第六話 初心な雰囲気っていいよね
道すがらに現れるゴブリンを切りつけ、蹴飛ばしていくうちに重要なことを思い出した。それはもうすっごく大事なことを。
「ステータスの割り振りやってないじゃん!!」
そう、せっかくBPを70も得たのにステータスに一ミリも振っていなかったっていうことを。いやー、なんでそんな大事なことを忘れていたんだ?ついさっきの戦闘でSTR不足のせいで苦闘を強いられたのに。それならSTRに全振りする?それもちょっとな。AGIは破邪の仮面のおかげで当分は大丈夫そうだし、VITはそこまで重要そうじゃないな。それなら継戦能力を高めるためのHPと、せっかくゲームなんだから魔法とかもやりたいしMPにも少し振ろうかな?MPとSTRの兼ね合いも考えて……よし、これで行こう!
《アイン:人族》
レベル:10
保有SP:25
保有BP:0
HP:30
MP:17
STR:51
AGI:11(51)
VIT:1
装備品
・破邪の仮面
【称号】
「謁見者」「神託を受けしもの」「名札刈り」「ネームドハンター」
なんかSTR教に入信したみたいな感じになっちゃった。他のMPとかAGIとかが10代で、何ならVITに関しては1なのにSTRが51だなんて……まぁ力はすべてだしね。どんなモンスターも一撃で倒せばなんの問題もない。AGIに関しては破邪の仮面と天翔龍のお陰で実際のステータスよりもすごいことになってるし大丈夫でしょ。てか、破邪の仮面やべー。レベルアップ4つ分のAGI加算とかやってらんないね。もしかしたらこのゲームはステータスの割振りよりも装備による補正のほうが強いのかも?
『あんた……ちょっと筋力をつよくしすぎなんじゃない?そのうち知能も下がってゴリラになりそうね。』
ムカつくなぁ。後で木にでもくくりつけてモンスターに食べられるのを眺めていようかな。ミリィちゃんもモンスターの糧となるのは本望でしょ、南無三。
『私は肉体を持たないからやられないんですぅぅ。行動範囲は狭いけどね!』
「それって私のストーカーってこと?今のご時世いつ殺されても文句言えないよ?その行動。」
『ムッキィィィーー!!!!』
なんか可愛いかも、年下をいじめるのってもしかして楽しい?この快感ッ、嗜虐趣味に目覚めそうだわ。
「殺されるぅー、誰か助けてー!!」
フッ、ミリィちゃんが私からあふれる幼女への嗜虐趣味のオーラを感じ取って恐れをなして遠くから叫んでいる。馬鹿だなー、もう遅いけどね。ミリィちゃんは私のそばを離れられないし逃げることすら叶わない―――ん?遠くから叫んでる?でもミリィちゃんは私のそばに……もしかして。
「誰かが襲われている?」
『ご明察ね、というかこのハイパープリティーな私があなたごときにおそれをなすわけないじゃない!』
声の方向からして私達の進行方向の先なはず。今からでも十分助かる見込みはあるはず。破邪の仮面で上がった俊敏性をここで体感しようかな?クラウチングスタートの構えを取って――いざ出発!
ゴオォォォ!
え、やばいやばい!ちょっと速すぎて足が止まらないんだけど??周りの木々が一瞬で過ぎ去っていく。このままだと私の眼の前にある大木と正面衝突しちゃう。方向を変える?無理に決まってるでしょ?今まで自動車しか乗ったことない一般ピーポーがF1カーをいきなり制御できるわけがない。急停止?ムリムリ、なんでこの世界から自動車事故が無くならないか知らないの?車は急に止まれないからだよ。やばいなぁ、眼の前にいろいろな映像が流れていく。昔のお母さんとの会話やたわいない同級生との喋って帰った帰り道。あれ?川の向こうに一昨年亡くなったおじいちゃんがいる?おーい、おじーいちゃん!!
って、私は何やってんだ?走馬灯の次は三途の川をわたりかけてなかったっけ?そんなことはどうでもよく、いや人の脳をここまで騙せるこの技術力はすごいんだけど、今は迫りくる大木から逃げる方法を模索しないと。というか、もう目の前に――
「あ、あ、天翔龍!!」
間一髪私は大地と空中の二段階ジャンプをした。グングンと離れていく地面。もしかしてジャンプも移動に含まれるからAGIの恩恵を受けることができるのかも?あっちに見えるのは城塞都市ヨルムンガルドかなぁ?周りが城壁に囲まれていてすっごくかっこいいな。ひとまずそんなことは置いといて、先程のSOSの主を探す。お、あれだな?よーく目を凝らしてみると3体のゴブリンスカウトに囲まれている集団がいた。確かに始めたての人からしたらゴブリンスカウトとか無理だよな。私も初心者だけど。とりあえずゴブリンスカウトめがけて跳躍し、空中で無名の鉄剣を握る。ゴブリンスカウトたちは眼の前の獲物に夢中で上には注意が向いていない。的確にゴブリンスカウトの首筋に剣を当てて、着地しながら振り抜く!!
「「グルゥゥァァァ!!!」」
え?もしかして2体同時に切っちゃった?すごすぎんか、STR?ステータス割り振っといてよかったー。
「キシャァァァ!」
そう安堵したのもつかの間、残ったゴブリンスカウトが私めがけて矢を撃ってくる。右、左、頭、と矢継ぎ早に飛んでくるゴブリンスカウトの矢を私は身をひねるだけで避けていく。仮面によって強化されたAGIによるものだろうか?先程までは目で捉えることもできなかった矢がきちんと避けることができるようになった。もう終わりにしてあげよう、仲間たちと一緒のところに行きたいだろう。
「お友達のところまで送ってあげる!」
ザシュッ!
ゴブリンスカウトが着ていた鎧の上から縦に一刀両断された。
「グ、グルゥァァァ……」
ふっ、また無駄なものを切ってしまった……
「す……すごすぎます!!なんでそんなふうに一刀両断できるんですか?私の剣じゃ肌に刺さりもしなかったのに?」
「すごすぎるっす。こう、上からびゅーんって来て、しゅってして、瞬く間に2体倒しちゃって…尊敬します!!」
「まだ私達と同じこの森にいるってことはまだ初心者?なら、どうしてここまで差が出るのかしら…」
この子達元気だなー、そう思いながら私は剣をインベントリにしまう。語彙力が著しく落ちてる残念な子もいるけど、そこはご愛嬌だろう。
「それで、君たちはどうしてここにいるの?」
「えーっと僕達は中学校の友達で集まってて…あ、僕はタクヤって言います。ついさっき始めたばかりで街への行き方をナビで見ながら向かってる途中で、急にあの超早いゴブリンたちに襲われて倒されそうだったんっす。お姉さんこそ、どうやってそこまで強くなれたんですか?」
「私もついさっき始めた初心者だよ。名前はアインでやってるよ。あの俊足ゴブリンたちはゴブリンスカウトって言って、ゴブリンの上位個体かな?どうやって強くなれたかなんだけど、超強いモンスターと戦ってレベルアップしてステータスを強化したからかな?」
「ちょうつよいモンスター……お姉さんが言うぐらいなんだから僕達じゃ瞬殺っすね。よし、もうちょっとこの森でレベル上げをしてから街に向かってみます。お姉さんぐらい強くなったらまた会います。みんなもそれでいい?」
「さんせー!」
「異議ナーシ!」
「頑張ってねー。ゴブリンスカウトに見つかったらすぐ穴蔵とかに隠れるといいよー。」
「アドバイスありがとうございます!頑張ってレベル上げます!」
彼らはいそいそとどうやってレベルを上げるかの作戦を練りながら走っていった。うーん、初心で可愛かったなぁ。絶対あの二人の女の子たちタクヤってこの事好きだよねー。なんかこう、オーラが違ったよね。まぁ人助けできたしいっか。
「じゃあ、ミリィちゃん。ここからヨルムンガルドまでどれぐらいあるの?」
『ヨルムンガルドまではあとちょっとだよー。というかあんなに慕われてー、嬉しかったんじゃない?』
「うるさいなぁー、ほっといてよ!」
天翔龍を発動してヨルムンガルドまで走っていく。さっき上に行ったときに見えた感じからしてあと1、2分で着きそうだった。期待に胸を膨らませながら森の中を駆けていき、木々の間を飛んだりしていくと急に森が開け、立派な城壁があった。
「ヨルムンガルドとうちゃーく!!」
『イエーィ!!』
私は心の何処かでこの小うるさいミリィちゃんに愛着が湧いていたのかもしれない。
やはり明日から午後8時30分に2話投稿で以降と思います。何度も変更してしまい申し訳ありません。
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