第二十六話 ステータスは異常が正常
私はドルヴェラクトの待ち合わせ通り朝に飛行船の乗り場へと向かった。交易都市という名がつくだけあってジョーヌの真ん中には巨大な飛行船の乗り込み場、いわゆるヘリポートのようなものが存在している。どうやらもうドワルニア行きの飛行船は搭乗を開始しているようで多くの人がその飛行船に乗り込んでいる。この多さからして少なからずプレイヤーも混じっているだろう。
なるほど、多くのプレイヤーに新たな目的地、もっと言えば他のエリアへと誘導するのがこの街の役割なのかもしれない。なら一層この街を破壊しようとしていたノトスとそんなシナリオを作った運営の頭がイカれているとしか考えられない。
『見てみて!アイン。あーんなでっかい船が浮くだなんてすごくない!始めてみたけど感服だわぁ。』
「おい、嬢ちゃん。この船は錬金国家ドワルニアの技術の粋を集めたものだぞ。そうやすやすとお目にかかる機会なんてねぇんだぞ!」
近くにいる二人が飛行船に興奮しているようだ。まぁ私だってこういう厨二心がくすぐられるようなものを見たらワクワクしてしまうがここでそれを出したら負けだな。この精神年齢が低めな人たちと同レベルになっちゃう。
「というかこの船どうやって浮いたり動いてるんですか?」
「うーん、俺達鍛冶師の仕事の範疇から外れるから確かなことは言えねぇんだがな。俺達が使うマナに反発する何かが地面に埋まっているらしくてそれを使って浮いているみたいだ。そして推進力はジェットだ。風魔法の陣が埋め込まれた魔道具を何百何千と積み込んで空気を圧縮。それを解放するときに放たれる空気で前に押し出すっていう仕組みだ。」
「すごいですね。これも全部ドワルニアが作ったていうことなんですか?」
「いや違う。性格にはガワはたしかに俺達だが根本的な浮力を発生させる機構は俺達には再現できない。もう失われた技術なのかもしれねぇがうちの研究者どもは張り切ってこいつの解析をしているはずだぜ。」
もしかしてこの飛行船思った以上に貴重なものだったのかもしれない。この飛行船の数には限りがあるし全部なくなったら他の種族が治める島国に渡航することが困難になる。だからこそこのタイミングで行くのは最適だったかもしれない。
「じゃあ早速中にはいってみることにしよっか。」
『了解でーっす。』
飛行船の中はよくテレビで見るような超豪華客船の内装とそっくりだった。赤を基調としたカーペットに金で装飾された多くの品々。そして一人ひとりに与えられた個室と飛行船の中心に設けられた巨大な舞踏場。さすがドワルニアの技術の集合というだけあってこのゲームの中で初めて近代の文明のようなものを見た気がした。
ドルヴェラクと別れて個室に入る。ここからドワルニアまでおよそ1日。他のプレイヤーはログアウトして普段の生活に戻ることができるだろうが私は理不尽な看護師のせいで1ヶ月間ゲームをしないといけない。いや、強要はされていないけど起きているの見られたら知らぬ間に殺されそうだったからな。なんかもう目力がすごかったよな。なんというかギュンッって感じで。
なにはともあれ私はこれから暇なので久しぶりにスキルの作成などをしていこうと思う。南風のノトスとの戦いでレベルも上がっただろうしステータスを割り振るのが楽しみだ。なんせ大規模なレイドを終えた上、ボスであるノトスとの戦闘もほぼ自分でやったようなものだ。流石にレベルが凄く上がっているに違いない。
そう思いステータスを表示させる。驚愕する。
想像以上のレベルアップに加えて一瞬見る目を疑ったのかと思うほどのSP。これから作るスキルについて思いを馳せながらステータスの割り振りを考える。
《アイン・人族》
レベル:70
保有SP:2720(120+特異二つ名持ち討伐分2500+レイド報酬分100)
保有BP:370(レベルアップ分350+月下葬送分20)
うん、なにこれ?たった1戦闘でここまでレベルが上がると誰が思う?それにこのSPを見てよ。2720だよ?桁一つおかしくない?と思ったよね。地味に特異二つ名持ちを倒すだけで2500ってエグいよね。まあ倒そうと思って倒せるようなものじゃないけど。それより肝心なのはステータスだ。今まで通りSTRとAGIを上げるのはもちろんのことこれを機にHPを切りが良いところまで上げきってしまいたい。紅蓮刃・朱雀にHPの消費が必須なものがあることからHPを上げるのも悪くはないだろう。それに今回の戦いでSTRに関しては足りていると感じたためAGIに少し重きをかけるとする。
《アイン・人族》
レベル:70
職業:執行人 (3/5)
保有SP:2720
保有BP:0
HP:100
MP:149(189)
STR:250(350)
AGI:250(290)
VIT:1(201)
装備品
・星祓いの妖面
・風纏の獅子
・妖精大剣レーヴァテイン
『持ちての中央に存在するくぼみに妖精核をはめ込むことで特殊形態に移行可能。形態ははめ込む妖精核の属性によって決定し、また形状は初回発動時の使用者のイメージを汲み取ることで構築が可能。また、装備時STR+100。
その昔存在した妖精の王女は瘴気に侵され、横暴を働くようになった王に反乱を起こした。王の権力は偉大で彼女の軍勢はことごとく全敗しついに命を落とす寸前となった。その時王女は自身の命を糧に一本の大剣を生み出したのだ。この剣は彼女の生きた証であり人類に与える希望でもあるのだ。』
【スキル】
・天翔龍
・妖精大剣術Lv.2
〈職業スキル〉
・断罪執行
・処刑宣告
・月下葬送
〈装備スキル〉
・星の位相
・風弾
【称号】
・「ジョーヌの街の英雄」
『急襲交易都市ジョーヌ防衛戦に参加したものに与えられる。一部NPCからの好感度アップ』
・「反旗を翻すもの」
『特異二つ名持ちモンスターを討伐したものに与えられる称号。あらゆるNPCとの会話に補正がかかる。』
・「反逆者」
『初めて特異二つ名持ちモンスターを討伐したものに与えられる称号。ある特定の種族との戦闘時にステータスへの補正』
レイドを成功したことにより新たにまた称号が増えたみたいだ。それについに200を突破したステータスたちについても期待は深まるばかりだ。100を突破しただけで自分の制御下に置くことすら大変だったというのに200を突破してしまったのならそれは長時間の特訓が必要だろう。
だが多分このゲームはAGIと動体視力が連動していると思われるので幾分かは制御がやりやすくなるはず。
じっくりともう一度ステータスを見る。そしてあることに気づく。
「ねぇ、この職業の横に書いてある数字って何?」
『えっとそれはねー、職業のランクアップのためのものだよ。例えば騎士だったら護衛依頼を何回か完了させるみたいな感じだったはず。基本的にレアな職業ほどランクアップは難しくなるよ。』
「っていうことは、私の場合は…?」
『むむむ…私も唯一職業についてはあまり知らないしね。だけど二つ名持ちを倒すことに特化した執行人なら倒した二つ名持ちの数なんじゃない?今まで倒してきたのはベルセルクとイプシオン、そしてノトスでしょ?』
「それかも!ミリィって頭いいんだね。」
『ふふん!もっと褒めるが良い!』
ミリィのお陰で私はあと2体二つ名持ちを倒せばよいとわかった。だけどなー、なんか一番最初に戦ったときと比べて二つ名持ちってすっごく強くなってる気がするんだよね。多分今の私だったらベルセルクとか一撃で倒しちゃうだろうし。
もしかして二つ名持ちの強さって戦っている相手に応じて変わるのか?流石にそんなことはしないだろう。というか一々戦っている相手のステータスを鑑みて強さを変えていたら処理が追いつかなくなるときもあるはず。ってことは初心者向け、ヨルムンガルド周辺のエリアだけは二つ名持ちが弱体化されているということなのかもしれない。
そんなこんなでステータスを割り振っていたら1時間ほど経過していた。
「おいアインの嬢ちゃん。今から昼飯の時間なんだが一緒にいかねぇか?なんていうかびゅっふぇ?みたいなやつらしいぞ。」
ドアの向こうからドルヴェラクにご飯に誘われる。このままスキルも作りたがったがそれは昼ご飯のあとでいいだろう。疲れて少し重い足を動かしてビュッフェの会場へと向かった。




