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Eclipse Horizon ―電脳世界で女子高生が「死の戦乙女」と呼ばれるに至るまで―  作者: 野兎
第一章 青天の霹靂

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第五十三話 挑むものと挑まれるもの

 次の日ドワルニアの王城、ニョントス城へと向かった。謁見の間に行くと見慣れた顔がある。天才鍛冶師であり始まりの街ヨルムンガルドから連れ添ってくれた王弟でもあるドルヴェラク。白い髪を持ち可憐な、それでいて愛用のラグナロクを作る腕を持った王様の娘のフレイヤ。そしてアーク王国の一部、ドワーフの自治区であるドワルニアの王様であるシディル。


 全員が王族であり、それでいて今回の「北風」討伐に欠かせない人物だ。


 「これより対『北風』の会議を行う。初めにアインから話を聞いてもよいか?」


 「はい。私が以前討伐したことがあるのは南風のノトスです」


 「おい、その『北風』とか『南風」っていうのは何なんだ?」


 ドルヴェラクから質問が飛ぶ。


 「多分ジグルドの配下の中でも有力なモンスターに与えられる名前だと思う。四天王っていうのがあるらしくて東西南北が対応しているらしいよ」


 ドロップアイテムの説明に描かれている物語から推測をする。南風の大剣、四風の守護、天空の破片の説明で描かれているのは「天帝」ジグルドと「南風」のノトスの物語。一匹の子獅子が天帝に拾われ、一匹の強力なモンスターに成長していく物語であった。


 「ジグルド?それが天帝の名前なのか?」


 不思議がったシディルが聞いてくる。


 「あれ、言っていなかったけ?私は以前、天帝ジグルドと会ったことがあるよ?」


 「何だと!?そうやすやすと会えるものなのか?」


 「二つ名持ちって呼ばれるモンスターが居ることは知っていると思うんだけど、私が初めてそいつらと出会ったときにジグルドが来たんだ。」


 「そりゃ聞いたことはあるが⋯そもそも二つ名持ちだって簡単に倒すことすらできやしねぇぞ?」


 「あぁ、我も国庫に収められた書物で見たことがあるのだが⋯その、二つ名持ちというのは世界に認められた存在なのだろう?」


 また二つ名持ちに関することだ。どうやらこの世界での二つ名持ちへの解釈は「世界に認められる」ということらしい。私は単なる強いモンスターだと思っていたのだがそれは違うのか?そういえばノトスも特異二つ名持ち(オリジンネームド)っていう名前だった気がする。


 「まぁ私の場合職業が特殊だしね。なんて言ったて私の職業は⋯⋯」


 そこまで言おうとして唐突に扉が開かれる。


 「緊急!北風と思わしきモンスターの王都への接近を確認、至急対策を!」


 衛兵と思わしきドワーフの兵が情報を伝えてくる。その顔には冷や汗がかいていて事態の深刻さを物語っていた。


 「もうそこまで来ているのか!昨日は最北端の街だったはずだぞ!」


 ダンッとシディルが拳を机に叩きつける。


 「それが、道中の街を無視してこの王都めがけて来たようです!」


 シディルが黙り込む。


 私たちの想定を超える速度の侵攻、これが他の地域もそうなのか確かめるためにケインとクロウに連絡をする。そして画面の右端にある検索ボタンを選びスレッドを開く。今どきのほぼすべてのフルダイブゲームはプレイ中であってもインターネットが使えるようになっている(らしい)。こんな非常事態にすぐ情報を拡散するためにはインターネットが最適だ。


 



 Eclipse Horizon まとめスレ7


134:アシュリー

 つい昨日武闘大会が終わったけどすごかったよな。トッププレイヤーのヤバさが浮き彫りになったと言うか


135:クレイモア

 それな、到底再現できないような高度な戦いだったぜ


136:フランチ

 チートの類はこのゲームできないから純粋な努力なんだろうけどにしても異常だよね


137:ジャック

 やっぱユニーク種族なんじゃないか?現状他に一般プレイヤーとの差がつくところが思いつかないんだが


138:アイン

 この情報を拡散してほしいだけど良いかな?今からとてつもなく強いモンスターがドワーフ、龍人、鬼人の自治区にやってくるんだけどプレイヤー側でこれを食い止めたい。

 だから腕に自身がある人は是非この3つの地域に行ってほしい。特にドワーフの方にはもうそこまで接近しているらしくて切羽詰まってる


139:フェイン

 >>138

 これ本物?もしアインちゃんを騙っているんだったらファンクラブの奴らが報復しそうだけど


140:ホルン

 その線は薄そうだね。情報が正確だし、何より名前を偽る必要がない


141:アイン

 あと龍人の方のまとめ役にはケイン、鬼人の方のまとめ役にはクロウがいるからそっちを頼ってほしい。流石に彼らもこうして人を集めているだろうし。今回の相手は以前私が倒したことがある「南風」のノトスと同列かそれ以上だから気を引き締めてほしい。


142:セルロス

 南風のノトス並???それは向かわないとまた街が消えるんじゃないか?


143:クレイモア

 このスレだけで残していい情報じゃないな。考察スレ、職業別スレにも投下するしか無い


144:ホルン

 それより自治区って何のことだと思う?


145:ジャック

 それならわかるぜ。なんせ俺が今いるのはドワーフの自治区ドワルニアだからな。ドワーフ以外の行き方はわからねぇが俺の場合交易都市ジョーヌっていうヨルムンガルドの隣の町から飛行船に乗ってきたぜ


146:アシュリー

 >>145

 有用www

 ってことは俺らも向かわないとな


147:バルンアバル

 てか本当に138と141はアイン本人なのか?本当の情報かも疑わしいしトッププレイヤーの戯れじゃね?


148:クロス

 俺達のアイン様になんてことを言うんだ!取り消せや


149:クレイモア

 げっアインのファンクラブ(非公式)の奴らやんけ⋯こいつらほんとどのスレにも出現するな


150:アシュリー

 噂では全部のスレを交代で見ているっていうしな、狂気だぜ


151:ジャック

 まぁあんだけすごい戦いを見せられたらファンに成るのもわかるけどな!というか他の奴らはあの情報を信じてんのか?おれは行くけどな


152:ホルン

 行っても無駄じゃないなら行く以外の選択肢を見つけるほうが難しいよ。だって相手は前大会の優勝者だよ?


153:アシュリー

 早く龍人と鬼人の自治区への行き方を探さないと⋯これは本格的に口が硬い探索ガチ勢どもの口をこじ開けないとな





 よし、とりあえず情報の透過は終わった。これで放って置くだけで話が広まるだろう。私はこのままゲーム内で対策を取ってプレイヤーたちの集合する場所と日時を決めるだけでいい。本当にゲーム内でインターネットが使えることを教えてくれたケインには感謝しか無い。


 「お父様⋯もうこんな悠長に話し合いをする時間はないんじゃないですか?」


 フレイヤが心配そうな様子を見せる。


 「うむ⋯ではアイン、我らが北風を倒すためにどれだけの戦力が必要だと思う?」


 「⋯⋯前回、私が南風を倒そうとしたときは約300人の探索者が討伐に尽力して、そしてその内9割以上が一度死にました。そして今回の北風は南風よりも強い。そう考えれば500人の死者は想定するべきでしょう」


 私の言葉にドルヴェラクとシディルの顔が曇る。


 「実をいうとドワルニアは、というか自治区は島国であるため諍いが少ない。そのためアーク王家より持てる兵の数が決められているのだ」


 「その数は?」


 シディルもドルヴェラクも黙り込む。


 「⋯⋯およそ300人だ」


 300人!?そんなんじゃ抑え込むこともできない。しかも探索者と違って死んでしまう兵士たちの替えは効かない。


 「兵一人あたりの戦力はどれぐらいですか?」


 「一人辺りワイルドボアを5体を同時で倒すことができるだろう。数が増やせない代わり質は高いのだ」


 その言葉にうんうんとドルヴェラクが頷く。


 「それに俺達が作る武器もある。鍛冶に限ればピカイチのドワーフだぜ?そんじょそこらの武器とは引けも取らねぇ」


 「あ、あと!私が前作った設置型の新武器もあるの!あれなら兵士じゃない訓練されていない人たちでも十分使えると思う!」


 「それなら⋯よし、じゃあ私たち探索者を前線においてください。残った人たちは希望者以外は全員後方支援に回ってもらいます」


 「それは嬉しいのだが、本当に良いのか?死をも恐れないとはいえ⋯」


 「大丈夫、任せてください。私だって、私たちだってこの世界が大事なんです!」


 「ありがたい⋯」


 シディルが涙をこぼす。


 隻腕の王様は今もなお国を率いようと奮闘している。その姿を見て家臣が、国民がついていくのだろう。


 「それではこれより作戦を伝える!まずフレイヤとドルヴェラクは―――」


 ガシャンガシャンガシャンガシャン


 王国中の窓が割れていく音が聞こえる。どういう原理だ?


 『大気を震わせる者(クラザモス)


 世界から一瞬音が消える


 『最大出力』


 キィィィィィィィィィィィィィンンンンンンン


 耳鳴りがする。とっさに耳を両手でおおうとぬるっとしたものが私の手を濡らす。両手を見てみると真っ赤に染まっていた。


 これは⋯血?

 

 世界が揺れる。ぐわんぐわんとまともに立っていられない。視界の端々が赤く染まっていく。何故だ?あぁそうか、頭から血が出ているのか。世界が割れるような轟音。徐々に薄れゆく意識。


 それでも最後の力を振り絞って会議室の机を横にしてバリケードとし、フレイヤたちをそこで守る。


 最後に気絶したドルヴェラクを引きずり、避難させたところで視界がブラックアウトする。


 ここ⋯までか⋯⋯⋯



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