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彼女は生まれた

人工惑星・神武は大日本帝国の本星である。

太古の天皇の名を付けられた神武はM31銀河、いわゆるアンドロメダ銀河の中心部に作られた。

1000年ほど前、大日本帝国は首都を東京からこの神武へ遷都した。

というのも地球は2万年ほど前から次第に寒冷化しはじめ、本格的に氷河期に突入しはじめたからだ。

従って日本列島は関東辺りまで分厚い氷床が成長している。

かつての首都、東京には現地事務所みたいな都市が残されてはいた。

宇宙へ進出した他の国家群も似たようなもので、地球にはかつて、宇宙開発黎明期に流れに乗り損ねた民族国家が存在しているに過ぎない。

もっとも社会状況は変わらず民族紛争は起こっていたのである。

国際連合の後身である地球連邦は、すでに宇宙に進出した国家群に対し、PKO活動を要請した。

呼応してそれらの国家群は地球上へ地上軍を駐屯させた。

・・・地球上の人々は嫉妬や皮肉を込めてかれらを『天界軍』と揶揄しているのはまた別の話である。


直径三億キロメートルの神武はいわゆるダイソン球と呼ばれる構造体であり、中心核には基本となった恒星が輝いている。

その恒星が出す全てのエネルギーを余すことなく使うことでエネルギー問題は解決していた。

(直径三億キロというと地球の公転している距離)

基本的にそのダイソン球構造は二重構造である。

外側と内側の間に人は都市を築いていた。

政治体制は君主制民主主義なので人々は自由に行き来出来る。

だが機密に指定されている場所もある。

その中の一つが軍関連の施設だ。

そしてさらに機密のレベルが最高レベルの場所で、一人の生体兵器が生まれていた。

彼女は黒髪だ。

そして彼女の首の後ろには菊花紋章がついている。

「具合はどうだね?」

白衣を着た男は言う。

「君の権限レベルは最高レベルだよ。帝国宇宙軍のクラウドサービスも自由に使える。」

クラウドサービスとは戦闘情報共有システムの俗称である。

全ての戦闘データが集約され、後に生かされるシステムだ。

基本的に同じ過ちは繰り返さないという思想に基づく。

「・・・目的の日時は。」

しばらく自分の手足を動かしていた彼女は白衣の男に言った。

「さすが戦うためのバトルシップだねえ。」白衣は肩をすくめた。

「約12万年前の西暦1945年、場所は母星だ。」

この場合の母星とは地球のことである。

彼らは本星を神武、そして母星を地球と区別していた。

「1945年・・・?レベル10の私がなぜそんなところに?」

「上層部の命令は歴史を変えろ・・とだけだ。」

「同盟国には極秘の作戦というわけですね。」

「・・・アメリカ連邦は当時の交戦国であり戦勝国だ。

決して良い顔はすまい。

歴史が変わると言っても時系列が枝分かれするだけだがな。」

「・・・・了承しました。」

彼女は目を閉じて、膨大な情報共有システム(クラウド・サービス)から、1945年の項にアクセスした。

「第二次大戦の趨勢は1942年のミッドウエー海戦の惨敗だと思うのですが、歴史改変ポイントはそこではないのですか?」

「アメリカもさすがにバカではない。そこは想定しているだろうね。1945年も決して安心とは言えないが・・・・。邪魔は少なければ少ないほどいい。」

彼女の裸体がまぶしく輝いて、服が現れた。

位相が違っている別次元にあった服が現れ、見た目には勝手に服が貼り付いていくように見える。

服は当時の女学生が着ていたような服だった。

「すぐに出発だ。『大和』くん。」

「はい。」

大和と呼ばれた少女は時空間転移システムを自分の中で作動させる。

「状況次第では君の判断に委ねる。追加の命令はその都度転送するからね。」

「はい。」

「1945年は、君の古い祖先が撃沈されているが、どうするかは君が決めるといいよ。」

大和は頷いて消えて行った。



彼女の本体についてのデータ(覚え書き)

大日本帝国・外宇宙方面軍第一艦隊旗艦『大和』。

全長550キロ。幅200キロ。

操縦者は生体端末ヒューマノイドインターフェイスレベル9(男性型)。

数億光年彼方の『外宇宙』と呼ばれる宙域を絶賛攻略中である。


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