第三十九話 神々の黄昏
フレイヤにアダマンタートルの甲羅を託して数日がたった。こんなにも待たされるとは思っていなかったが時間がかかるということはそれだけ強い武器なのだろう。期待で胸が膨らむばかりだった。
私がこの数日何をしていたかというとモンスター狩りだった。冒険者ギルドのランク上げにも必要なことだからと思いドワルニア王都にある冒険者ギルドへ行くと数十人もの人々がいた。口ぶり、話している内容からしてプレイヤーだと思われる。中には武闘大会の直前のレベリングだとか言っている人もいた。
そこにいるプレイヤーに何があるのか?と聞いてみたところ
「これから複数人が受けられる大規模な任務がここであるんだとよ。レベル上げには最適だろ?」
と言われた。結局この任務は大量のワイルドボアを倒してくださいという内容だった。というかワイルドボアってどこにでもいるんだな。ゴキブリみたい。
はじめはこんな簡単な任務を複数人でやる必要があるのかと思っていた。だが次第に数が増え、勢いも増し、物量で押されるようになった。個人で行える対応スピードをはるかに超える速さで突進してくるワイルドボアたち。切っても切っても終わりが来ないし、休む暇もない。
一つ僥倖だったのは南風の大剣の使い方がうまくなったところだろうか。今までは装備スキルであるエアバーストを全身に使って私自身の加速に使っていた。だがこのスキルは消費MPが固定されている代わりに範囲を狭めると効果が強くなるらしい。それに気づいた私は南風の大剣の刀身にのみエアバーストを当て刃の高速回転を実現した。すごい速さで回り続ける刃に巻き込まれたワイルドボアたちはまるでひき肉のミンチになるかのように消えていく。
難点があるといえばこの使い方は一瞬でも南風の大剣を握る力を弱めれば刃の制御が効かなくなり私の体も危なくなるというところだ。それに、大剣を振る角度にも注意する必要があり、斜め上にしたら回転しながら冗句に飛ぶという摩訶不思議な状態になり何もせずそのまま落下して死ぬ。私が天翔龍を持っているから無事で入れたものの持っていなかたら落下ダメージで死んでいたところだろう。まだ一回も死んでいないのにこんなバカみたいな死に方は嫌すぎる。
そんなこんなで他のプレイヤーたちも効率のいいワイルドボアの狩り方を見つけていきこの任務は終了した。驚いたのは一部の魔法使いは水を頭につけて窒息させたり、落とし穴を作り罠にはめたりしてワイルドボアを殺していたところだ。このゲームにはそんな要素もあるのかと驚かされた。
その後冒険者ギルドに行って素材を売って10万サリーを手に入れた。その時の冒険者ギルドの受付嬢に言われた言葉は忘れられないだろう。
「明日もワイルドボア狩りがあるので当然来てくれますよね?」
笑顔から滲み出る無言の圧。来ないとは言わせねぇよ?と言わんばかりの重圧に耐えかねて思わず「行くに決まってますよ」と言ってしまった。
今日倒したのが全てじゃないとしたらワイルドボアたちはどれだけいるんだ。もしかしたら明後日も?ほんとに繁殖力がゴキブリ並みの可能性が出てきたぞ?早くフレイヤたちが武器を作ってくれないかなぁ?
そう思いながら今日までワイルドボアを倒していった。
本当なら今日もワイルドボア狩りに行くはずだったのだがもう行かなくても良い。なぜならドルヴェラクから「もう武器ができたらニョントス城まで来てくれ。」という連絡をもらったからだ。
あの何百匹、何千匹といるワイルドボアをもう倒さなくてすむというだけで気持ちがフッと軽くなった。最近はドワルニアにいるワイルドボアのレベルじゃ経験値もスキルルビーも貰えなくなりつつあったためタイミングが良かったのだ。
今日武器が出来上がると知りウッキウキになりながらニョントス城に向かう。その道中、一人のプレイヤーの声が私の耳をよぎった。
「武闘大会まであと1日だから早く参加用の招待状を出せよ!もう締切まであと10分だぞ?一緒に出ようって言ったじゃないか。」
「でも、今になって怖くなってなぁ。」
「ゲームだぞ!チャレンジするものだろ!」
どこにでもあるような小競り合い。だが私が覚えていなかった招待状の件を覚え出させてくれる。そういえば運営からの連絡にも同封されている手紙から参加を表明してねと書いてあった気がする。それに締切まであと10分?やばくね?
急いでインベントリから招待状を取り出す。
【武闘大会専用招待状】
〈大会概要〉
本大会は当日朝9時にログインしている参加を表明した全プレイヤーのみが特別ステージへと自動転送されます。自動転送の際は手に持っているアイテムとインベントリの中身に限り持ち込みが可能です。本大会の実施期間中は安全のため緊急事態を除きログアウトを禁じます。
大会開始後、プレイヤーの皆さんは自動的にA〜Zまでのランダムなブロックに分かれ、ブロックごとに上位2名までが本戦へと出場が可能です。その後敗退プレイヤーの皆様は観客席に自動転送を行い本戦の内容を観戦可能です。
本戦の内容は勝ち抜きのトーナメントであり順番、並びにシード枠は完全ランダムです。上位三名のプレイヤーには豪華プレゼント及び称号が贈られます。
〈参加表明〉
プレイヤー名:アイン様の武闘大会への参加を表明しますか?
YES・NO
※尚、今大会はスマートリング対応型最新の思考加速を併用します。15歳未満の方は保護者の許可を得てから安全に気をつけて参加してください。また、思考加速を併用している最中の連続使用時間の判定は現実世界をもとにします。
この大会は探索者の実力を図るため計画された。この星に巣食う強大な敵と戦うに値するのか、そしてこれまででどれだけの力を、対抗しうる実力を身に着けたのかを判断したいのだ。
当然YESだ。この答え以外ないだろう。もし、自分以上の実力者がいるとしたら?プレイヤーの中で私の強さの立ち位置とは?そんな疑問などこの大会に出場すれば一発でわかることだ。
迷わずYESを選択して招待状を送る。
これでもう懸念するべきことはなにもない。あとはフレイヤが作った渾身の武器を見に行くだけだ。
ドワルニアの王都の中心に位置する巨大な城、ニョントス城。そこの一角であるフレイヤの工房へと向かう。
「あ、アイン様!ついに完成しました!アイン様の白い御身体を引き立てるような漆黒の大鎌。これが神々の黄昏です!」
フレイヤに渡された黒い大鎌を見つめる。私の腰まである持ち手と巨大な鎌。刃のところには文字が刻まれており持ち手にも複雑な装飾が施されている。全体の色調としては黒色だが、持ちての先にある青色の宝玉が煌めいている。
「これの能力は…?」
ドキドキとワクワクで胸が高鳴る。2日も制作に費やしたその能力とは一体どのようなものなんだ?
ドルヴェラクとフレイヤが同時に口を開け、語る。
「「思考加速」」
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