第七話 今どきナンパ男とかいるのか!?
このゲームをプレイし始めてから早3時間、私は初めての街、城塞都市ヨルムンガンドに到着することができた。
「うわぁ、広すぎだろこの街。普通に東京ドーム20個分ぐらいはあるんじゃない?」
『そりゃもちろん、この街は探索者たちが初めて寄る街。そして冒険が始まる街でもあるんだから。それなりの設備は充実してるに決まってるじゃない?』
「だとしても広すぎじゃない?あっちに見えるのはでっかい神様の像で、奥に見えるのは多分城でしょ?左に見える剣と盾のマークの建物に、右に見える馬がシンボルの建物とか……色々と充実しすぎでしょ!」
『こんな都市でびっくりしているようじゃ王都についたら腰抜かして鼻水垂れまくりじゃない?』
まーた、減らず口を叩きおって。炙るぞ、火で。ここには魔法っていう便利なものがあるんだから高火力でミリィちゃんを炙ることも可能でしょ。でもこのまま行けば私は剣で戦う近接系になりそうだな。どこかしらで魔法使ってみたいのに……といってもこの街は少々広すぎる。だって、私だったら1分で迷子に自信があるね。いや、確信だね。ゲーム的に言ったら初心者が安全に育てる場を与えるために機能が充実した街を始めにおいてるって考えれるけど、世界観的に考えてここまで大きい街を王都以外に作るか?普通すごい技術を持っている職人は王都に行きそうな気もするけどなぁ。
「ちょっとそこのお姉さん?ボクらと一緒に冒険しない?この街に来た人たちと一緒に森でモンスターを狩りたいんだけど……どう?」
THE・ナンパみたいな軽薄そうでチャラい男の人が私に声をかけてきた。このゲームは多少顔をいじれるけれどそれは肌の色を変えるぐらいで顔の印象自体は変えられない。性別なんてもってのほか。近年稀に見る性的マイノリティに真っ向から反抗する形のゲームだ。私はネカマとかはちょっと…って考えるタイプだから嬉しいんだけど、一部の人は嫌うタイプらしい。
話は脱線したが、つまるところこのゲームで可愛いと思われる人はだいたいリアルもかわいい人が多いってこと。嬉しくも私はその「かわいい」と思われる人に含まれるらしい。やったね!面倒だけど。ちなみに私は髪の毛を背中の半ばぐらいまで伸ばして金髪にしてみた。せっかくゲームなんだから髪の色ぐらい変えてみたいよね。
「俺らってさ、この街に来るまでにゴブリンとかを倒しててレベルなんてもう4だよ。すごいっしょ。俺らと一緒に来たら安全にレベリングできるけど、どうかな?」
レベル4でイキってるのか。私もステータスを上げて「すげー、私強すぎだろ。これならモンスターとか倒しまくれるんじゃない?」とか考えてた矢先にズタボロにやられたから言いにくいんだけど、雑魚すぎるわ。レベル4?ゴブリンスカウトにあっただけで即死だろ。レベル10のステータスでやっと見切れるようになったのに。笑わせないでほしい。ここは、きちんと断っておくべきか。
「すいません、私レベルがあなた達より高いみたいなので結構です。あともう少し森の中で気をつけたほうが良いですよ?レベル4なんて一瞬で倒せるモンスターがいるんで、それじゃ。」
「はぁ?ちょっと待てよ。俺たち結構真面目にモンスター倒してきてレベル4なんだけど。何?俺達よりもすごい戦いをやってきたってことなの?あんまり舐めないほうがいいよ。」
「はい、って言ったらどうします?」
「は?何にだよ?」
「あなた達よりよっぽどすごい敵を倒してきたって言ったら、どうしますか?」
「そんなの嘘に決まってるだろ、何よりそんな細い腕じゃモンスターなんか倒せなそうだし、どうせ逃げてこの街まで来たんだろ。」
ここで回りにいた男たちが笑い出す。「やめろってー、あの子泣いちゃうよ?」とか「大人気なさすぎだろww、いや男気なさすぎの間違いかww」など。くっそー、舐めやがって。これだけは言い切れるね。お前らなんかよりよっぽどすごい敵を倒してきたってね。こっちが可愛い女の子だからって下に見すぎだろ。頭にきたわ、ぶちのめそうか?
「それなら!こういうのはどうですか?私とあなたが戦うってのは?これなら文句もないでしょう?」
「おいおい、認めたくないからってそんなことまで言うのか?大丈夫?まだ初めてちょっとでしょ?」
おめーも初めてだろ!っていう言葉を喉まで言いかけて押し込んだ。ふー、落ち着けー。コイツらをぶっ倒せば気も晴れるだろうし……必死に落ち着けようとしても勝手に手が剣を握る。やばい、結構苛立ってるな。
「そんな御託はどうでもいいので勝負しましょう。あなたと戦いましょうか?それとも…全員でかかってきますか?全員弱そうなんで。」
「舐めやがって……よし、やるか。〈宣誓〉!!」
????〈宣誓〉って?なんか私が知らない新システムが出てきたんだけど……くそ、悔しいけど聞かないとな。
「っ――、〈宣誓〉ってなんですか?」
「おいおいおいおい、そんなんも知らないの?まぁ知らなくて当然か。なんせ殆どのシステムはこの街の中に入って初めて知らされるからなぁ。教えてあげるよ、お嬢さん。〈宣誓〉ってのはシステムから認められた戦闘、つまりPVPをやるために必要なんだよね。これを行ったときは相手を殺してもPK判定にならないし、戦闘終了後倒された相手も復活できる。何より――ま、それはいっか。これでいいかい?」
おい、なんか一番大切そうなところを隠しやがって。まぁそんな事はいい、いざやるか。早く馬鹿にしてきたやつを切り刻みたくてウズウズしてたんだよね……ってこれ、ただのシリアルキラーの思考じゃない?
「うん、説明ありがとう。じゃあこの勝負に私が勝ったらもう私にちょっかいを掛けない。もし私が負けたらあなた達に同行する。それでいい?」
「まぁ、いいよ。それで対戦形式は?勝ち抜きか?」
「うーん、そうだなぁ。面倒だからみんな一斉にかかってきていいよ。そこまで強くなさそうだし。」
「おいおい、そんなに無様な負け姿を晒したいのか?ここまでコケにされたら俺等も強さを見せつけないとな。お前らもそれでいいか?一瞬で終わらせるぞ!!」
「「「おう!」」」
リーダーらしい男の声に周りの3人が答える。たったの3人か、弱そうだな。
「もう初めていい?あんまり時間取られたくないんだけど……」
「そうだなぁ、俺が3つ数えたらはじめにしよう。それでいいかい?」
「了解。」
私は破邪の仮面をかぶる。
「1つ…2つ…3つッ!一斉に回り込んで包囲しろ!相手は一人だから死角ができるはず――ってあれ?」
相手が3つといった瞬間私は天翔龍を発動した。どうせ相手は、「一人何だから回り込めば勝てるっしょww」みたいな感じで回り込むだろうからその予想を超えることにした。一瞬で天高くに跳躍し相手の動向を探る。予想通り、私のことを包囲する予定だったらしい。このままリーダーを倒してもいいけれどせっかく馬鹿にしてきたんだから特等席で私の戦いを見せてあげよう。とりあえず取り巻きの一人を狙いながら空を踏みしめる。
「なっ、相手はどこだ!?」
「うっ、上にいる!!合図とともに上まで飛んだんだ!!」
今更気づいてももう遅い。なぜなら私はもう獲物を見つけてるのだから。
「ウワァァッッッ!!」
空中で相手の首の近くを通るとともに剣で切る。咄嗟に防御しようとした相手の短剣にあと一歩のところで抑えられる。着地した足を軸に体勢を変え、 思い切り相手の胴体を横に切る。
「な、何だ?あの力は!本当に初心者か?」
「鎧の上から切りやがった!なんて馬鹿力だ!」
「それに加えてあの素早さ……確実に俺達よりレベルが高い!警戒を強めろ!」
私が一人屠っている間に彼らは私の対策を講じたようだ。それは集団で集まり各自が私の動きを見ることで死角をなくそうと言う策。確かに良い策だがここは少々相手が悪かったとしか言いようがない。
「き、消えた?」
破邪の仮面に加えて天翔龍、動体視力がAGIに関係されるなら、まだレベル4の彼らが私の本気の加速を見極められるわけがないっ!私から一番近い取り巻きが背中を見せた瞬間後ろから一突き、おそらく心臓の位置を正確に刺した。
「ぐ、グフッ!う、後ろから…いつの間に。」
「お、お、おい!どうするんだ?あっという間に2人もやられたぞ。」
「お前が魔法を当てて撹乱している間に俺が奇襲を仕掛ける、頼んだ。」
「でも、俺の魔法はそこまで強くないぞ!」
「そこは任せた。」
最初は4人もいた彼らも今じゃ2人。今更一発逆転を狙ったところで難しいだろう。次はあの杖を持ったやつを狙うか……ん?杖、もしかして―――
「輪廻を捻じ曲げ我の望む火を眼前に与えよ、ファイアーボール!!」
刹那――眼の前が真っ赤に染まり、熱を感じた。熱いっ、思わず目を閉じてしまった。正確に目を狙うだなんて陰湿、だけど最適。果たしてここから何をしてくるんだ?
「いけぇぇぇ!!」
横からリーダー格の男が剣を突き立ててきた。魔法使いの男とよく取れた連携、だけど通用しない。男が突き立てた剣を避けつつ咄嗟に私の鉄剣を当てる。避けるために体勢が不安定だったが必死に上げたSTRのお陰で剣を押し返すことに成功した。相手の剣を振り切った後の隙を狙って肩を的確に一閃。右腕を切り落とすことに成功した。
「ッッ、今だ!もう一回目を狙え!」
「そんなことさせると思う?」
もう一度魔法を放とうとする男のそばまで一気に跳躍し足を切断。足に力が入らなくなって地面に倒れた男の首を切り落とす。
「くっそぉぉぉ!!」
リーダーだった男が私に剣を投げてきた。もうヤケになって投げてきたのだろうが剣で叩き落とす。眼の前で悔しそうに顔を歪ませる男を見ながら、
「舐めんな、バーカ!」
首に向かって剣を振り下ろし、倒した。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!
あたり一面で拍手が鳴り響く。思っていたよりも観客が集まっていたみたいだ。
「すごいなー、お嬢ちゃん!!」
「スカッとしたー!!」
「どうやったらそんな動きできるの??」
「今のでファンになりましたー!!」
私がナンパ男を一蹴し、あまつさえ4対1という不利な局面だったのにかかわらず勝ったのがすごかったんだろう。周りの人たちも驚いている。私は右腕を掲げて、
「勝ったどーーー!!!」
祝、ナンパ男打倒ということで声を上げた。
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また、明日からの更新は8時30となります。




