↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season14 Le choix《ル・ショワ》 ― 選択 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season14 Le choix《ル・ショワ》 ― 選択 ―
PR
12/17

Chapter11 社長の違和感

アークシステムズは、動いていない。


少なくとも、そう見えるように振る舞っていた。


スマートオフィス化の作業は、予定通り、淡々と進んでいる。


進捗確認。仕様調整。スケジュールのすり合わせ。


その裏で、凪(なぎ)と蒼真(そうま)は、もうひとつのバックドアのログを、静かに見続けていた。


閉じない。触れない。ただ、観察する。


――影が動くのを、待つために。



◇



一方。


織原(おりはら)梨杏(りあん)は、ミーティングを重ねていた。


社長室。会議室。オンライン。


どこに行くにも、必ず隣にいる2人。


推薦してくれた人。支えてくれた人。


この2人がいなければ、私はここに立っていない。


そう思っていた。


だから、今まで気にしたことはなかった。


だが――。


最近、資料を見返す時間が増えた。


過去の財務資料。再建前後の数字。決裁の流れ。


見ても、はっきりとした異常は見つからない。


それでも、違和感だけが残る。


そして、気づいてしまった。


2人が、同時にいなくなる時間があることに。


週に一度。必ず2時間。


決まったように、2人とも外出する。


今までは、偶然だと思っていた。


だが、今は違う。


――この時間、

――何が動いている?


資料を見ても、私にはやわからない。


だが、あの人なら――。


如月(きさらぎ)環(たまき)。


彼女は、私の見えないものを、見ている気がする。


アークシステムズは、何かに気づいている気がする。


だが、違和感だけでは、誰にも相談できない。


決定的な証拠がない。


どうすべきか――。


そう思いながら、ふと、環(たまき)が作った資料を手に取った。


その端に、小さなメモが貼られている。


丁寧な文字。



□□□


 「細かい修正などでも構いません。

 何かお気づきになりましたらご連絡ください。

 よろしくお願いいたします。」


□□□



……ただの一文。


だが、なぜか胸に残った。


――話してみよう。


そう決めた。


あの2人がいない時間。


アークシステムズが社内にいる、その時間に。



◇



仮設で使われている会議室の前に立つ。


ドアをノックする。


少し間があって、ドアが開いた。


立っていたのは、

如月(きさらぎ)環(たまき)だった。


一瞬、迷いがよぎる。


だが、「聞いてほしいことがあるんです」と告げると、環(たまき)はにっこりと微笑んだ。


「どうぞ」


会議室の中には、如月(きさらぎ)柊(しゅう)、凪(なぎ)陽翔(はると)、桐生(きりゅう)蒼真(そうま)。


4人が揃っていた。


穏やかな空気。


ここは、自分の会社のはずなのに、まるで別の場所に来たような感覚になる。


「織原(おりはら)さん、どうされましたか?」


柊(しゅう)が、静かで優しい声で尋ねる。


「ええ……少し、気になることがありまして」


そう言って、環(たまき)の資料に貼られたメモを見せた。


「ごめんなさい。

 気になることと言っても、証拠も、資料もないんです」


少し、言葉を探しながら、話し始める。


支配する2人のこと。

決められたレールの上を歩いているような感覚。


自分の知らない何かが、動いている気がすること。


そして、週に一度、2人が同時に外出する、あの2時間。


「……私の考えすぎかもしれません」


そう言ったとき、柊(しゅう)が静かに問いかけた。


「その違和感は、いつ頃から感じていますか?」


その問いに、織原(おりはら)梨杏(りあん)は、初めて気づいた。


――私は、

――もう“守られているだけ”ではいられない。


4人は、何も言わず、ただ、話を聞いていた。


それだけで、少し、息がしやすくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。