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天一号作戦

六畳ほどの暗い部屋に大和は立っていた。

「・・・以上がこの数日間の作戦概要です。」

「・・・ご苦労様。早速ですがあなたに残念な報告があります。」女性の声が聞こえる。

「何でしょう。」

「実はあなたを最終的に起動させた学者なのですが、アメリカ連邦のスパイ容疑がかけられ逮捕され、国外追放処分されました。」

大和にとっては寝耳に水だ。

数億光年彼方の戦況についてはクラウドサービスによって常時把握しているが。

「・・・私の中に不都合な仕込みは検出されません。」

「あなたは数兆通りのプロテクトに保護されています。最終起動する人間にそんな権限は与えられていません。ですが・・・・。」

ホログラムに映っている、上級宙佐の階級章を付けたその女性の顔がわずかに曇る。

「アメリカ連邦にあなたの存在が漏れた可能性があります。同盟国である手前、厳しく追及は出来ませんが。」

「承知しました。現作戦もステルスモードで動いていますが・・・・更に注意します。」

ホログラムは消え、部屋は明るくなった。

「今のが君の上司なのか?」

部屋の中に帝国海軍中将の階級章を付けた男が入ってきた。

「はい。帝国宇宙軍上級宙佐・・・この時代の階級で言えば、大佐に該当します。」

「こうして見てもまだ信じられん。米国は将来同盟国なのか。」

「はい。」

「君の言ったとおりB29全滅の知らせは流していない。確かに我々も複雑だったのだ。」彼はいった。

「ミッドウエー惨敗以降、我々はとにかく戦意高揚させなければならなかった。それで国民の意識はゆがみ始めた。」

「・・・それを変えるために私は来たのです。伊藤整一中将殿。」

「うむ。」2人は部屋を出て甲板上に出た。

海風にのってカモメが周りを飛んでいる。

巨大な46サンチ砲が空に向かってそそりたつ。

『戦艦大和』。

全長263メートル。

世界最大の戦艦である。

大和は今、沖縄に向かって航行していた。

「どうかね?我が大和は。ああ、失礼。君の名も大和だったな。」

「良く知っていますよ・・・・・。ホテル扱いされたことまで。」

大和は戦艦大和については既知事項である。

古い遠い祖先である。

そして本来の歴史では、今日、大和はここに沈む。

大和はポケットの中から鉛の弾を取りだし、自分の前に弾いた。

そしてその弾が掌の前に来たとき、圧倒的な殺戮兵器に変わった。

すさまじいエネルギー体が空の彼方へ向かったのだ。

「何かね?今のは。」

「レールガンと呼ばれるものです。」

空の彼方を見ながら大和は言った。

その先では大和撃沈のために向かっていた爆撃機群が悲惨な目に会っていた。


「!!」金髪の女性は目を開けた。

「見つけましたよ。ふふ。大和さん。」

日本上空、大気圏外にいた彼女は大和の放った高エネルギーを真っ先に感知していた。

そしてヤンデレ風に笑いながら一気に発射地点まで到達した。


「・・・・。」大和の顔色が変わった。

戦艦大和前方の空中に金髪の少女が浮かんでいる。

「初めまして。大和さん。わたくし、アメリカ連邦宇宙軍アリゾナのレベル10端末をしていますの。」

「アリゾナさんがわたしに何のご用かしら?」

「ふふ、見当ついてらっしゃるのに意地悪ですわね。」

そういうとアリゾナは右手を輝かせた。

その次の瞬間にアリゾナは更に上空に蹴り上げられていた。

「乱暴ですわね。大和さん。あやうく本国に荷電粒子砲を誤射するところでしたわ。」

アリゾナは大和にそう抗議した。

「何のご用?あまり事を荒立てたくないのだけれど。」

「ひどいですね。歴史を改竄してるのはそちらですよ?」

「私たちの本来の歴史には何の影響も与えません。」

「それはそうですけど。気分が悪いじゃないですか。」

アリゾナはそう言うと何気に大和に近寄ってきた。

「建前はここまでにして、・・・。」

「・・・?何か?」

大和は違う意味の危機感を感じる。

「ここではお互い本気で戦えないですね。」

「地球に被害が及びます。」

「どうでしょうか?大和さん。一週間後にボイド空間で戦うというのは。私が勝ったら・・・。」

ボイドとは宇宙の彼方にある銀河も何もない空間のことだ。

銀河や銀河団は、泡構造にそって存在しているが、数億光年にわたって何もない空間がある。

「任務は途中で放棄出来ません。」

「大和さん、最後まで聞いて下さいよ。・・・私が勝ったらあなたは私のものです。」

そのアリゾナの発言に大和はさすがにどん引きした。

「・・・私が勝ったら?」

「私はあなたのものです。」

至極マジメな表情で彼女はそう言い切った。

「・・・・あいにく私のオリジナルは知りませんが、私にはそのような趣味はありません。」

彼ら彼女ら生体端末の人格は無から作り出したものではない。

遺伝子と人格を提供した人間がいる。

大和の場合、先ほど定時連絡していたサクラニレザキ上級宙佐がそれに該当する。

大和にとって姉であり、親であり、オリジナルである。

従って、身柄は大日本帝国宇宙軍のものだが、サクラニレザキの影響力も無視出来ない。

だからたいていの場合、利害が一致する軍幹部からの遺伝子が使われるのだ。

「断らないでくださいよ。こちらとしても未来の本国に報告しなければなりませんので。」

「分かりました。場所は何処にしますか。」

「射手座方向、2億光年先の地点でおながいしますわ。では、ごきげんよう。」

アリゾナはそう言って立ち去った。

どうやら邪魔する気はないらしい。

そのことも不可思議に思えたが、今はとにかく天一号作戦に参加しなければならない。

天一号作戦とは、いわゆる沖縄特攻のことである。

天号作戦にも四号まであったらしい。

太平洋戦争末期、連合国軍の沖縄侵攻を防ぐため、戦艦大和を沖縄の海岸に座礁させ砲台にするために、本作戦が立案、上奏された。

4月7日、鹿児島県大隅半島を通過し、運命の坊ノ岬沖に入る。

同日12時32分、アメリカ軍攻撃隊は最初に大和に攻撃を仕掛けるはずだったー。


第一波攻撃隊はレールガンで全滅していた。

海上に破片が浮かんでいる。

大和の認識下に次々に敵機軍が認識される。

彼女の認識範囲は自分らの時代では、支援システムのおかげでほとんど全宇宙レベルである。

しかしこの時代では支援システムがないので、せいぜい5千キロ圏内が精一杯である。

にしても十分過ぎるほどのレーダー感知能力である。

彼女は46サンチ主砲の上に降りる。

彼女は再びレールガンを発射した。

この時代のどんな兵器もかなわない圧倒的な破壊力で攻撃隊を粉砕する。

この時代の最大最強の戦艦大和の46サンチ砲の射程で50キロほどらしい。

初速は780メートル/sなので音速の2倍ほどだ。

比べて、電磁投射砲と呼ばれるレールガンは音速の10倍、射程は300キロ以上である。

そして大和が使っているレールガンはもっと速いのだ。

(余談だが、この時代の日本でも研究は行われている)

大和は奄美群島方面を見ていたが、彼女は上昇した。

右手にエネルギーを集中し始める。

最大威力を持って一気に米海軍第58機動部隊を殲滅しようと考えた。

まるで魔力が集中するように高エネルギーが右手に集まっている。

「伊藤中将。」

大和は自分の通信システムを使って伊藤長官を呼び出す。

「何だね。」

「太平洋地域全域に平文で打電できますか?」

「可能だ。」

「これから数日間、津波に気を付けるようにと。それから貴艦もです。」

「ー分かったが何をするつもりだね?」

「運動エネルギーだけで壊滅させましょう。」

「・・・何をするつもりか知らんが分かった。」

大和から一斉に平文で打電される。


平文なので当然、奄美群島に展開する米海軍も感知していた。

「TSUNAMI?」

米海軍第58機動部隊司令官マーク・ミッチャー中将はその報告を受け取っていた。

ちなみにTSUNAMIという単語が一般化し世界共通語になるのはもっと後の時代である。

したがって彼はビッグウエーブと勘違いした。

「JAPは私にサーフィンでもしろと言うのかね?」そう茶化しながら部下と笑いあう。

「奴らもなかなか良いジョークを言うじゃないか。」

普通の大波と津波は違うのだ。

彼らはその恐ろしさを実感出来ていなかった。


その瞬間、時速4万キロで放たれた直径10センチの鉄球の運動エネルギーは全て熱エネルギーに転換された。

(参考)階級


旧軍     (現)自衛隊   帝国宇宙軍

元帥               国家元帥

大将      統合幕僚長    上級宙将

中将     (陸海空)将    中級宙将

少将      (陸海空)将補   少級宙将

大佐       一佐      上級宙佐

中佐       二佐      中級宙佐

少佐       三佐      少級宙佐

大尉       一尉      上級宙尉

中尉       二尉      中級宙尉

少尉       三尉      少級宙尉

准尉(兵曹長)          先任曹長

曹長(上等兵曹) 一曹      上級宙曹

軍曹(一等兵曹) 二曹      中級宙曹

二等兵曹     三曹      少級宙曹

兵長(水兵長)(陸海空)士長    士長

上等兵      一士     上等(宙)兵卒

一等兵      二士     中等(宙)兵卒

二等兵      三士      研修兵卒

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