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第4話

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

「何が、“お兄ちゃんは可愛いから、私が守ってあげなきゃなんだもん!”だよ。バカティア!」


 吐き捨てるようにそう言って、サーシャは石畳を踏み鳴らすように歩いていた。


「苦労も喜びも一緒に分かち合いたいって何だよ……。別に俺のことは、あいつに関係ないだろ……」


 頭の中に、さっきの言葉がこびりついて離れない。理解できない。ああいうことを、あいつが言うのが──気に入らない。


 ──うるさい。


「……ぁあああ! うるさい! うるさい! ほんと鬱陶しいな、くそっ!」


 苛立ちのまま両手を振り回し、空を切る。何かを振り払うような動作だったが、当然、何も消えはしない。


 舌打ちをひとつして、深く息を吐いた。


 どうせ考えても分からない。カティアが理解不能なのは、今に始まったことじゃない。今さら一つ増えたところで、大差はない。


 そう無理やり思考を切り替えながら、サーシャはそのまま歩き続けた。


「……はぁ……新作のパンでも出てないかなあ」


 やがて見えてくる、小さな店。“精霊の窯”。


 落ち着いた色合いの外壁と控えめな看板。通りの喧騒からわずかに切り離されたその空気が、妙に心地いい。


 扉を開けると、澄んだ音でドアベルが鳴った。その音が、店の中にすっと溶けていく。静かだ。


 奥から店主が顔を出した。


「やあ、いらっしゃい。今日も来てくれたんだね。嬉しいよ」


 サーシャは軽く顎を引くだけで応じ、そのまま店内のパンに視線を向ける。焼きたての香りが鼻をくすぐった。


「おや、どうしたんだい? 何かあったって顔だね」


「……人の、気持ちって面倒くさいなって思って。俺には理解できない」


 店内から、行き交う人々を窓越しに眺めながら、サーシャはぽつりと零した。


 店主はそれを聞き、微笑みながら頷いて奥から椅子をひとつ持ってくると、カウンター前に置き、軽く手で示した。


「お茶でもどうかな? 今日、初めてスコーンを焼いてみたんだ。食べるだろう?」


 その言葉に、サーシャは勢いよく振り返った。


「食べる!」


「お茶はいつものでいいかな?」


「ありがとう、ジトさん」


 そう返事して、サーシャは椅子に腰掛けた。


 ほどなくして、店主はまるで最初から用意していたかのように、温かいお茶とスコーンを奥から運んできて、カウンターへ置いた。


 サーシャは目を輝かせて、スコーンに手を伸ばすと、黙々と食べだした。


 外はさくりと軽く、中はほろりとほどける。甘さがじんわりと広がった。


 少しだけ、機嫌が戻った。


「それで? 人の気持ちが理解できなくて、君は困っているのかい?」


 口の中のものを飲み込んでから、素っ気なく答える。


「いや、困らない。別に興味ないし。俺が生きていくのに必要なものでもないし、正直どうでもいい」


「なら、そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな」


 店主は柔らかく笑った。


 しかし、サーシャは肩をすくめた。


「カティアが……どうも大切にされるだけじゃダメらしいんだ。苦労も喜びも一緒に分かち合いたいとか言ってた。それに、俺を守りたいとも」


「へえ……」


「意味が分からない。分かち合えるわけがない。弱いくせに、守るとか……どうしたらそうなるんだ」


 そう言ってサーシャはお茶を一口飲んだ。喉を通る温かさと、鼻を抜ける香りに息を吐いた。


 店主が、ふと顎に手を当て考え込むように口を開いた。


「意外だな。君はそういうことは気にしないと思っていたよ」


「まあ……他の人間ならどうでもいいけど、カティアは別だからな……」


 サーシャは視線をカップに落とし、ぼそりと呟いた。


「宝物だから?」


 その言葉に、サーシャは持っていたカップを置き、店主の方を見た。


「その話、ジトさんに言ったっけ?」


 サーシャの問いに、店主は微笑みながら答えた。


「随分前にね」


「そっか」


 サーシャは納得して、またお茶を口にした。


「でも彼女は、君以外の人たちにも大切にされるだろう? 多くの人に愛されている」


「あー。あのダダ漏れてる魔力ね。あいつの性格と合わさって、妙に人を引き寄せるんだよ。ほんとダルい」


 サーシャがうんざりしたように言うと、店主は楽しげに笑った。その顔に、ふと今日の出来事が浮かんだ。


「そういえば今日、その魔力が効いていない奴がいたな」


「それは随分、珍しい存在だね」


「家族以外じゃ、滅多にいないからな。でも、そいつ面倒臭そうな奴だったから、関わりたくない」


 そう言って、サーシャは再びため息を吐いた。自分の言動にいちいち感情的な態度を見せては、すぐに引っ込める男の顔が浮かんだ。何が気に入らないのかは分からないが、関わるだけ面倒だ。


「人との関わりは、運命だからね。その流れは簡単には変えられないよ」


 意味ありげに微笑む店主に、サーシャはわずかに眉をひそめた。


「くだらない。自分のことは自分で決める」


 そう言って少し不機嫌そうに、サーシャは立ち上がった。そしておもむろにパンを選び始める。


「今度、新作を作ろうと思うんだ。君に気に入ってもらえるように頑張るよ」


 店主の言葉に、サーシャはふと顔を上げた。


「へー。楽しみにしてるよ」


 そう言って、サーシャはわずかに口元を緩めた。それから素早く選び終えると、カウンターへ戻り会計を済ませる。


「また、お茶を飲みにくるといいよ」


「ありがとう。ここ、静かだから好きだよ。雑音がない」


「雑音……ね」


 店主はどこか楽しげに笑った。


「じゃ」


 軽く手を上げて、サーシャは店を出た。


 外の空気に触れた瞬間──


「あー……やかましい」


 思わず、そう呟いた。


 さっきまで消えていた“いつもの感覚”が、すぐに戻ってきた。


“くすくす”

“くすくす”


 どこからともなく、耳にまとわりつくような笑い声。


 特別でも、珍しくもない。サーシャにとっては、ただの雑音だ。


 構わず、サーシャは歩き出した。

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