Chapter15 もう一度、正式に
[ルーアン社・会議室]
会議室の空気は、静かだった。
張りつめているわけでも、重たいわけでもない。
ただ、区切りを迎える前の、深呼吸のような沈黙。
織原梨杏は、席を立った。
「……まず最初に」
ゆっくりと言葉を選びながら、頭を下げる。
「今回の件で、辻井、常見、2名の社員が行った行為について、社長として、深くお詫び申し上げます」
柊、凪、蒼真、環。
4人は何も言わず、ただ織原の言葉を待った。
「私は……守られているつもりでいました。
でもそれは、支配だった」
視線を上げ、まっすぐに4人を見る。
「気づかせてくださって、ありがとうございました。
そして……救ってくださって、本当にありがとうございます」
環は、少しだけ目を伏せ、静かに頷いた。
織原は、背筋を伸ばす。
「改めて、お願いがあります」
一瞬の間。
「ルーアン社のスマートオフィス化を、アークシステムズの皆さんに、正式にお願いしたい」
「今度は、“守られるため”ではなく、一緒に考え、選び、進むために」
柊は、ゆっくりと息を吐き、答えた。
「……お引き受けします」
その声は、静かで、揺れていない。
「ただし、条件があります」
織原は、少し緊張した表情で頷いた。
「人を傷つけないこと。隠さないこと。
わからないことは、わからないと言うこと」
柊は、環の方を一瞬だけ見る。
「それが守られるなら、俺たちは、最後までやります」
織原は、深く頭を下げた。
「……お願いします」
その言葉には、もう怯えも、迷いもなかった。




