第三十三話 理不尽にも種はある
累撃昇華――受けたダメージを自身の攻撃に上乗せし、連続攻撃をしていくことでダメージを最大3倍までするスキル
ガルガンチュアの放った一撃を転用した私の攻撃は見事、腕を破壊することに成功した。何度も何度も攻撃を繰り返して、最後の一撃でようやく壊れた右腕。急に体のバランスが取れなくなったガルガンチュアは地面に倒れ込んでいく。
『生体外装の著しい破損を確認。対象の危険度の引き上げ。第二形態へ移行。』
は?第二形態があるのか?これで同じような硬さを持っていたら………考えたくないな。
みるみる体が変わっていくガルガンチュア。全長20mもあったはずの体が別のナニカへと再構築されていく。唯一切り落とした右腕の身は残っている。あれ、もしかしてこの右腕インベントリに入るんじゃないか?というかUI操作も今ならできるんじゃないか?
早速インベントリを開こうと念じてみると何もなかったかのように開けた。南風の大剣をインベントリに戻し、レーヴァテインを取り出す。そして巨大な右腕をインベントリに仕舞う。よしっ、思った通りこのインベントリに仕舞えるものの容量制限はないみたいだ。武器も揃え、ドロップアイテム?も拾い終え、準備は完了。ガルガンチュアの体の変化が終わるのを待つ。
全身が一度塵のようになったあとに再構築。先程までの巨体が嘘だったかのように消え失せ、代わりに私よりも小さい小柄な人形ゴーレムが出来上がった。
『対象を分析――物理攻撃主体。
自身の肉体に物理無効を付与。失敗。管理権限者の許諾が得られません。
代案、スキル封印を提案。失敗。管理権限者の許諾が得られません。
代案、即時修復を提案。失敗。管理権限者の許諾が得られません。
推定、管理権限者の不在。自己範疇プログラムを始動。
対象を再分析――
特性、模倣を自身に付与。成功。対象者の身体特性を数値化、再度反映。
殲滅用守護兵器ガルガンチュアの戦闘プログラムを始動。』
小さくなったガルガンチュアが身構える。さしずめ私のステータスをコピーしたということか。もしこれでVITとHPの値はもとのままだったりしたら機動力、ダメージ、耐久力において私と同等か上回ってしまう。ここは何か策を練らないとな。おそらくドワルニアの調査団が遭遇したのもこの形態のガルガンチュアだろう。口ぶりからして王様のステータスを模倣したのか?
『対象の殲滅を開始。推定戦闘時間――30秒』
ガルガンチュアが私の背後に現れる。早すぎるっ!今まで自分より早い相手と戦ってきたことが少ないのが裏目に出たか?とりあえず攻撃を避けなければ。
「火の妖精よ、集まれ!」
レーヴァテインに火の妖精核をはめる。紅蓮に染まった日本刀が手の中に形成される。
「私のステータスを模倣したって?オリジナルが勝つに決まってんだよ!」
ガルガンチュアの攻撃を紅蓮刃・朱雀で受け流す。が、朱雀を持っていた右腕に攻撃の衝撃が伝わる。内部の骨に伝わる振動で右腕が痺れる。流石に片手で防御するのは舐め過ぎだったか。
だが、攻撃をいなされたガルガンチュアの右腕にヒビが入る。どうやら朱雀にパンチしたときに逆にダメージを受けていたようだ。今まで強固だった自身の身体にヒビが入ったことに驚いたのか、私から距離を取る。
ビンゴ!VITは私のステータスを模倣していたようだ。褒められたことではないが私のVITは1。今は四風の守護によってそれなりにはなっているがガルガンチュアは装備によるステータス強化は反映しないみたいだ。
『自身の肉体強度について再考。戦闘方式の変化を推奨。』
傷ついた肉体を訝しげに見ていたガルガンチュアが私の方に向かってくる。あれは、ボクシングの構えか?両腕を頭に置き、防御をしながらこちらを伺ってくる。だが、相手が肉体格闘を主とするなら好都合。私の使う朱雀は日本刀、リーチの差で間合いの外から切ってやる。
「居合・紅蓮抜刀。そして焔閃・紅羽!」
居合、そして飛剣。手を出せない場所からの攻撃にガルガンチュアは成すすべなく倒れる。
「やったか?」
動かなくなったガルガンチュアを見つめる。こんな簡単に倒れるだろうか?確かに紅蓮剣・朱雀の装備スキルは強力だが……いや、そんなはずはない。なんせこの遺跡の守護者、これは流石に弱すぎる。次の手があるんじゃないか?
『対象の危険度の増大を確認。再構築、並びに全体強化を施行。』
ガルガンチュアの目が怪しく赤に光る。倒れていたガルガンチュアがまた再構築され、小柄な姿に戻る。よく見るとさっき傷つけた箇所も治っている。
『全体強化:強化段階1を施行。』
ガルガンチュアがまた背後を取る。はじめと同じ動き、だが格段に早さが変わっている。さっきまで目で捉えられていた。今はどうだ?注視していたのに姿が消える。いや、目の端には捉えられてはいるが早くなっているのには変わりない。
背後に来たガルガンチュアが足払いをする。足を崩され体を支えられなくなる。倒れ込む私の体にガルガンチュアの一撃が打ち込まれる。まずい、モロに喰らうのは今後に響いてしまう。
「ふ、風纏!」
ブォォォォ!!!!
四風の守護、その装備スキルである風纏を発動する。防御をする代わりに高燃費、そのデメリットを解消するためにインパクトの瞬間を見計らって展開をする。
展開された風纏がガルガンチュアの一撃を受け止める。完全無効化とは言わないが8割ほど減衰させる。残ったHPはおよそ8割。傍若無人を発動し続けているというのに2割のHPが削られる。意識が防御に向けられた一瞬でガルガンチュアに腹を蹴り上げられる。それと同時にガルガンチュアが私の上に移動して、上から下に蹴りを入れる。地面に叩きつけられる寸前に天翔龍を発動させ、空中で一回転して着地する。
これ以上の長丁場は危険だ。そう感じ一気に勝負に出る。使用するのは炎熱・灼陽。防御を無視する横の太刀をガルガンチュアにぶつけるしかない。天翔龍で上がったAGIを駆使して後ろに回り込む。スキルの効果で作った宙の足場を踏み込んで炎熱・灼陽をガルガンチュアの脇腹に入れ、ガルガンチュアを再度崩壊させる。
『対象の危険度の増大を確認。再構築、並びに全体強化を施行。』
「またかよ!これ終わんないんじゃないか?どうなってるんだ!」
再び強化されようとしているガルガンチュアを見て叫ぶ。何度倒しても蘇る?不死身かよ。おかしすぎる。倒すたびに強くなる?じゃあ倒せない。そんな不条理があってたまるか。ということはガルガンチュアはステータスで殴り倒すのではなくギミックで解くボスということ。何か鍵はないか?
星祓いの妖面からミリィを呼び出す。
「ミリィ、ガルガンチュアの弱点ってわかったりしない?」
『そんな事私に言われても…私が教えられるのは基本的なモンスターの情報であってコイツの情報は全然持っていないの!だから力にはなれないみたい。』
「そんな…ほら、なんか観察するだけでもいいからさ。気づかない?なんというか違和感に。」
『うーん、言われてみたら…あの赤いキューブって何?』
ミリィに指さされた方を見ると再構築中のガルガンチュアが、いやその内部に赤いキューブが存在していた。あれ?さっきまであんなのなかったはずなのに…
とりあえずあの赤いキューブが弱点なのだろう。今この場で勝負をつける。再構築が終わるまでにかかる時間は1度目から察するに15秒程度。赤いキューブが再構築の間のみしか現れないとしたら猶予はあと5秒弱。
紅蓮・灰燼貫でステータスを上げて赤いキューブに狙いを定める。焔閃・紅羽を放つが傷が少し付く程度だった。残された時間はあと数秒。間に合わないか…
『早く連結して!』
ミリィが知らない単語を口にする。連結?そんなの記憶にないんだが…もしや、妖精大剣術のレベルが上ったことによる効果か?ちゃんと確認しとけばよかった。文字面からして複数の技を連結するものだろうか。
頭の中に繋げたい技を思い浮かべる。この硬いキューブを破るのに必要なのは、防御力を無視できる炎熱・灼陽のみ。残りゲージとの兼ね合いを考えて10個連結することにする。
「炎熱・灼陽×10!!」
体がなにかに引っ張られているかのように勝手に動く。脳のリミッターが外れたかのように想定をはるかに超える動きが繰り広げられ骨が軋む音がする。腰の捻りと肘の関節、肩の筋肉を活用して神速の10連撃を放つ。
防御力を無視すると言っても限りあるようで、10撃目でようやく赤いキューブが破壊される。破壊と同時にガルガンチュアの抵抗がなくなる。
『行動コアの破壊を確認。全行動を休止させます。』
ついにガルガンチュアを討伐したのだった。




