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Eclipse Horizon ―電脳世界で女子高生が「死の戦乙女」と呼ばれるに至るまで―  作者: 野兎
第一章 青天の霹靂

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第三十二話 防衛者ガルガンチュア

 突如として崩落した足場によって下に落ちた私が見たのは巨大なゴーレムだった。


 「ミリィ、あれ何かわかる?」


 『あ…あれは、私の持つ記憶の中で最も古い場所の。あのゴーレムは【第三級秘匿事項】を用いて作られた対【第一級秘匿事項】の産物。確か名前はガルガンチュアだったはず。だけど最もニュートラルなタイプだったのになんで?』


 またミリィの言葉にノイズが入る。この感じ、もしかしてミリィは多くの謎を抱えていてこのゴーレムにもその一端があるのか?だとしたらどんなつながりが…


 『アイン、動き始めたよ!』


 巨大なゴーレム、いやガルガンチュアの瞳が紅く光る。一つ目のゴーレムがその巨体に物を言わせて腕を振る。


 「こんな狭いところで動き始めんなって話!」


 傍若無人を使用する。被弾が多いこの状況で物理ダメージ50%カットはありがたい。なんせ相手は20m級。少し動くだけで致命的だ。巨体というのは時に最大の武器になりうる。自分の何倍もある物質に踏みつけられたらいかに力が強くても敵わないだろう。


 『対象者の魔力(マナ)の波長を解析。実験対象との合致率:99.999999999% 機能制限を開始。』


 ガルガンチュアが喋ったかと思ったら、先程まで紅く光っていた目が今度は青色に輝く。何事かと思い腰に据えていた南風の大剣を構える。だがいくら待っても攻撃は行われない。


 「あれ?おかしいな。」


 あんなにも「こっからなんかヤベェことやるぞ!」っていう雰囲気だったのに拍子抜けしてしまう。もしかして不発?それなから好都合、そう思いガルガンチュアへと走る。南風の大剣を握りしめてガルガンチュアへと向かう。

 はじめの頃に比べて比較にならないほど強化されたステータス。体の中の重心を前に滑らすように踏み込むことでまるで消えたかのような高速移動が可能になる。


 まるで巨木かのような太い足に斬りかかる。確かに硬く、攻撃が通じていなように思えるがよく表面を見てみると微細なキズがある。通じていないわけではないのだ。これならずっとダメージを蓄積していけば…


 『対象者の行動データの収集が完了。これより高速演算による攻撃可視を開始。』


 今度は緑色に目が光る。すると途端にガルガンチュアの体の動かし方の精度が跳ね上がる。初めはただ突っ立てる木偶の坊だった。しかし今はどうだ?まるで初めから通ることがわかっていたように用意周到なまでの準備された攻撃。右手で私の行動範囲を追い込んだところで左手で私の体を強打。どのような動きで私が移動してくるかを読んでいるようだった。


 だけどそんなのがどうした?私はまだまだ加速する手段が存在する。手始めにエアバーストを使用。MPを消費することで圧縮した空気による一時的な加速が得られる南風の大剣の装備スキル。空中でいきなり軌道を変えた私に対処できずに攻撃が入る。右腕に当たった攻撃は表面を割らずとも内部に衝撃としてダメージが入っていく。


 『対象者の行動データの再収集に成功。攻撃可視の最適化に移行。』


 再び目が緑色に光る。言っている内容からしてエアバーストを利用した攻撃に対処できるようになった?いや、ハッタリの可能性がある。ここは試してみるとするか。


 もう一度エアバーストを使用。今度は下から上へと押し出され、胴体を狙う。


 『攻撃可視の最適化を完了。』


 その瞬間ガルガンチュアの胴体のごく一部、目にも見えないような細さの場所が針のように伸びる。


 「ぐっ、私のスピードを利用した!?」


 そう、ガルガンチュアは私の攻撃を読んだうえで必要最低限の行動で私にダメージを与えた。針で突き刺されたところがジンジンと痛む。

 確かにエアバースト単体での動きは読まれてしまったかもしれない。だが MP消費で瞬時加速ができるエアバーストはつまるところ重ね掛けが可能となる。エアバーストを同時に2つ重ね掛けすることでガルガンチュアの予測を超えた動きが……


 待てよ。ガルガンチュアはおそらく相手に適応して攻撃を予測するタイプ。まだ倒せる算段がないのにガルガンチュアにこれ以上の動きを見せてもいいのだろうか。

 いや、それは自分で自分の首を絞めるようなもの。愚策だ。だけどいいことに相手は私のスピードに対応するだけでおそらく攻撃力、ダメージには対応できないはず。それにグダグダやって長丁場になることは避けたい。

 それならレーヴァテインを使って短期決戦に持ち込むか。早速インベントリを開いて―――


 【対象者:ガルガンチュア によって規定の行動を制限されています】


 インベントリ不可!?一体どういうことだ。今までそんなことをガルガンチュアにやられた覚えなど――

待て、一番最初にガルガンチュアがやったのは何だった?機能制限だ。もしかして、いや確実にこれはプレイヤーのUI操作を制限するもの。

 時間を確認しようとする。普段なら念じるだけで右端に時刻が現れるが今は現れない。マップを見ようとしてもうんともすんとも言わない。

 

 「やられた…」


 最初からガルガンチュアによって武器の取替が不可能となってしまっていたのか。こんなことなら普段遣いの南風の大剣じゃなくレーヴァテインにしとけばよかったなぁ。

 

 まあ、もう過ぎたことを今更言ってももう遅い。それよりどうやって目の前のガルガンチュアを倒すかだ。ドワルニアの王の右腕をなくしたという相手はおそらくガルガンチュアだが、それほどの攻撃が本当にこいつが行うだろうか。奥の手ということで隠しているかもしれないので警戒を怠ることはできない。いや、実は別個体がいるのか?

 考えても仕方ない。ひとまずは必要最低限の素早さで動き、ダメージを与えていくしかない。


 「傍若無人!」


 効果が切れたスキルを再度かけ直す。物理ダメージをカットでき、破壊属性までついてくる超有能無このスキルは今の状況では必須。デメリットの狙いがつけなくなる点も巨体なガルガンチュアなら関係はない。傍若無人というスキルはまるでガルガンチュアと戦うためだったのでは?と思うほど相性がいい。


 生憎私の職業は執行人。二つ名持ちに対しては無類の強さを持つがそれ以外のモンスターに対しては補正がかからない。それによって様々なステータスバフがかかるスキルも使用不可。頼りの綱の妖精大剣レーヴァテインもインベントリが開けないため使用不可。そして人族という種族であるがゆえに強力なスキルが多い反面、数は少ない。もしかしてだけど、これ詰んでいないか?


 といってもだ。手を動かし続ける他ない。南風の大剣でガルガンチュアの右腕を執拗に狙い続ける。剣を縦に振り、体に当たったところで体勢を変換。同時に天翔龍を発動して2連撃を食らわせる。少しずつだがヒビが入っていく。見た目はレンガなのに強度が全く持って違う。だけど壊れないほどではない。ここで勝負を決める。


 「ちっ、これは長丁場になったら困るからあんま使いたくなかったんだけどなぁ。」


 慎重に使うタイミングを見極める。動くのをやめてガルガンチュアに隙を見せ、攻撃を誘う。相手の行動を疑う能力はないのか大きく右手を振りかぶってきた。ここで奥の手を使う覚悟を決める。


 「発動――累撃昇華!!」


 ガルガンチュアの放った特大の一撃を南風の大剣で受ける。そして一撃、体の捻りを利用してガルガンチュアの右腕を狙う。次に左手も添えて左斜め上に切り返しを行う。三撃目、四撃目は真上から地面に叩きつけた後、宙を踏みしめエアバーストも使い前に突きを行う。度重なる連撃に恐れをなしたガルガンチュアが左腕で払いのけようとする。その動きを見て、私は高く跳躍する。重心移動で回り、落下しながらラストの攻撃を右腕に食らわせる。


 ガガガボキッッッ!!


 ガルガンチュアの右腕が破損する音が聞こえる。


 「このスキル、HP消費するから嫌なんだよな。」


 ガルガンチュアに一矢報いた。

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