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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season14 Le choix《ル・ショワ》 ― 選択 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season14 Le choix《ル・ショワ》 ― 選択 ―
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Chapter9 影が声を上げる

[アークシステムズ・オフィス/夜]



照明を落とした室内で、モニターの光だけが静かに瞬いていた。


「……動いてます」


凪(なぎ)が、低い声で言う。


蒼真(そうま)は、その言葉だけで画面に目を向けた。


「定期ログだな」


「はい。侵入じゃないです」


凪(なぎ)は、キーボードを叩きながら続ける。


「裏口を“使ってる”。しかも……」


画面には、一定間隔で並ぶ通信ログ。


量は多くない。

だが、無駄がない。


「……排出してますね」


蒼真(そうま)が言う。


「情報を抜くっていうより、“渡してる”感じだ」


「どこへ?」


凪(なぎ)が問いかける。


蒼真(そうま)は、一瞬だけ間を置いて答えた。


「……外」


「外?」


「社外ネットワーク。しかも……」


蒼真(そうま)は、別のウィンドウを開いた。


「経路が、古い」


凪(なぎ)の指が止まる。


「……クロノス」


蒼真(そうま)は、静かに頷いた。


「高瀬(たかせ)玲子(れいこ)は、もう表の担当じゃない」


「でも……」


凪(なぎ)が、ログを拡大する。


「切れてませんね」


柊(しゅう)は、2人の後ろで腕を組んだまま、画面を見つめていた。


「……“会社”じゃないな」


その言葉に、蒼真(そうま)が反応する。


「はい。これは部署でもプロジェクトでもない」


「“個人”だ」


柊(しゅう)が、低く言った。


凪(なぎ)が、小さく息を吸う。


「……つまり……

 社長を“支えている側”の、どちらか……」


「その通りだ」


蒼真(そうま)は、淡々と続ける。


「定期的な交信。定期的な支援。その見返りが……」


画面に、別のログが重なる。


「……経営権」


凪(なぎ)が、呟(つぶや)いた。


「表向きは社長。でも……」


蒼真(そうま)は、言葉を選ばず言った。


「実態は、“預けている”」


その瞬間、空気が変わった。


それは、怒りではない。


理解したときに訪れる、静かな重さ。


柊(しゅう)は、ゆっくりと口を開いた。


「……つまり、この会社は……」


「まだ、“返せる段階”です」


蒼真(そうま)が言う。


「完全に奪われてはいない」


凪(なぎ)が、画面を見つめながら言った。


「でも……守ってるつもりの影は……」


「声を上げ始めている」


柊(しゅう)が、静かに締めくくった。


そのとき。


環(たまき)が、少し離れた場所から、そっと言った。


「……このログ……音みたいです」


3人が、環(たまき)を見る。


「同じ時間、同じ間隔……繰り返し……」


環(たまき)は、胸の前で手を握る。


「……“助けて”じゃない……

 “続ける”って言ってる……」


蒼真(そうま)は、小さく笑った。


「……いい感覚だ」


凪(なぎ)も、頷く。


「これは、警告じゃない」


柊(しゅう)は、静かに立ち上がった。


「……宣言だ」


影(たまき)は、もう隠れていない。


声を上げ、構造を守ろうとしている。


そしてそれは――


必ず、誰かの“意志”に辿り着く。

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