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Eclipse Horizon ―電脳世界で女子高生が「死の戦乙女」と呼ばれるに至るまで―  作者: 野兎
第一章 青天の霹靂

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第二十二話 ジョーヌ防衛戦 其の二

 妖精大剣レーヴァテイン、それは妖精が持つ凝縮されたマナを使用する武器である。元来妖精というのは度重なる魔法の使用などにより生まれる属性と意思を持ったマナの集合体。そしてレーヴァテインの使用に用いる妖精核というのは何十、何百という妖精を一つにまとめて凝縮したものであるためレーヴァテインの装備スキルは外付けのマナを消費していく。このゲージは時間経過とともに少しずつ減っていくうえ装備スキルを使うことでも減っていき、ゲージがなくなると一定時間の休止状態となる。

 レーヴァテインには属性の違う妖精核をはめることで形状が変化し、使用者がその形状に名前をつけることができる。なぜならレーヴァテインとは鍛冶師ドルヴェラクの作る至高の一振りであり特殊武器(ユニークウェポン)であるからだ。

 また、特定の武器種には武器専用のスキル、例えばレーヴァテインであれば妖精大剣術というスキルが与えられ、このスキルの熟練度を上げることで装備スキルを新たに解放することができる。熟練度とはレーヴァテインを使用した戦闘の質と量によってあげることができる。


 妖精大剣レーヴァテインを説明するのならばこのようになる。なぜ私が今一度そんな事を考えているかって?そりゃ打開策がないからに他ならない。

 なぜこうなったかを5分ほど前からまた考え直してみる。



 『グッ、痛いぞ小童よ。このように我の体が削り取られることはいつぶりか…まあ良い、『神の御業(オールヒール)』」


 つい先程紅蓮刃・朱雀で切り落とした前足がみるみる再生していく。まるで何もなかったかのように。


 「欠損した部位まで治すことができるのか!アリアはできるか?」


 「いやここまでの回復は今の私ではできません。しかし相手のMPも有限、そう何回も打てるものではないでしょう。」


 「だと言ってもな、いつまでもおれっち達が耐えきれるとは限らねぇぜ?」


 「しかしノトス相手に短期決戦するのは難しそうですね。おそらく先に相手の回復リソースを潰さないと。」


 アリア、ケイン、gokiが順に意見を述べる。たしかに現状じゃそもそも有効打が一つしかない上回復されてしまうという最悪の状況。あの身に纏う暴風をなくすことができれば…そうだ!

 ずっとノトスに向かって魔法を放っている人に声を掛ける。


 「髭爺さん、水魔法と雷魔法って使えますか?」


 「一応全属性の魔法使えるけど、どうしたんだ?」


 「ノトスが纏っている風に大量の水をかけて雷をぶつけたら感電するんじゃないかって思ったんですよ。」


 「水が帯電して持続的にダメージ…行けるかもしれない。みんな!ぼ、わしがこれから一気に畳み掛けるからそれに合わせて攻撃してほしい!」


 髭爺が右手と左手を掲げる。もしかして俗に言う同時詠唱というものだろうか。魔法の同時使用など頭が割れそうだが大丈夫なのか?


 「我求めるは水、そして雷。『ウォーターハンド』『サンダーボルト』!」


 地面から出てきた水の大きな手がノトスの身体全体を多い、その濡れた体を狙って紫電が走る。


 ドゴォォォ!!


 轟音があたりに鳴る。想像以上の衝撃だったが耐えることができた。あたりに土煙が舞い上がる。風が吹き土煙が晴れようとして――


 『神の御業(オールヒール)


 そこには回復魔法を使い五体満足の状態でいるノトスがいた。


 「なんて強さなんだ……それにあの回復能力、ほんとに有限なのか?」


 渾身の魔法が効かなかった、いやなかったことにされた髭爺がそう呟く。いかにしてあの風の障壁を破ったとしてもその先にあるのは圧倒的回復力による無効化。普通に考えたら回復リソースがすぐつきそうなものだが無尽蔵かのように使い続けるノトス。

 ノトスの回復魔法にからくりがあるのには違いない。なぜなら純粋なキャラパワーだけのモンスターがこのゲームに存在するように思えないからだ。


 『お前らがどれだけ攻撃しようが我には一切聞かぬわ。死の咆哮(デスショック)!!』


 耳をつんざくような高音がノトスから放たれ、体の自由が効かなくなる。周りを見るとみんなも同じように動きを止めている。くそっ、範囲型の硬直か。このままだと全員攻撃を食らってしまう。


 『まずは我の足を切り落としたものからにするか。刀を持った少女か…我は女子供にも容赦がないからのぅ、ためらわずにいかせてもらおう。風の槍(ウィンドランス)。』


 眼の前に莫大なマナの奔流を感じる。圧倒的存在感を得ていく風の槍のマナが吹き荒れていく。


 「初心者が使うような技でも、ここまでマナを込めたらこれほどおぞましいものになるんだ…」


 巨大な風の槍を目にした髭爺が驚愕の目をする。


 『死ね!小娘よ!』


 ノトスが風の槍をこちらに向かって高速で飛ばしてくる。眼の前に迫る超巨大な風の槍、硬直が続く今このまま直撃を免れることはできないかもしれない。そう思い目をつぶった。


 ドンッ!!


 体に少しの衝撃が走り髭爺に弾き飛ばされる。体に自由が戻り咄嗟に風の槍から逃げる。


 「逃げろ!現状ノトスに攻撃できるのはお前だけだ!ここで攻撃の要がなくなるのはまずい!」


 その言葉を最後に髭爺の姿が風のやりに巻き込まれて見えなくなる。立ち上った土埃がなくなるとそこには髭爺の姿はなかった。


 「死んだか、生憎セーブポイントにしていたジョーヌから近いとはいえ戦線復帰まではまだ時間がかかる。それまでは耐え忍ばないと。」


 「ケイン、これからの段取りを考えよう。とりあえず攻撃を続けて相手の回復リソースを減らし続けるのはもちろんなんだけど、いつまた同じように不可避の攻撃が来るかわからない。」


 「アインの言う通りだ。でもさっきの硬直は衝撃を受けると解除されるらしいから避けるのはまとまっていたらできるかもしれない。それにあれだけ強大な魔法を使うのだから消費もあるに決まってる。いつかかならず訪れるマナ切れに備えよう。」

 

 ケインの言うことには一理ある。だが、この「マナ切れ」が訪れるという事実が本当にあるかどうかがわからない。驚異的な威力と回復力の魔法を何発使ってもなおマナ切れの気配すら見せないノトス。もし本当にリソースが尽きないとしたらこの強襲(レイド)で勝つことは…


 「み、みなさん!もしこのモンスターがジョーヌまで到達すればどれだけのNPCに被害が出るかわかりません。なので一丸となって頑張りましょう!」


 唯一の回復食であるアリアがそう叫ぶ。確かにノトスがジョーヌに進行を開始すればドルヴェラクはもちろんほかのNPCにも被害は出る。なんせこの強襲(レイド)の名前は「交易都市ジョーヌ防衛戦」。もしここでプレイヤーが持ちこたえられなければジョーヌに甚大な被害が出る可能性は大いにある。

 朱雀を強く握りしめながらゲージを確認する。わかりやすいことにどれだけゲージがあるか数値でわかるようになっており、今は残り96%。また、現在使える装備スキルは5つ。

 〈紅蓮刃・朱雀 装備時の追加装備スキル〉

 ・居合・紅蓮抜刀

  『消費ゲージは3%、高速で紅蓮刃・朱雀を振り抜きながら前に突進する。使用することによって他のスキルを使用可能となる。』

 ・焔閃・紅羽

  『消費ゲージは3%、炎をまとった斬撃を飛ばす飛剣。』

 ・紅蓮・灰燼貫

  『消費ゲージは5%、紅蓮刃・朱雀を納刀時に任意で発動可能。抜刀してから発動するまでに消費したゲージに伴ってステータスを強化する。』

 ・炎熱・灼陽

  『消費ゲージは5%、紅蓮刃・朱雀を真横に振り抜く技。敵の防御力を貫通する。』

 ・緋刀・暁ノ一閃

  『消費ゲージは10%、紅蓮刃・朱雀を用いた神速の居合、減ったHPに応じて速度上昇。』


 これらを利用して私はノトスを倒し切る。それしかないのだ。

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