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第26話

本作では、創作補助としてChatGPTを利用しています。


物語・設定・キャラクターは作者自身が作成し、文章の推敲や表現の整理にAIを活用しています。


そのため、本作はAI利用区分を「AI直接使用」に設定しています。

 ルカは、重い体を誤魔化しながら、イヴァンとギルド職員のやり取りをぼんやり眺めていた。


「いや、だから、それはサーシャが……」


「そう言われましても……あのサーシャさんですよ? カティアさんですら信じ難いのに、サーシャさんだと言われても……。しかも剣で、なんて……」


 ギルド職員が困ったように眉を寄せる。


「それに、もし事実なら、サーシャさんのランクはイヴァンさんより上ということになります。日頃の実績から見ても、それは考えにくいです」


「それは再査定してくれれば!」


 イヴァンは食い下がる。……まだやるのか。ルカは思わず遠い目になった。


 この人は、化け物なのか?


 満身創痍のはずなのに、どうしてこんなにも粘れるんだ。


 正直、もう帰って寝たかった。


「申し訳ありませんが、我々もいい加減な査定はしていません。調査も試験も行った上でのランク結果です。それに、ご本人たちから申告がない以上、こちらとしても判断は変えられません」


「いや、サーシャは今、疲れて寝ているんだ」


「でしたら、後日サーシャさん本人に申告するようお伝えください。そうでなければ、ギルドとしては『蒼銀の翼』の成果として扱うしかありません」


 職員はそこで一度言葉を切り、淡々と続けた。


「私は、その方が皆さんのためでもあると思いますが?」


「……その発表は、できれば控えてもらえないか?」


 イヴァンの言葉に、職員は小さくため息をついた。


「では、異例ですが匿名扱いにしましょう。それでよろしいですか?」


「ああ、助かる」


 そう言って、イヴァンは納得いかない顔のまま立ち上がった。


 やっと終わった……。


 ルカはほっと息を吐き、イヴァンと共に部屋を出る。


 ホールへ出ると、他の冒険者たちがこちらを見ながら、ひそひそと何かを話していた。けれど最近は、そういう空気にも慣れてしまっていた。


 ……もう、何言われてもいいか。


 そんな気持ちの方が大きかった。


 待っていた仲間たちの元へ向かうと、レオニードだけは立ったままこちらを見ていた。


「終わったか?」


 その平然とした様子に、ルカは内心本気で引いていた。


 ……この人も化け物なのか? みんな疲れ切った顔してるのに、なんでこんな普通でいられるんだ。


「ああ、すまない。帰ろう」


 イヴァンの言葉に、皆が立ち上がる。そのままギルドを出て、帰路についた。


 足取りは重かった。とにかく身体がだるい。家まで、こんなに遠かっただろうか。そう思いながらも、一歩ずつ足を前へ出し続ける。


 やがて、自分たちの家が視界に入った。


 その瞬間だった。ずっと張りつめていたものが切れたように、ふっと身体が軽くなる。嬉しかった。生きて帰れたのだと、ようやく実感できた。


 扉を開け、中へ入った瞬間、思わず声が上がる。


「やったーっ! 帰ってきたー! 家だー! ベッドで寝れるー!」

「風呂に入れるー!」

「温かい飯が食えるー!」


 デニスが続き、珍しくボグダンまで同じ調子で声を上げる。家に帰ってきただけで、こんなに嬉しいなんて。


 その時だった。背後で、どさりと重い音が響く。振り返ると、イヴァンが倒れていた。


「リーダー!!」


 ルカが慌てて駆け寄る。だが、それより早くレオニードがしゃがみ込み、イヴァンの様子を確かめていた。


「……大丈夫だ。意識を失ってるだけらしい」


 その言葉に、皆がほっと息を吐く。


 ……なんだ。この人も、ちゃんと人間だったんだ。ルカは思わず小さく笑ってしまった。


「どうするこれ……放置するのか?」


「デニスさん、辛辣すぎません?」


 苦笑しながらルカが言う。


「とりあえず鎧を脱がせるか。ラリッサは先に風呂へ入って休め。デニス、湯を張ってやってくれ」


 レオニードが次々と指示を出していく。デニスとラリッサが頷いて移動し、ボグダンとレオニードがイヴァンの鎧を外し始めた。


 ルカは手持ち無沙汰のまま、その様子を眺めていた。


 やがて、イヴァンの鎧がすべて外される。


「うわ……血まみれじゃないですか……」


「まあ、そうだろうな」

「あれだけ血を流してたからな」


 冷静な反応を示す二人に、ルカは思わず息を吐いた。これが大人の反応か……。


「どうします? これじゃ、着替えさせても服が汚れますよ?」


 そう言って、返事を待つ。


「……そうだな」


 短い沈黙の後、ボグダンがぽつりと呟いた。


「……風呂に入れるか」


「え?」


 ボグダンの提案に、ルカは思わず声を上げた。


「……そうだな」


「え? 冗談ですよね?」


 まさかの同意に、更に声が裏返る。そこへ、デニスが戻ってきた。


「どうしたんだ?」


「いや、この二人、リーダーを風呂に入れるって言ってるんです……」


「いいんじゃないか? 俺、リーダーの部屋から着替え取ってくるよ」


「いやいやいや! 気絶してる人を裸にして風呂に入れるんですか?!」


「え? ダメか? 意識ない病人だって服脱がせて身体拭いてやるだろ。それに、そのままベッドに寝かせる方がどうかと思うぞ?」


 デニスはもっともらしく言い返す。


「確かに……。いいのか、これ……?」


 なんだか、よく分からなくなってきた。疲れてるせいかもしれない。ルカは妙に納得してしまった。


 やがてデニスが着替えを持って戻ってきた。ちょうどその頃、風呂を済ませたラリッサも戻ってきた。そして、血まみれのイヴァンを見るなり顔色を変えた。


「イヴァンさん……生きてるよね? 怪我してない?」


「ああ、大丈夫だよ。この血、治った怪我の血だから。エルフの霊薬、本当に凄いよな」


 ルカが答えると、ラリッサはほっと息を吐き、今度はレオニードたちへ視線を向けた。


「レオニードさんも、大丈夫ですか? ……ボグダンさんも、無理してないですか?」


 心配そうに見つめている。確かにボグダンは、自分の怪我を平気で放置するタイプだった。


「大丈夫だ」

「俺も大丈夫だ。それよりラリッサ、お前の方が顔色悪いぞ」


 ボグダンの言葉に、ラリッサは少し困ったように笑った。


 そこで、デニスが口を挟んだ。


「後のことは俺たちで大丈夫だ。ボグダンさん、リーダーを運んでください」


「ああ」


 ボグダンがイヴァンを抱え上げる。その瞬間、全員が沈黙した。


「……なんだろ。この人、お姫様抱っこ似合うな……」

「だね……」


 思わず漏れたルカの言葉に、ラリッサまで頷いている。しばらく見つめたあと、ラリッサは自室へ戻っていった。


 その後、イヴァンを浴室へ運び込み、服を脱がせて浴槽へ入れる。


 デニスが髪を洗い、ボグダンが身体を洗い始めた。その光景が、妙に似合ってしまっていて、


「何これ!? どこの王子!?」


 思わず声に出ていた。


「まあ確かに。この人、無駄に顔いいからな」


 デニスが笑う。


「元々貴族だしな」


 ボグダンが付け足した。


「確かに……。それにしても、本当に起きませんね。こんな無防備なリーダー、初めて見るかも……」


 そう呟きながら、ルカはイヴァンの身体を見た。そこには、無数の傷跡が刻まれていた。


 前衛だから、生傷は絶えない。いくら治癒しても、傷跡までは消えない。それなのに、この人は誰よりも前へ出る。仲間を庇い、自分を後回しにする。


 ……この人は、もっと自分を大切にできないのだろうか。


 他人ばかり優先してしまう。だからこそ、今回のイヴァンの暴走気味の行動は、振り回されながらも少し嬉しかった。


 イヴァンのために何かしてやれる。きっと皆も、同じ気持ちなんだと思う。ルカには、そんな気がしていた。


 風呂を終え、着替えさせると、ボグダンがイヴァンを部屋へ運び、ベッドへ寝かせる。


「ふふふ。リーダー、起きたら絶対びっくりしますよね」


 イタズラっぽく笑うと、ボグダンが微笑みながらルカの頭を軽く叩いた。


 二人で部屋を出る。


 広間へ戻ると、レオニードがイヴァンの鎧の手入れをしていた。


「レオニードさん、そんなことまで……。俺も手伝います」


「ああ、助かる」


 その様子を見て、ボグダンは厨房へ向かった。しばらくして、温かい飲み物を持って戻ってくる。それをそっとルカたちの前へ置いた。


「あ、ボグダンさん、ありがとうございます」


 ルカは礼を言い、一口飲む。温かさが喉を通り、ようやく少しだけ息がつけた気がした。


 その時、不意に今日の出来事が脳裏を過る。


 あんなにも、人に恐怖を覚えたのは初めてだった。自分の無力さも、痛みも、全部心に残っている。


 もっと強くなりたい。仲間を助けられる力が欲しい。そう思った瞬間、感情が堰を切った。


「……うう、……みんな無事で良かったああああ……」


 涙が勝手に零れてくる。情けないとは思った。けれど、止められなかった。


 レオニードとボグダンは、何も言わず、その姿を見ていた。


「えっ、何? 泣いてるのかよ、ルカ」


 風呂上がりのデニスが呆れたように言った。


「うるさいですよぉ……」


 ルカは涙を拭いながら、ぐったりと机へ突っ伏す。だが、そのまま眠るわけにもいかなかった。血と汗でべたつく身体が気持ち悪い。


「……俺も風呂入ってきます……」


「溺れるなよ」


「子供じゃないんですから……」


 力なく返事をしながら立ち上がる。もう足に力が入らなかった。


 風呂を済ませ、自室へ戻ったところまでは覚えている。ベッドへ倒れ込んだ瞬間、意識が沈んだ。


 ──次に目を開けた時、部屋の中はやけに明るかった。


「……え……もしかして、もう昼?」


 ルカは重たい体を起こし、ベッドから這い出た。


 部屋を出て一階へ降りると、広間ではレオニードが椅子に腰掛け、いつもと変わらぬ姿で双剣を鞘へ納めているところだった。


 気配に気づき、レオニードが顔を上げる。


「ルカ、起きたか」


「あれ? レオニードさん、剣どうかしたんですか?」


「ああ。多分、もう駄目だ。サーシャの剣に耐えきれなかったらしい」


 そう言って、レオニードは再び剣を抜いて見せた。


 ルカには違いがよく分からない。


「イヴァンの剣や鎧も、無事では済まんだろうな」


「うわぁ……。リーダー、装備にはかなり金かけてたのに……。知ったらショック受けそう」


 レオニードが剣を鞘へ戻す様子を見ながら、ルカはふと思い出した。


「あ、そういえば。リーダーってまだ寝てるんですか?」


「イヴァンなら、朝起きてすぐ出かけたぞ」


「え? 一人でですか?!」


「そうだ」


「だ、大丈夫かな……」


 昨日までの様子を思い出すと、不安しかない。だが、レオニードの穏やかな視線を見ていると、不思議と少しだけ安心できた。


 レオニードは双剣を抱えるように持ち、立ち上がる。


「出かけるんですか?」


「とりあえず鍛冶屋に行ってくる。何か食べるなら、スープを作ってある」


「他のみんなは?」


「ボグダンは盾を探しに街へ行った。デニスもどこかへ出かけたな。ラリッサは……まだ部屋だろうな」


 そう言って、意味ありげに二階を見上げる。そのままレオニードは、ぽん、とルカの頭へ手を置いた。


「頼んだ」


「え? ……はあ」


 意味が分からないまま返事をすると、レオニードは小さく笑って家を出て行った。


 何なんだろ……時々レオニードさんで謎なんだよなあ。そう思いながら、ルカは厨房へ向かった。


 鍋のスープをよそい、棚のパン籠をあさっていくつか皿に乗せる。それを広間へ運び、一人で食べ始める。


 家の中は妙に静かだった。本当に二階にラリッサがいるのか疑いたくなるほどに。


 食事を終え、ルカは昨日のことが少し気になり、部屋の扉をノックする。


 コンコン。


 返事はない。もう一度叩く。


 コンコン。


「ラリッサさん?」


 やはり反応はない。……いないのか?


 でも、おかしい。広間にいた時、誰も降りてこなかった。レオニードも“まだ部屋だろう”と言っていた。


 気にはなる。だが、女性の部屋を勝手に開けるわけにもいかない。


 一応、他も探してみるか。


 そう思い、ルカは家の中を見て回る。そして最後に中庭を覗いた時だった。


 花壇の前に、ラリッサがしゃがみ込んでいた。


 そこは、彼女が時折好きな花を植えている場所だった。


 ルカはほっと息を吐く。


 厨房へ戻り、ラリッサの好きなハーブティーを淹れた。それを持って、中庭へ向かう。


「ラリッサさん、いつの間に出てきてたの?」


 声をかけると、ラリッサが振り返る。ルカはハーブティーを差し出した。


「ありがとう。ルカがスープよそってパンを欲張って漁ってる時だよ」


「声かけてくれれば、ラリッサさんの分も用意したのに」


「……あとで食べるよ」


 ラリッサはそう言って、静かにハーブティーへ口をつけた。


 様子がおかしいことくらい、ルカにも分かっていた。昨日のことが原因なのも。けれど、今は無理に聞くべきじゃない気がした。


 きっとラリッサは、自分の中で昨日の出来事を整理しようとしている。そんな気がした。


「ねえ、ルカ。イヴァンさんって、これからカティアちゃんのことどうすると思う?」


「さすがに求婚は諦めるんじゃない?」


 ルカは苦笑混じりに答えた。


「そうかな。でも、カティアちゃんへの気持ちは止められないでしょ?」


「それはそうだけど……昨日のこと考えると……。俺、応援していいのか分からなくなるよ」


 正直、サーシャは怖かった。剣を持たなければ大丈夫だと聞いても、完全には信じきれない。


 もし、あの時の姿が本性なのだとしたら──。


「私ね。今でもイヴァンさんを応援したいと思ってる。それに、カティアちゃんのことも好きだよ。でも……」


 ラリッサの指が、カップを強く握る。


「サーシャだけは、許せない」


 その表情は、いつもの優しいラリッサではなかった。


「あの時、ボグダンさんが死んだと思ったの。盾、砕けたんだよ? イヴァンさんだって、霊薬がなかったら死んでた……」


「ラリッサさん……」


 ルカも、言葉を失う。あの時の絶望は、自分の中にも残っていた。ただ、もしサーシャが、カティアが霊薬を持っていることを知ってて……。


 だとしたら……あれは──


「サーシャは普通の人間じゃないよ。カティアちゃんの明るさで誤魔化されてるけど……あれは、化け物だよ!」


 悲鳴みたいな声だった。ルカは息を呑む。気持ちは分かる。痛いほど。


「あの時、ボグダンさんが死んじゃったらって思った。もし、いなくなったらって……。いつも一緒にいてくれて、守ってくれて……。そんな人がいなくなるって考えたら……」


 ラリッサは俯いた。


「それで、気づいたの」


 ルカはどきりとする。


 ……あれ? これ、もしかして。


「私の中で、ボグダンさんが、すごく大切な人になってたんだって……」


 そう言って、ラリッサはカップで顔を隠す。


 うわ、やっぱりだ!! ルカは心の中で叫んだ。


「だからね。イヴァンさんの恋は応援したい。でも、サーシャだけは許せない。それでもいいと思う?」


「……別に、いいんじゃないかな」


 ルカは少し困ったように笑った。


「俺たちの応援がどうあれ、それでもリーダーは自分の考えで動くだろうし。リーダーの気持ちが止められないように、ラリッサさんの気持ちだって止められないと思う」


「ルカ……」


 なんで俺いつも人の恋愛話聞かされる役なんだろー! 別に求めてないのにー!


 そう心で泣きながらルカは思った。


 俺も恋してーーーーーー!


 そんなことを思いながら、ルカは小さく息を吐く。


 ラリッサは俯いたまま、静かにハーブティーへ口をつけていた。


 ルカはそれ以上何も言わず、空になった自分のカップを持って立ち上がる。


「じゃ、俺これ片付けてきますね」


「……うん」


 厨房へ戻り、カップを流しへ置いた。その時だった。コンコン、と玄関を叩く音が響く。


 ルカは首を傾げる。誰だろう。


 扉を開けると、そこには見覚えのない少女が立っていた。


「……こちらは、『蒼銀の翼』の皆様のお住まいで間違いありませんか?」


ご感想・レビュー・誤字報告など、ぜひお気軽にいただけたら嬉しいです。

「ここが気になった」「このキャラが印象に残った」など、一言だけでもとても励みになります。


いただいたご感想は、今後の創作の参考として大切に読ませていただきます。

楽しんでいただけましたら、ぜひ気軽にお声を聞かせてください。

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