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第31話

本作では、創作補助としてChatGPTを利用しています。


物語・設定・キャラクターは作者自身が作成し、文章の推敲や表現の整理にAIを活用しています。


そのため、本作はAI利用区分を「AI直接使用」に設定しています。

「それで、いつ行くんですか?」


 デニスが話を戻すようにイヴァンに尋ねた。


「明日、カティア嬢に話してからだからな。早ければ明後日になるだろう。……それと、鍛冶神匠ボリスとの話が上手くいったら、ボグダンの盾とレオニードの剣も頼もうと思うんだ……」


 二人の反応を窺うようにイヴァンが言うと、レオニードはため息をついた。


「まだ気にしてたのか。俺たちはもう新しい装備があるんだ。お前のだけ作ればいい」


 レオニードの言葉に、ボグダンも頷いた。


「いや、それは分かってる。だが、俺の気持ちが収まらないんだ。一つくらい余分に装備を持っててもいいだろう?」


「そうですよ。良い装備なら、それに越したことはないでしょう?」


 ルカが付け足すように言うと、ラリッサがボグダンの袖を引っ張った。


「ボグダンさんは、みんなへの攻撃を引き受ける役だから、少しでも良い盾を使ってほしいです。また盾が壊れるとか……ない方がいいです」


 ボグダンはしばらく黙ってラリッサを見つめていた。


 やがて、ラリッサの頭にぽんっと手を乗せる。


「……そうだな。分かった。話がついたなら、新しい盾を作ってもらおう」


 ボグダンのその言葉に、ラリッサは安堵したように微笑んだ。


 その様子を見届けると、ルカはレオニードへ視線を向けた。


「レオニードさんは?」


「いや、俺はいい」


「なんでですか?!」


 ルカが驚き立ち上がる。


「ボグダンは盾役だ。最善の装備を持てばいい。俺は過ぎた物を持つつもりはない。そういう物は腕を鈍らせる。気付けば、それがあることを前提に戦うようになる。替えの利かない物は当てにしたくない」


 ルカは口を開きかけたが、何も言わずに腰を下ろした。


 だが、イヴァンの中では、あの時、自分のせいでレオニードの剣を駄目にしてしまったという思いだけは、どうしても消えなかった。


「レオニード──」


「イヴァン。俺が頼るべきは、剣じゃない」


 イヴァンの言葉を遮るように、レオニードが付け加えた。


 イヴァンは言葉を飲み込んだ。


「……まあ、とにかく。サーシャが一緒に行くのかはまだ分かりませんけど、ちゃんと生きて帰ってきてくださいね。リーダーがいないと色々困るんで」


 デニスがその場を収めるようにそう言って立ち上がった。


 それを合図にしたように、皆もそれぞれの部屋へ戻っていった。


 イヴァンも自室に戻ると、鎧を脱ぎ、やっと一息ついた。


 思えば今日は一日が長かった気がする。疲れ切った体をベッドへ預けた。


 レオニードの剣は、諦めなければならないのだろうか……。だが、これ以上説得しても無理なのは、自分でも分かっていた。


 自然とため息がこぼれる。


 また明日考えよう。そう思ったのを最後に、イヴァンの意識は静かに眠りへと沈んでいった。


 翌朝。イヴァンはいつもより少し早く目を覚ました。


 昨夜はそのまま眠ってしまったせいで、汗ばんだ肌が気持ち悪い。軽く身体を伸ばし、浴室へ向かう。


 廊下を歩いていると、ふと中庭が目に入った。レオニードが、朝日に照らされながら静かに剣を振っている。


 ……もう鍛錬か。イヴァンはその姿を目に留めると、そのまま浴室へ入った。


 湯で汗を流し、身支度を整えると、イヴァンは家を出ようと玄関へ向かった。


 途中、もう一度中庭へ目を向ける。相変わらずレオニードは剣を振り続けていた。


 気配に気付いたのか、その動きが止まる。


「出かけるのか」


「ああ。カティア嬢に話をしてくる」


「そうか」


 それだけ言うと、レオニードは再び剣を構えた。イヴァンも小さく頷き、家を後にした。


 ギルドに着くと、まだ少し早い時間だというのに、中は冒険者で賑わっていた。


 カウンターに目を向けると、いつぞやの女性職員と視線が合った。


 彼女はにっこりと微笑むと、カウンターから出てきて声をかけてきた。


「おはようございます、イヴァンさん。あれ、今日は軽装なんですね」


「ああ、依頼を受けに来たわけじゃないんだ。カティア嬢に用があってな……『なかよし団』は、まだ来てないか?」


 イヴァンは少し遠慮がちに尋ねた。求婚騒動以来、ギルド側の対応に自信が持てなかった。


 そんなイヴァンを見て、彼女はくすっと笑う。


「まだ来てないですね。多分、もう少ししたら来るんじゃないですか?」


「そうか、ありがとう。少し待ってみるよ」


 イヴァンは安堵して小さく頷いた。


「イヴァンさん、少し変わりましたよね。前は人間不信かってくらい、女性に対してゴミを見るような目を向けてましたよね」


「いや、そんな風に見てたつもりはないんだが……。それに、さすがに君にはそんな態度は取れない。助けてもらったしな」


「いえ! あれは、お互い様なので! ……あ、それより!」


 そう言うと、彼女は顔の前で両手を合わせた。


「これからもイヴァンさんには親切にしますので、一つお願いを聞いてもらえませんか?」


 また金の話だろうか──。イヴァンは思わず息を飲んだ。


「なんだ? 俺にできることなら……」


「今度、孤児院に遊びに来てくれませんか? 子供たちがイヴァンさんに会ってみたいって言ってるんです。最近、ずっと話題なんですよ」


「……構わないが、どうして俺に? その……会いたくなるような要素は、ないと思うんだが……」


「何言ってるんですか! イヴァンさん、この街じゃ色んな意味で有名人なんですよ」


 色んな意味と言われても、何を指しているのか見当もつかなかった。


 きっと悪い意味ではないのだろう。イヴァンは苦笑し、小さく頷いた。


「わかった。ただ、遠くへ行く予定があって、しばらく街を離れるんだ。その後になってしまうが……構わないか?」


「はい! もちろんです! やった! 子供たち、きっと喜びます!」


 彼女は嬉しそうに飛び跳ねると、手を振りながらカウンターへ戻っていった。


 イヴァンはそれを見送ると、端へ行き、壁にもたれた。


 未だに周囲の冒険者の視線が突き刺さる。これまで起こした騒動は、まだ収束していないということなのだろう。


 顔をどこへ向ければいいのか分からず、ため息をつきながら俯いた。


 その時だった。ギルドの扉が開き、カティア嬢とサーシャが姿を現した。


 サーシャはパンを片手にもぐもぐと口を動かしながら、相変わらず気だるそうにしている。


「カティア嬢」


 イヴァンが呼び止めながら近づくが、今回はサーシャは逃げる様子がなかった。


 どうやら昨日の肉がまだ効いているらしい。黙ってイヴァンを見ている。


「あ、イヴァンさん。おはようございます」


「やあ、おはよう。サーシャも……」


 イヴァンがそう言ってサーシャを見るが、何も返ってこなかった。


 イヴァンは思わず苦笑いし、カティア嬢へ向き直る。


「昨日の話なんだが、あの後、仲間に話してな。俺はいつでも向かえるんだが、カティア嬢の都合はどうだろうか?」


「それなら明日にでも向かいますか? 善は急げです♪」


 そう言って笑顔で小さく握り拳を作るカティア嬢の横で、サーシャが口を開いた。


「……向かうって、なんの話だ?」


 その言葉に、カティア嬢の肩がびくっと跳ねた。


 イヴァンが首を傾げながらサーシャを見ると、怪訝そうな顔をしていた。


「鍛冶神匠ボリスを紹介してもらうことになったんだが……カティア嬢から聞いてないのか?」


「……聞いてない」


 サーシャが機嫌悪そうに答えた。


「カティア嬢。どういうことだ? サーシャに話すように言ったはずだが?」


 イヴァンがそう言うと、カティア嬢は指先を合わせ、少しもじもじした。


「え、えー……。なんて話そうかなって悩んでたら、眠くなっちゃって……気付いたら寝ちゃってました! てへ♪」


 カティア嬢が可愛く返してきた。


 確かに可愛い。だが、大事なことを後回しにしないでくれ……。イヴァンは額に手を当て、大きく息を吐いた。


 ふと見ると、サーシャがカティア嬢を黙って睨んでいた。


 カティア嬢はその視線から逃げるようにそっぽを向き、苦笑いしている。


 カティア嬢のその様子に、サーシャは小さくため息をつくと、イヴァンへ視線を向けた。


「それで、ボリスじいさんを紹介って、なんでだ? もしかして、その──」


 サーシャがイヴァンの腰の剣を指さして言いかけた、その時だった。


 イヴァンの肩へ、ずしりと重みがのしかかった。


「それは俺がイヴァンの剣を折ってしまったからだよ……」


 ダニールだった。


 イヴァンの肩に腕を回し、寄りかかるようにして立っている。その姿は、いつもの威勢の良さが嘘のように、ひどく元気がなかった。


「やあ、カティアちゃんにサーシャ」


 ダニールが力なく挨拶をすると、背後からアンドレイとミハイルも姿を現した。


「やあやあ。みんな、おはよう〜」


 ミハイルの気の抜けた声が、ダニールとはあまりにも対照的だった。


「ダニール、いい加減にしろ。イヴァンの剣を折った癖に、面倒くさい絡み方をするな」


「そうです。イヴァンの剣を折ったのは俺です……。イヴァン、その何とかって鍛冶師に頼むなら、俺が金を払うからさ……アンドレイとミハイルに、もっと優しくしてくれって頼んでくれよぉ……昨日から二人とも酷いんだよ……」


「やだなダニール。僕たち、いつも優しく接してあげてるじゃないか」


「そうだぞ。それに俺たちは、お前がイヴァンの剣を折ったという事実を言ってるだけじゃないか」


「うんうん、そうだよ。イヴァンの剣を折ったダニール」


 ミハイルが楽しそうに言った。


「剣折りダニール」


 アンドレイが真顔でそう言うと、ダニールは深いため息をついた。


「な、イヴァン……。こいつら酷いだろ」


「いや、あれは本当にダニールが悪いわけじゃないんだ。あの剣は寿命が来てたんだ」


 イヴァンが慌ててアンドレイとミハイルに訴えた。


「でも、“街道喰らい”の時は平気そうだったよね? その後、【暗穴の墳墓】で何か強い相手とでも戦ったとか?」


 ミハイルが的を射たことを言ってきて、イヴァンは無意識にサーシャへ視線を向けてしまう。


 しまった。


 慌ててカティア嬢を見ると、目が合ってしまった。


 どきりとして、咄嗟に視線を逸らすが、どこへ向ければいいのか分からず泳いでしまう。


「あ、ああ……まあな……」


 上手く答えられず、言葉を濁した。


 ……気付かれただろうか。


「はわっ?!」


 突然、カティア嬢の変な声がギルド内に響いた。


 イヴァンが振り向いたその途端、カティア嬢がイヴァンの肩をガシッと掴んだ。


 その勢いでダニールは押し退けられ、


「のわっ」


 と声を上げて倒れた。


「イ、イィ、イ、イィイヴァ、イヴァ──」


 カティア嬢が震える声で名前を呼ぼうとしながら、どんどんイヴァンを後ろへ押しやっていく。


「なっ! カ、カ──」


 なんとか転ばないよう必死に足を動かすので精一杯で、イヴァンも口が回らない。


 そのまま勢いよく真後ろの壁まで来ると、背中を強く押し当てられ、その勢いで後頭部を打ち付けた。


 ゴンッ──。


 鈍い音がギルド内に響く。


「っ……!」


 イヴァンが無言で痛みに耐えていると、カティア嬢がぐいっと顔を近づけた。


「イヴァンさん! も、も、もしかして……」


 顔が近い!


「カ、カティア嬢っ! か、顔が──」


 そう言い切る前に、イヴァンは反射的に顔を横へ逸らした。


 その瞬間、目の前でカティア嬢の手がドンッと勢いよく壁へ押し当てられる。


 驚いてカティア嬢へ目を向けると、彼女は青い顔でイヴァンを見つめながら口を開いた。


「……もしかして、イヴァンさんの剣が折れたのって、お兄ちゃんのせいですか?」


 その言葉に、イヴァンは目を閉じ、眉間に皺を寄せた。


 どうしたものかと悩む。だが、ここで彼女に嘘をつくのも違う気がした。


 もう一度カティア嬢を見る。今にも泣きそうな顔だった。


 ──こういう時は、何が正解なんだ?!


 悩みに悩み、イヴァンは口を開く。


「すまない、黙っていて……」


「やっぱり!」


 カティア嬢が頭を抱えた。次の瞬間、その場へ膝をついた。


「カティア嬢!」


 イヴァンは慌ててしゃがみ込み、カティア嬢へ手を差し伸べようとした。


 途端に、その手をカティア嬢がガシッと強く掴み、痛みが走る。


 痛い!


「他には?! まだ何かあったりしますか?!」


 凄い形相でカティア嬢が尋ねてきた。またイヴァンは目を瞑り、眉間に皺を寄せた。


 どうしたものか……。次は何が正解なんだ。


 悩んでいる間にも握られる手の力は増していき、ミシッと音がした気がした。


「──レオニードの剣が……駄目になってしまったんだっ!」


 指を折られるのではないかという焦りで、思わず口から漏らしてしまった。


「ぎゃふっ!」


 カティア嬢が変な声を上げ、顔を両手で覆った。


「お、怒られちゃう……。お父さんとお母さん……とっても厳しいんです……。私のせいで、人のものが壊れてしまったなんて知られたら……」


「カティア嬢、気にしないでくれ。どれも君のせいではない」


 そう言いつつも、心のどこかで、本当にそうだよな? と、確かめるように思ってしまう。


「なあ。お前らさっきから何してんの?」


 ダニールが近づいて、声をかけてきた。


 はっとして周りを見渡すと、ギルド中の視線が自分たちへ集まっていた。


「カティア嬢、人の目もある。とにかく立ってくれ。この話は別の場所でしよう」


 イヴァンが慌ててカティア嬢へ手を差し伸べると、またもやガシッと両手で握られる。


「イヴァンさん! もし、うちの両親に会っても、このこと黙っててください!」


 そう言って、目を潤ませながら見つめてきた。


 反則だ……。だが、それどころではない。


 今まさにギルド中の視線を集めてしまっていて、居たたまれなかった。


 イヴァンはカティア嬢の手にもう片方の手を添えると、そのまま優しく引き起こした。


「君がそう望むなら、黙っていよう。だから落ち着いてくれ」


 そう言って手を握り合う二人を、ダニールは交互に見比べた。


「え? 何? お前ら付き合ってんの?」


 イヴァンは弾かれたようにカティア嬢の手を離し、ダニールを振り返った。


「なっ! 何を言っているんだっ! と、とにかく、カティア嬢。ギルドを出よう!」


 そう言って、イヴァンはカティア嬢の手を握り直し、慌てて出入口へ向かった。


「ちょっ、待てよ! なあ! やっぱり付き合ってんじゃねーのかよ!」


「うるさい、黙れ!」


 後ろから追ってくるダニールに言い放つと、イヴァンは扉を開けた。


 振り返ると、サーシャはただその場に立ったまま、こちらを見ていた。アンドレイとミハイルも追ってくる様子はなかった。


 それでも、あまりの恥ずかしさにイヴァンは足を止めることができず、そのままギルドを後にした。

今回、更新までだいぶ時間がかかってしまいました。


書き溜めが尽きてしまったため、現在は執筆しながら更新しています。

のんびりお待ちいただけると嬉しいです!



ご感想・レビュー・誤字報告など、ぜひお気軽にいただけたら嬉しいです。

「ここが気になった」「このキャラが印象に残った」など、一言だけでもとても励みになります。


いただいたご感想は、今後の創作の参考として大切に読ませていただきます。

楽しんでいただけましたら、ぜひ気軽にお声を聞かせてください。

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