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Eclipse Horizon ―電脳世界で女子高生が「死の戦乙女」と呼ばれるに至るまで―  作者: 野兎
第一章 青天の霹靂

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第三十四話 古来よりの贈り物

 「それでさ、連結(コネクト)って結局どういうのなの?さっきは知らずに使ってたんだけど。」


 『それはねー、妖精大剣術のレベルのおかげだよ。妖精大剣レーヴァテインは特別なものっていう話は前にしたと思うんだけど、そういった武器たちには専用の扱うスキルがあるんだよ。そして、そのスキルを上げていくことで様々な有用な効果を得られるの。確かLv2に上げたら連結(コネクト)は使えるようになるはず。』


 「そうなんだ…それで、デメリットとかはないの?」


 『あるよ?』


 「え!ほんとに?」


 『そりゃもちろん、スキルっていうのは強力になればなるほど強いられる代償は増えていくものだもの。特にスタミナを無視して()()できるスキルなんて強すぎるしね。

 連結(コネクト)のデメリットは使用後5秒間の硬直だよ。だからここで勝負を決めるっていうときじゃないと終わったあとに危ないんだから。』


 「そうだったんだね。じゃあさっきガルガンチュアを倒したときも?」


 『うん、もしあれでコアが残っていたらアインは死んでたよ。』


 「うわっ、マジか。でもいろんな技をいっぱい繋げたらいいんじゃない?」


 『それは難しいかも。だって一度に連結できるスキルは10個まで、それにゲージを上回る分は消費できないようになってるもん。』


 「そりゃそっか。50個とか100個とか繋げられたら開幕してすぐにやるだけで大抵の敵は死んじゃうもんね。」


 『大いなる力には代償がつきまとう。この言葉を覚えといてね。』


 「はーい」


 ミリィに質問しながらガルガンチュアの素材を見る。が、何も落ちていない。あれ?と思ってインベントリを見るとたしかにガルガンチュアの右腕はある。もしかしたらこの右腕がドロップアイテムとしてカウントされているのかもしれない。

 他の素材が落ちていないか慎重に探していると、地下に繋がる階段を見つけた。


 『殲滅用守護兵器ガルガンチュアの消滅を確認。

 戦闘ログを参照――【第一級秘匿事項】ではないと断定。推定、【第一級秘匿事項】の産物【第二級秘匿事項】を保持。

 遺跡内の全防衛設備の殲滅対象から対象を除去――完了。

 【第二級秘匿事項】の保持よりこの先の研究結果の閲覧資格がアリと判断。

 提案、管理権限者への許諾申請――不可。

 何らかの防御プロテクト及び破損を確認。

 自考、対象のこの先への侵入を許可。並びに【第二級秘匿事項】との情報の交信を開始。

 失敗、失敗、失敗、失敗。

 【第二級秘匿事項】の著しい破損、【第一級秘匿事項】の干渉のいずれかと断定。

 対象に自己判断でさらなる情報の開示の許可。』


 無情な機械音声がダンジョン内に響く。ところどころノイズが走る。ミリィといい、このダンジョンといい、私達プレイヤーはまだ知っていはいけない情報があるのだろうか?だとしたら一体それは何なんだ?このゲームの根幹となる何かが…

 そこまで考えたところで階段の様子が変わる。先程まであった階段が一度埋め直され、新たな階段に作り変えられる。このまま降りていいのだろうか?ひょっとして罠なのではと思ったが…いや、そんなはずはない。何よりこのダンジョンで探索できる場所がここ以外ない以上、この階段を降るべきだ。


 コツコツと階段を降る音だけが耳をかすめる。冷ややかな空気、人の手が加えられなくなってひび割れた壁、不規則に配置された光源。階段は驚くほど長かった。何十段、何百段と降りても尚先が見えない。手を伸ばした先すら見えない暗闇の中ただひたすらに前へと進む。そして階段を降り続けること5分ほど。ついに開けた場所へと着いた。


 『魔力波長を計測――照合。

 【第二級秘匿事項】との通信不可より正確性の欠落があるがコードネーム:探索者と推定。

 プロトコルの展開、及び全遺跡への情報共有。

 【第一級秘匿事項】の汚染度――0.00000000000000002%

 遺跡全体のプロテクトの一時解除。』


 再び機械音声が鳴ったかと思うと急に光がつく。


 「眩しっ!」


 久しぶりの光のせいでつい目をつぶってしまう。目を隠した手の隙間から光を漏れさせて徐々に目を慣らしていく。

 明るさに目が適応して初めて開けた場所の全容を見ることができた。


 「ここは一体…もしかして研究施設?」


 何やら複雑な仕組みを持った機械が何個も立ち並び、試験管やホログラムが至る所に存在する。現代の人なら一度は想像するようなSFの世界がそこにはあった。


 「ミリィならなにか知っていたりする?」


 先程からプレイヤーでは理解できない情報を喋る相棒に問いかける。だが、どこか調子がおかしい。


 『う…嘘だ。ここにいた人間たちは?多種多様な種族がいるはずなのにどうして?何があったんだ、何が起こったんだ?私達でも知られていないような重大事案が発生したのか?それとも【第二級秘匿事項】でも感知できない存在の干渉か?自主的に退去するはずがない。だけど内部崩壊による自滅の可能性も…』


 「ミリィ、ミリィ、ミリィ!!大丈夫?なんか調子が悪そうだけど。」


 『ううん…いや最悪な予想が頭をよぎっただけだから大丈夫。だからそれより先にアインはこの研究施設の中を調べといて。なに、こんなのちょっと休んどけば大丈夫だから。』


 ミリィが疲れたような顔でこちらに笑いかける。いつも、いつだってそうだ、この相棒は。自分のことは後回しで私のことを気遣う。いくらNPCだろうと、生きていなかろうと、それが作り出された人格だろうと私には関係ない。誰がなんと言おうと私はミリィが大事なんだ。


 しかし、だからといってミリィの直ぐ側にいてなにかできることも少ない。それなら少しでもココの調査をしたほうがいいだろう。


 「じゃあ、ミリィはここで待っていてね。あまり遠くには離れないつもりだから安心して。」


 そう言って広さにして学校の教室3個分ほどの研究施設を見て回ることにした。


 まず目につくのはモンスターのホログラム。今まで私が倒したものもいれば会ったことすらないモンスターの姿形が精巧に描かれている。そして下には細かな説明が書かれていた。

 例えば「ゴブリン」と調べれば斧を持ったゴブリンの姿が、そしてゴブリンの習性や行動パターンが事細かに描かれている。


 確かにこの技術自体は素晴らしいが、なぜこんな物が作られたのか?という疑問は残る。昔の人々、ミリィによればここの研究施設で働いていたであろう存在たちの目的、その真意とは…いや、考えても仕方がない。ほかを回るとしよう。


 次に見つけたのは二種類のネズミだった。片方は黒いオーラを纏い獰猛な視線をこちらに向け続けているがもう片方は青いオーラを纏わせていた。優しい目でこちらを見つめる。二匹のネズミはどちらも巨大な管につながった試験管に入っている。


 その次に見つけたのは星の模型たちだった。6つの星、そしてその一つは私達が現実世界でいる地球そっくりだった。ところどころ大陸の位置が変わってはいるが地球である。それにひときわ大きく作られている模型がおそらく今いるゲームの世界だろうか。マップと見比べても遜色ない模型。誰が何にどのような目的でそこまで正確性にこだわったのか。


 最後に目に入るのは膨大な量のレポートたち。空中に浮かんだ無数の紙たちにズラズラと情報が書き連ねられる。

 複数人の調査結果をまとめたものだろうか、色々なタイトルが並んでいる。


 「魔力の存在決定における最重要概念」「モンスターの起源」「星の成り立ち」「星間航空における基礎理論」「HPとは」「独自進化論でのモンスターの環境適応能力」「神について」「地殻変動調査結果」「人体錬成の研究過程」「限定的改変能力の付与」「耐性の付与にかかるエネルギー」「高い効率のエネルギー変換」


 挙げ始めたらきりがないほど莫大な数のレポートを読んでいく中で一つの面白そうなレポートを発見した。そのレポートとは――


 「神について」


 20枚に渡るレポートだった。

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