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Eclipse Horizon ―電脳世界で女子高生が「死の戦乙女」と呼ばれるに至るまで―  作者: 野兎
第一章 青天の霹靂

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第三十七話 フレイヤ

 ピリカで一晩寝てからニョントス城へと向かう。1日中戦い続けた疲労なのかわからないが泥のように眠った私は久しぶりに見たステータスを見て少し驚いた。


 「なんか称号増えてるんですけど?」


 ある特定の行為をしたものに送られる称号。これは今までの経験則からしてジョブとか任務の発生に多く関わっている気がする。それに初めて〜〜をした人に送られる系の称号は総じてレアリティが高い気がする。


 思い返してみればあのダンジョンはどこか異質だった。侵入者を倒すことではなく内部の資料を守るために置かれたゴーレム、様々な研究資料と古代の人から託された情報。生憎ログアウトできないせいでインターネットで簡単に情報を調べることはできないが、果たしてあの「神」に関する情報はプレイヤーの中で広まっているのだろうか。もしまだ認知されていないとしたらこの情報はとても大きなアドバンテージとなる。


 まあ、そんな価値のある情報が詰まったダンジョンを攻略したのだから称号を得ても良いはずだ。少しワクワクしながらステータスを下にスクロールする。


 【称号】

 ・「代理管理権限者」

 『”ダンジョン”を攻略したものに送られる称号。特定の生物と対峙時ステータスが微弱にアップ。』


 ・「遺志を継ぐもの」 

 『初めて”ダンジョン”及び古代の知識に触れたものに送られる称号。あらゆるNPCとの会話に影響する。』



 思ったよりもしょぼい。が、おそらく「代理管理権限者」にある特定の生物とは神のことだろう。他のダンジョンに行ったことはないけれども、「神」に関する記述のある情報は少ないんじゃないか?他のダンジョンに行って何の情報も得られずに攻略したプレイヤーに易易と情報を与えるほど運営も馬鹿じゃない。それで悩んだ結果言葉を濁したにちがいない。


 それに、ちょくちょく称号に出てくる「NPCとの会話に影響する」という項目。この世界のNPCは人間とほぼ変わらない知能と行動力、技術力を持っている。もしこれがNPCと友好関係を築きやすいという効果であれば…その利用価値は跳ね上がる。実質序盤のうちに高度なプレイヤーの協力を得られることと同義だからだ。


 例えるならレベル1のプレイヤーがレベル99のプレイヤーにレベリングを手伝ってもらうようなもの。今に至るまでそれほどの強さを持ったNPCを見かけてはいないがきっといるだろう。なんせアダマンタートルを倒したこともあるNPCがこの王国にいるのだから。


 そんな考え事をしている間にニョントス城に到着した。

 何度見ても巨大な城には慣れない。

 

 なぜニョントス城まで来たかというと、以前ドワルニアの王からの依頼を受けたのでその達成報告をする必要があるためだ。大きな広間から続く階段を登り、謁見の間へと向かう。以前行ったときは門で止められたが今回は違うのだろうか?いや、きっと何か手回しをしてくれたのだろう。


 王がいるであろう謁見の間の扉を開けて中に入る。中にいた王が驚いたような目でこちらを見る。


 「お、お主は…いや、どうなったんだ?我が国を滅ぼさんとするあの化物はどうなったのだ?」


 「無事に倒しました。しかし口先だけと言われても嫌なのでこちらを、王よ。」


 いつの日か見た時代劇や物語の情報を手繰り寄せてロールプレイングしてみる。まぁ、このようにへりくだった言い方なら悪い気もしないだろう。


 インベントリから戦利品であるガルガンチュアの右腕を取り出す。


 「こ、これは!確かにあのダンジョンで見かけたあいつの右腕だ。本当にお主はあの化け物を倒してくれたのだな。」


 「そうです、王よ。こちら私が苦闘を強いられましたがどうにかこうにか倒すことができた強敵です。それで、この依頼を達成したときの報酬はいかに?」


 「そ、そうであったな。衛兵よフレイヤを連れて参れ!」


 王の一言で衛兵たちが謁見の間から数人でてていく。おそらく姫であろうフレイヤが来るまでの数分間、王の側近としてそばに立っているドルヴェラクから「なんでお前さんはそんなへりくだった言い方をしているんだ?」と言わんばかりの眼圧が飛ぶ。

 それにしても王とドルヴェラクの距離が近いような気がする。昔見たテレビでよくドワーフのBLがやっていたけれど…もしかしてそういうことか?まぁ、昔は奇異の目で見られた同性愛者も今ではかなりの人数がいる。何ならそういうコミュニティを作っているほどに。それならゲームの1設定として使ってもいいのかもしれない。


 「我が王よ、こちらフレイヤ姫であられます。」


 「お父様、なにのご要件でして…ってえっ!あ、あの、あのお方は白き方じゃないですか!ずっと、ずっと会いたかったんです!」


 「え…え?どういうこと?」


 「コ゚ホンッ!それでこちらが我が一人娘、フレイヤである。」


 「ご、ご紹介に預かりました。フレイヤ・フォン・ドワルニアであります。どうぞ、フレイヤと読んでください!白き方。」


 衛兵に連れられてきたのはびっくりするほど透き通った白く、そして腰まで行きそうなほど長い髪を持った美少女だった。というかあの少女、前に白から出ていくときに落ちてきた女の子じゃないか?


 「えっと、前に会ったことがあるかな?」


 「はい!巷で噂になっている白き方が偶然うちの城にいるのを見かけて後をついていたら、何故か城から落ちちゃって。それでも、颯爽と現れた白き方が私を抱えてくれて…あの、あのときはお礼を言わなかったんですけど改めて言わせていただきます。ありがとうございました。」


 「それでさっきから言っている白き方っていうのは?」


 「そんなの貴方様のことに違いないじゃないですか。私達、ドワルニアの飛行船の発着場ともなっている交易都市ジョーヌを襲った未曾有の災害級モンスターをほとんど一人で倒した英雄!そのすごさ、戦場での気迫、勇猛果敢なその御心!噂を耳にしてからずっとお会いしたかったんです!」


 どうやら私の活躍は広くまで伝わっているらしい。このゲームでは実際に出会って話すまでプレイヤー名はわからない仕様となっているため他のプレイヤーが勝手に名前を知ることはない。NPCなんて以ての外だ。そのため私の身体的特徴から選んで「白き方」という呼び方が決まったようだ。


 「うん…その白き方っていう呼び方こそばゆいから別のにしてくれない?気軽にアインって読んでよ。」


 「アイン様ですか?もしかしてそれが貴方様の名前なのですか?」


 「そうだけど?」


 「よしっ!あ、いや、ありがとうございます!アイン様のそばにいるとなんだか心がポカポカしますね。」


 「ゴホンッ、そろそろいいかね?本題に入りたいのだが…フレイヤもせっかくの客人を困らせてはいけないぞ?」


 「そうですね、お父様。お父様は私がこの日をどれだけ楽しみにしていたかも知らないんでしょうね。お父様だってお母様に隠れて夜な夜な…」


 「もういい、もういいんだ!私が悪かった。」


 ジトッと王を睨みつける王妃。これはもう明日の命はなさそうだな。というか王様の弱みを握って尻に敷いているお姫様って…


 「わかってくれればいいんですよ。それより、アイン様も…その、私のことをフレイヤって読んでくれませんか?」


 「フレイヤ、でいいのかな?」


 「はうぅ!」


 突然倒れるフレイヤ。その顔には喜色で満ちていて、なんか美少女がしてはいけなそうな顔をしていた。


 「だ、大丈夫ですか?」


 「これがデフォルトの娘なのだ。これには少々我も手を焼いているんだが、何分鍛冶技術だけは私をも凌ぐため誰も注意することができないのだ。」


 「鍛冶の上手さがそのまま地位につながるココだからこそですね。」


 「「はぁぁぁ…」」


 これから私の武器を作ってくれるフレイヤに一抹の懸念を抱えながら王様といっしょにため息をつく。


 



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