーシャは相変わらず無表情だった。


「じゃあ、俺はパンを買ってから帰るから」


 そう言って、サーシャは振り返ることもなくギルドの出口へと歩き出した。


「ちょっと待ってよお兄ちゃん! あ、じゃあ、皆さん、今日はありがとうございました!」


 カティア嬢は元気よく手を振りながら、慌ててサーシャの後を追っていった。イヴァンたちは手を振り返し、二人の背中を見送った。


 二人の姿が見えなくなった途端、辺りが急に静かになったように感じた。自分のため息だけが、やけに響く。抑えきれなかった。押し込めてきた想いが、強く疼いた。


 ……もっと一緒にいられたなら……。


 イヴァンは観念したように呟いた。


「ルカ……すまない」


「え? どうしたんです? 謝って」


 ルカが首を傾げて問い返した。


「お前が言ってたことは正しかった」


 そう告げると、ルカは嬉しそうに笑った。


「俺、応援もしますし、協力もしますから!」


「私もです!」


「俺もだ」


 仲間の言葉を聞き、イヴァンの胸の奥に温かいものがじわりと広がった。


 この気持ちに、もう背を向けることはできない。

ご感想・レビュー・誤字報告など、ぜひお気軽にいただけたら嬉しいです。

「ここが気になった」「このキャラが印象に残った」など、一言だけでもとても励みになります。


いただいたご感想は、今後の創作の参考として大切に読ませていただきます。

楽しんでいただけましたら、ぜひ気軽にお声を聞かせてください。

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