第九話 職業選択
私は城塞都市ヨルムンガルドの冒険者ギルド支部長のアンドレに連れられ応接室に来た。
「ゴメンな、嬢ちゃん。いやアイン。初っ端からこんなハメになるだなんてな、支部長として謝罪する。」
「いえいえ、私もあの挑発に乗ってしまいましたし、お互い様ですよ。アンドレさんがお気に召さないでください。」
「と言ってもよう、流石にこのままってワケには行かないからな。よし、特別に俺がお前の職業を見繕ってやる。それでいいか?」
「ありがたいんですけど、その「職業」って一体どういうものなんですか?」
「職業っていうのはギルドに加入している人材に与えられるもので、経験を積むことでジョブスキルっていうのを得ることができるものだ。職業は各ギルドごとに傾向っていうのはあるんだが、基本的にどのギルドでも同じ職業に就くことができる。」
「じゃあ、ギルドの違いって一体何なんですか?」
「一言で言ってしまえば、体制だな。例えば騎士ギルドは国に仕えていて王族や貴族の護衛に回ることが多い。傭兵ギルドは金さえ払えば何でもやる、たとえ悪事でもな。そして我らが冒険者ギルドは庶民の依頼から国の依頼まで何でも引き受ける。悪く言えば雑用だが、良く言えば手広くやってるってことだな。それに加えてギルドごとに割り振られた特殊職業も存在する。」
「じゃあ、職業を与えるってどういうことですか?」
「これは一般人に教えることじゃないんだが……嬢ちゃんには借りもあるしいいか。俺達ギルドの支部長には測定機っていうものが与えられ、そこに測定を受ける人がやってきた経験などを読み取らせることで職業を決定することができる。まぁ、俺達がやることはあくまで職業の決定だけってことだ。」
ふむふむ、つまりアンドレが言うには職業とは私の経験から決定されるってことで良さそうだな。ユニークジョブとか欲しいんだけどな……よし、聞いてみるか。
「もし仮に私がここで職業をもらったとして、もう一度検査することで新たな職業を得ることはできる?」
「そりゃもちろんだが…実は初回以降の職業検査にはどのギルドにも条件があるんだ。特にここ冒険者ギルドではAランク冒険者にならなければいけないっていう条件がな。おそらくどのギルドもそのギルドの中での地位が上がらないと再検査はできなかったはずだ。」
「色々詳しく教えてくれてありがとう。考えたけど、私には冒険者ギルドが合ってるみたい。今から検査することはできる?」
「あぁ、もちろん。うちには測定機が10個しかないがお前さんを優先してやるよ。気にするな、これも詫びなんだからな。」
「ありがとう、アンドレさん。」
「ちょっと待っとけよ、すぐに戻って来るから。」
そう言うとアンドレは扉を閉め、足早に去っていった。私は応接室の椅子に深く腰を掛ける。
ふぅー、意外と早く職業を得られそうだな…というか、ユニークジョブ?ジョブスキル?知らないことだらけなんだけど、あのチュートリアル不親切すぎだろ。もっと詳しく教えろよ、アンドレを見習え。
「ちょっと待たせちまったな、これが測定機だ。」
眼の前にガラスでできた青い丸い球体がポンと置かれた。
「これはどうやって使ったらいいの?」
「この水晶にお嬢ちゃんの手を乗っけてみてくれ。光るから気を付けてな。」
私はアンドレの言葉に従って測定機に手を乗っけてみた。
『………ガ、ガガガ―――
行動ログを参照――成功
ステータスを参照――成功
種族を参照―――エラー、現存しない種族を確認。問い合わせ中……
完了、探索者と確認。
行動ログの確認により称号の参照を決定。
称号を参照―――特殊な称号の多数保有を確認。
以上より測定を完了。
個体名「アイン」に与える職業を解析中……完了。
以下が「アイン」与えることが可能な職業一覧です。
・職業:短刀使い
・職業:忍者
・職業:暗殺者
・職業:双剣使い
・特殊職業:聖職者
・唯一職業:神の使徒
・特殊職業:二つ名食い
・唯一職業:執行人』
ちょ、ちょっと待てよ。アンドレから聞かされていない内容が書かれているんだけど??え?唯一職業って何?急に新設定ぶっこんでこないで?
「―――っ!!」
「あ、アンドレさん?一体どうしたんですか?この唯一職業って……」
「わ、わからない…でも、これは確かに言える。この件は私ではない、ギルドマスター案件だということが。君は…君は何をやってきたんだ?」
「というと?」
「私は20年間ここの支部長をしてきたが唯一職業なんて見たことも聞いたこともない。それにいつもよりも長い測定機のロード…
考えても仕方がないな。とりあえず冒険者ギルドに加入することとなったのだから職業を決めよう。」
私から見たアンドレさんは少々焦っていたように見えた。そりゃそうだ、初めて見る職業なのだから。そう、何も間違っていないはずだ。
「さぁ、君は一体どんな職業を得るんだ?」
こう言われると悩ましくなる。せっかくなのだから特殊職業か唯一職業の中から選びたい。だけど唯一職業が2つも存在するとは。測定機が途中で言っていた「称号を確認」という言葉…もしかしたら特殊職業と唯一職業は「称号」に関係しているのかもしれない。だとすれば「初めて」という言葉がついていた「神託を受けしもの」と「ネームドハンター」が唯一職業になった?つまり、神の使徒は名前の通り神に関係して、執行人は二つ名持ちモンスターに関わるものということ。神という存在と戦えるかわからないが、どちらがより攻撃的かで考えたら執行人の方だろう。私はバリバリ戦闘をしていきたいのだから選ぶのは一択!
「執行人でお願いします。」
「了解した。お嬢ちゃんのこれからの冒険が良いものとなることを祈っているよ。」
私の体が突如として黄金に輝き出した。まるで体が作り変えられているかのような感覚、心地よい気持ち。全身を駆け巡る全能感……これが職業を得るという感覚か。
「これでお嬢ちゃんは無事冒険者ギルドとなったんだが、今日はもう遅い。宿屋にでも泊まりなさい。」
ふと、外を眺めるともう黄昏時となっていた。確かにもう夜遅いな…私このゲームで一ヶ月いろって言われたんだけどできるかな?とりあえず宿屋でも探すか。
「アンドレさん、この近くに宿屋ってありますか?」
「うーん、この近くとなると安い「銀の水瓶亭」か高めの「黄金の三日月」ぐらいしかないぞ。お嬢ちゃんは女の子なんだから黄金の三日月に行ったほうがいいんだが……金はあるか?」
「……、お金はない。」
「そりゃそうか、この街に始めてきたもんな。よし、ここはお兄さんが金を貸してやるからいつか返しに来いよ。」
「うん、わかった。」
「忘れんなよ!」
アンドレにお金を借りて別れたあと、私は黄金の三日月へと足を運んだ。周りに人が多い。どうやら今日始めたプレイヤーたちが続々とこの街に到着してきたらしい。急がないと部屋が危ない。危機感からか足が早くなる。前にいる人々の間をくぐり抜け、宿屋の受付に走り込む。
「女将さん!部屋まだ空いてる?」
「ちょうどあなたで満席わよー。運がいいのねお嬢ちゃん。」
周りにいたプレイヤーたちがガクッと崩れ落ちる。寝る場所がないと死んだときにあの森から再スタートとなり、また1から始めないといけないからな。てか、あそこで走ってて良かったー。ここに来て部屋埋まってますとなったら泣いちゃうかもしれない。
「はい、これが鍵よ。この鍵に書いてある部屋に入ってね。」
女将さんから鍵を受け取る。ここの鍵は部屋番号が掘られた木の持ち手と鉄製の鍵がくっついているらしい。意外と古くない?
「404、404はどこだ?」
女将さんからもらった鍵を見ながら私は部屋を探す。ちなみにこの宿屋は1泊10万サリー。まだここ以外でお金を使ったことがないからわからないがおそらく高いほうだと思う。ようやく見つかった部屋の鍵を開けてベッドに倒れ込む。一日の疲れがちょっと溜まっていたみたい。こんなに疲れるのっていつぶり?
『黄金の三日月 404号室をセーブポイントとしますか? YES・NO』
「い、イエス……」
ゲームを始めて約6時間。私はセーブポイントを見つけ、眠った。
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