第三十話 王命クエスト
ドルヴェラクから連絡が途絶えて早3日。公式イベントのプレイヤー同士の勝ち抜きトーナメント「武闘大会」まで4日となった。今までドワルニアの街を散策したり、付近にあるモンスターの狩り場などで経験値を集めた。
このゲームにはレベル限界というものがない代わりにレベルアップごとに必要な経験値が増えていくらしい。現に3日間モンスターを狩りまくっていた私でさえレベルは1しか上がらなかった。モンスターとの戦闘で手に入るスキルルビーにも変化があった。
今までは弱いモンスターからもスキルルビーが出ていたが今では少し強い個体、LV40程度のモンスターからしか経験値もスキルルビーもSPも貰えない。またスキルルビーは強くいモンスターほど排出確率が極端に減っていくらしい。
この3日間で倒したのは主にドワマンダーというトカゲだ。ドワマンダーは炎の玉を作り出すトカゲであるサラマンダーの地域固有種らしく、鉄を身にまとっている。まさに鉄の申し子と呼ばれるドワーフの住む地ならではだ。
身を纏う鉄の鎧が固く、倒すのは意外と大変だったがレベル自体は低くスキルルビーもあまり落ちなかった。
「あら、アインちゃん。今日も主人からの連絡は来なかったわ。」
ピリカの女将さんであるルージュに声をかけられる。王家と会いに行ってくれたドルヴェラクは未だに帰ってこない。だが、ドワルニアの中で鍛冶技術が五本の指に入るとも言われているので捕まっているわけではなさそうだ。
ひとまず安心とはいかないがドルヴェラク自身の身の安全によりタイムリミットのほうが大切だ。もともとドワルニアに来たのはアダマンタートルの甲羅を扱える存在を求めてであり、その甲羅からできた武器を使って武闘大会に出ようということだった。あと4日で武器ができるのか?一抹の不安が頭をよぎる。
「えっと、ルージュさんは大丈夫なんですか?こう、久しぶりに帰ってきた夫が心配だとかは。」
「うーん、あまりそういうのは感じないのよね。なんせあの人は鍛冶、鍛冶、鍛冶っていう人だったから私を放ってヨルムンガルドに行ったのも納得だったし。まあ明日には連絡が来るんじゃないかしら?」
「そうだといいですね。」
自分の部屋に戻る。明日に連絡が来なければ王宮にでも行ってやろうか?と思いながらベッドに入る。
VRゲームの中で眠るということ自体がおかしいと思う人もいるだろうが私はそうは思わない。夢の中でトイレに行く夢を見ておもらしをする人がいるように、夢の中で寝るなら現実でも寝ているに決まっているからだ。
次の日、朝食を取るために下の食堂に行ったらルージュに声をかけられた。
「ねぇ、今日の朝に連絡が来たんだけど今日の昼から王宮に来れるか?だって。なんか主人いわくギリギリまで粘ってようやくこぎ着けたらしいから伝えるのが遅くなってすまないだって。」
「本当ですか!今日の昼か…じゃあ朝ごはんを食べたら早速王宮に向かってみますね。」
「そうするといいわよ。意外とここから応急までは遠いから。」
「はい!」
話を聞いたら素早くご飯を食べる。テーブル上からご飯がなくなったらそのままピリカを出る。ピリカから見える大きな城。それがドワルニアの王城らしい。
周りにには多くの人がいるため天翔龍を使っての高速移動は危ない。周りの話し声を聞く感じプレイヤーも混じっていそうだ。大人しく歩いて王城へと向かう。
ドワルニアはヨルムンガルド、ジョーヌと違って石で舗装されておらず土がそのままの状態で剥き出しとなっている。また建築様式も随分違っている。全体的な色合いが赤色系の暖色でまとめられているようだ。
ピリカから歩くこと30分ほど、国の中心部分である王城へと到着した。だが門をくぐろうとしたら王城の門兵に止められてしまった。
「おい、ここは許可なく立ち入っていい場所ではないぞ。謁見許可証はあるんだろうな?」
おそらく貴族には到底思えない服装と歩きできたことから随分と疑われているようだ。
「許可証はないんですが…ドルヴェラクさんから話を伺っていませんかね?」
「はっ!ドルヴェラク様のお連れでしたか。これはご無礼を。どうぞ、我らが王も楽しみにしていました。」
門兵は快く開門してくれた。ドワルニアの王城、門兵によるとニョントス城というらしいがやっぱりここも赤を貴重としている城となっているようで、至る所に炎をかたどっていると思われる彫刻が散在していた。
ニョントス城に入ってすぐの大広間から階段を上がり、二階の謁見の間へと足を運ぶ。
「失礼いたします。私は冒険者ギルド所属のアインです。」
謁見の間の扉を開けると目の前に巨大な玉座に座った王、そしてその側にいる王女と思わしき女性とドルヴェラクがいた。
「そなたがドルヴェラクの言う信用に値するものということか…して、そなたは伝説の鉱石亀、アダマンタートルを討伐したと伺っているがそれは本当か?」
「はい、本当です。こちらがアダマンタートルを討伐して得た戦利品、アダマンタートルの甲羅です。」
そう言ってインベントリからアダマンタートルの甲羅を取り出す。
「こ、これが有名な…それでそなたの願いというのがこれを武器に加工したいということだったな。」
「はい、ドワルニアの王様なら加工できるんじゃないかと思いまして。」
私の言葉に王様が顔を曇らせる。
「その件なんだが、我には難しいようだ。この右腕を見てみよ。」
王様が私に見せてきた右腕は、肘から下がなくなっていた。
「つい最近この国のダンジョンに強力なモンスターが居るという噂を聞いて我直々に軍団を率いて討伐しようとしたのだ。我がこの国で最強だからな。だが、この有り様だ。すまない、この腕じゃアダマンタートルの甲羅など火入れすら難しいだろう。」
王様の話によるとダンジョンのモンスターに右腕が喰われたため武器にできないということだった。
「そんな…他に方法はないんですか?」
「あるにはある、だが条件が存在する。それを飲んでくれるか?」
「その条件というのは?」
「我の代わりにダンジョンのモンスターを討伐してほしいのだ。この国最強の私が成すすべなく倒されたということは即ち、この国の滅亡を意味しているのだ。どうかモンスターを討伐してほしい。
その代わりと言っては何だが、モンスターを討伐した暁には我が娘、フレイヤに頼もう。フレイヤならばおそらくアダマンタートルの甲羅を加工できるからな。」
「了解いたしました。精一杯やらせていただきます。」
頭を垂れた途端光が放たれた。
【隠し任務 ドワルニア国王からの勅命 を受注しました】
「嬢ちゃん、厳しい戦いになるだろうが頑張れよ!」
「我を成すすべなく倒した強敵だ。そなたも十分気をつけるように。」
そう王様とドルヴェラクに言われて謁見の間をあとにした。何やら王様とドルヴェラクは仲が良さそうだったが知り合いだったのだろうか?確かに久しぶりに帰ってきたドルヴェラクとの積もる話もあるに違いない。
ニョントス城をあとにしようと庭園に出たとき白い紙を持った挑発の女の子が飛び降りてきた。
「あっ、あぶなーい!!」
天翔龍を発動して女の子を抱きかかえる。女の子は私の腕の中で「にししっ」と笑っている。
「もう、危険なんだからちゃんと周りを見てよ?」
「?」
「だから、落ちてこないようにしてって。」
「?」
「というかどこから落ちてきたの?」
「????」
女の子は疑問そうに首を傾げるばかりだ。一体どこから来たのだろうかと考えていると、
「お姉さんは私のこと好き?」
と問いかけてきた。どう答えるべきなのかと考えているうちに強い風が吹く。
ボウッッ
つい目を閉じてしまい、次の瞬間にはその女の子は忽然と消えていた。
皆さんの応援が執筆の励みとなります。もっと読みたい!続きが気になる!面白かった!と感じたらブックマークと高評価をお願いします。




