第二十三話 ジョーヌ防衛戦 其の三
残るメンバーはgoki、ケイン、アリア、たくみ、くず鉄さん、そして私の6人。この中で遠距離攻撃をできるのは弓使いのたくみのみであり、近接攻撃はケインと私しかできない。タンクであるくず鉄さんもノトスの攻撃に必死に耐えようとしているがいとも簡単に吹き飛ばされている。
じゃあ波状攻撃をしたらいいじゃないかと思うが私のAGIが早すぎて周りの援護が間に合わない。その点で言えば先程死んだ髭爺は私にも援護ができていたため凄腕だったのだろう。しかし、どれだけ攻撃を与えても回復されてしまう現状、このまま考えなしに攻撃を仕掛けるわけには行かない。紅蓮刃・朱雀にはゲージがあるため装備スキルを使うたびにゲージは減っていく。生憎通常のスキルを用いない攻撃であっても炎をまとっているため少しはダメージは与えるようだがそれも雀の涙ほど。決め手にはならない。
現状の問題点としてはノトスが纏う風の防護をどのように突破するのかということだ。ノトスに風の防護がある限りちまちまとダメージを与えることは不可能であるためだ。
『このままお前らに構うのもいいがな、我が主の命令の通りジョーヌを破壊しよう。『陽炎』。』
ブワッと熱い熱風が吹き荒れ、空気が熱のよって揺れる。ノトスの姿が徐々にブレていきついに2つになった。
「分身か!」
ノトスが行ったのは自身の分身の召喚。流石に完璧にスペックを引き継いでいるわけではないだろうが強敵には違いない。そしてノトスは自分の体を丸め、エネルギーを一点に集めている。先程の風の槍のような攻撃を行おうとしているのだろうが、時間のかけ方が段違いだ。もしこれをジョーヌに撃ち込むとしたら…
【モンスター強襲 交易都市ジョーヌ防衛戦をしているすべてのプレイヤーに向けて】
亜神の力を持つ南風のノトスが主人の命令に従って交易都市ジョーヌを破壊しようとしています。この攻撃が行われるまでの10分間でノトスの攻撃行動を止めてください。
尚、モンスター強襲 における被害などのバックアップは行われることはありません。
運営からの直々の指令、つまりノトスの攻撃を止めなければジョーヌが滅びるということだ。本体のノトスはこちらに手を出さず、ひたすらエネルギーを集め続けている。ということはあのエネルギーをどうにか破壊できればやりようがあるんじゃないか?
「みんな!私達が狙うのは本体が集めているエネルギーの塊!それを防ごうとしている分身体を早く倒そう!」
「おう!」
「どうやらあの分身には風を纏わせることはできないみたいだ。っていうことは僕達の攻撃も通るっていうことね。」
goki、ケイン、たくみが一斉に分身に攻撃を浴びせる。いくらなんでも分身に回復能力をもたせるだなんてことはしないはず。こちらも切り札を使うしかない。
「居合・紅蓮抜刀!続けて炎熱・灼陽!」
最初の振り抜きでノトスの分身体の前足を切り落とし、防御無効化の一撃で分身の首を切り落とす。前足を失いバランスを崩した分身が倒れる。
グルワァァ…
分身が一気に霧散していく。まるで初めからそこにいなかったかのように。
『陽炎』
本体ノトスがまた再び分身を作り出す。もしかして無限に作り出せるのか!?
「ちっ、このままじゃ埒が明かないぞ。」
「僕達にアインちゃんと同じぐらいの強さがあればこっちで分身の対処も可能なんだけどねぇ。」
「アインはそのまま本体の方に行ってくれ!こちらは僕達で足止めする!」
彼らで分身を倒すことは少し難しいだろう。良くて1,2分の足止め。無駄死ににほかならない。だが私がここで本体ノトスが行おうとしている攻撃を止めるほうが大切だろう。彼らには悪いがここは…
「ちょぉっとまったー!その足止め俺達に任せてくれないか?」
謎の声が聞こえる。よく目を凝らしてみると遠くに何百人者人だかりが見える。あれ、もしかしてあの集団にいるのは髭爺か?
「死んでリスポーンしたらジョーヌにたくさんのプレイヤーがいてな、そいつらに今の状況を説明したらぜひいかせてくれって言われたからな。ということでプレイヤー集団約300人助太刀だぜ!!」
どうやら髭爺がプレイヤーを集めて連れてきてくれたらしい。このタイミングでの人材投入はナイスすぎる。
「髭爺!今みんなの目の前にいるのはノトスの分身体で死んでもすぐ作り直される。倒し方は普通のモンスターと同じ。こっちに分身の攻撃が来ないように足止めしといて!」
「了解!アインの方に何人か送ったほうがいいか?」
「できれば高火力の人、そのノトスの分身体の体を一撃で切り落とせるような人がいたら送って!」
「そんなやつお前しかいねぇよ!いや、いないぞ!でももしいたら送ってやる。」
本体のノトスの方に走って向かう。残り時間を確認した感じ残されているのはあと7分ほど。そして残りのゲージは85%。ノトスの攻撃を防いでハイ終わりっていうことにならなそうなことをふまえるとゲージは50%ほど残していたいところ。
本体の側に近づくとさっきの風の槍など比べにならないほどのエネルギーが渦巻いていた。中心部にある核と思わしきものは怪しげな紫色の光を放っていて、立つことも少し難しくなるほどだ。
とりあえず離れた位置から焔閃・紅羽を放つ。紅に染まった刀身から放たれる飛剣がエネルギーの核に当たる。
【超過理力結界破壊進捗度 3%】
親切なことにどれだけ壊せているかがわかるようになっているようだ。というかこの超過理力結界っていうやつ硬すぎだろ。分身体ノトスぐらいだったら軽く切り裂けている攻撃なのにたった3%って。これを私一人でやるのは少々骨が折れる。というか先にゲージが無くなってしまうだろう。この妖精大剣レーヴァテインはゲージが無くなるとナマクラとなってしまうため無闇やたらにゲージを消費することは避けたいところ。
「プレイヤーの皆さん!私の攻撃でも少ししか傷がつかないめっちゃ硬い結界があるので壊すのに手伝ってくれませんか?」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
私の呼びかけに応えて多くのプレイヤーがこちらに来る。ふと分身の方を見ると100人ほどのプレイヤーたちで動きを抑え込めているらしい。あちらにいた余剰戦力が一気にこちらに投げれ込んできて結界に各々攻撃を浴びせる。
「かった!この結界何なんだよ?」
「というかこのクソ硬結界を一撃で3%も削れるアインちゃんって…」
「みんな攻撃の手を止めるな!残り時間は3分を切ってるぞ!」
総勢200名ほどのプレイヤーたちの猛攻を受けてみるみる超過理力結界破壊進捗度が上がっていく。50%、60%、70%、80%、90%……残り時間あと30秒というところで90%を達成。
『矮小な存在が群れようと、強大な一個体に勝つことなどはない!』
ノトスの目が怪しく光り、攻撃の手が止まる。これは硬直か!叫び声を用いないものもあるだなんて。それに制限時間がギリギリまで迫っている状態で硬直を入れてくるのはあまりにもコスい。
ドンッ!
弓矢で撃たれた事による衝撃で体の自由を取り戻す。これはたくみの矢か!
「ありがとう!」
回りにいるプレイヤーを叩きながら深く膝を曲げる。精神を統一して力を込める。紅蓮刃・朱雀の装備スキルとは決められた型に沿って攻撃を行うもの。しかし、それはプレイヤーの脳裏に深く「行動」を染み込ませることで普段はできないような動きを可能にしている。つまりあくまでスキルとはプレイヤーの意志であり、細かな改変が可能だということだ。
私は腰をひねる。真横に振り抜くこの攻撃において腰のひねりによって爆発的な火力の上昇が狙える。肩の力を適度に抜き、振り抜きの際に邪魔をする抵抗をなくしていく。残り時間があと10秒切ったところでようやく攻撃を行う。
「炎熱・灼陽!!!!!」
横一文字の一太刀はすべての障害を破壊していく。
【超過理力結界破壊進捗度 100%】
『クソォォォォ!!!!』
ノトスのジョーヌへの攻撃を阻止することに成功した。
そして辺り一帯は一瞬にして消し飛んだ。
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