第二十話 不穏な気配
ドルヴェラクを狙うモンスターの群れを相手にすること早2時間、ようやくモス湖に到着した。途中「任務だからここまで狙われるのか?」と思ってしまいこんなことなら一人でいったほうがいいかもと思ってしまうこともあったが任務の成功報酬がもらえるのなら致し方ないと思うことにした。
しかしモス湖についた今、残っているのは眼前に広がる広大な樹海「ソルジェ樹海」のみ。ソルジェ樹海についてミリィに聞いてみると、
『うん?ソルジェ樹海は何かって?ソルジェ樹海はね猿が多いエリアなんだ。フォレストモンキーとかは樹海に生えている木々をうまく使って立体戦法を取ってくるんだ。ある意味ジョーヌに行く関門かもね。』
という答えが帰ってきた。木々を使った立体戦法は攻撃が面ではなく線の私と少し相性が悪い。それにドルヴェラクを護衛するという観点からは後ろから回られて奇襲されてしまうということがうざったい。万が一ドルヴェラクが死んでしまうことを防ぐため早く樹海を抜けたいので少し小走りになる。
「フォレストモンキーは立体戦術を使ってくるので私達と相性が悪いです。なので少し小走りでソルジェ樹海を抜けましょう…っては??」
ふとドルヴェラクの方を見るとアダマンタートルに近づこうとしていた。
「いや、素材の王とも呼ばれるアダマンタートルの姿をひと目見たくてな。何、アダマンタートルの真髄はあの堅牢な甲羅、こちらから攻撃しなければ大丈夫だろう。」
「何言ってるんですか?アダマンタートルの本当のヤバさは…爆破攻撃です――!」
バンッッ!!
アダマンタートルの爆破を受けたドルヴェラクが宙を舞う。受け止めてみると死んではいないが気絶していた。
『好奇心は身を滅ぼすってことだね。それでこのドワーフどうするの?』
「そりゃ一応ジョーヌまで持ってくる他ないじゃん。一応ドワルニアの中でも地位があったらしいし。」
ズルズルとドルヴェラクを引きずりながらソルジェ樹海の中を抜ける。道中で数匹のフォレストモンキーの群れと出会ったが、難なく倒すことができた。特徴である長い腕を使って木につかまり、高速移動をしながらの連携戦術。ドルヴェラクの護衛をしながらだったらたしかに大変な相手だったかもしれないが気絶させてしまった以上動かない護衛対象を守ることはいとも容易い。フォレストモンキーの胴体に拳を叩き込んで討伐するのはとても早かった。
ソルジェ樹海はおよそ1kmほど続く長い樹海だったがフォレストモンキー以外のモンスターと出会わなかったためすぐに抜けることができた。ソルジェ樹海を抜けた先には王都と並ぶ交易都市、数々の飛行船が降り立つ場であるジョーヌがあった。
ジョーヌの町並みは一言で言うと協会メインの街であり、いたるところに協会のシンボルのマークである羽のマークが存在している。町の中央には巨大な巨神像と大きな教会が鎮座している。
「きれい…」
『おごそかって感じだね。』
宗教の厳格さと人々の陽気な雰囲気が入り混じっている街の雰囲気に少し呑まれつつ早速ジョーヌの城門をくぐる。
「こんにちは、旅の方ですか?交易都市ジョーヌへようこそ!」
城門の中には水晶玉と衛兵が立っている。この水晶玉について聞いてみると悪行を行った人をこの街に入れないためのものであると言われた。ゲーム的に言えば「PKするような奴は街の機能も使わせねぇよ!」っていうことだろう。
ジョーヌは交易都市というだけあっていろいろな種族が入り混じっておりドワーフだけでなくエルフ、獣人、はたまた鬼人などもいた。それに宗教施設が幅を利かせており街の中心にある巨神像は9体、協会は巨大な礼拝堂らしい。
このゲームにおける宗教が保つ意味はまだ知らないので気が向いたら協会に行くのもいいかもしれない。
「ドルヴェラクさん!起きてください。もうここはジョーヌですよ!」
「……ん、ん?ここはジョーヌか。あれ?俺は確かアダマンタートルを観察していたはずが…」
「だからそのアダマンタートルに吹き飛ばされたんですよ。当たりどころが悪ければ即死ですよ?」
「マジか…アダマンタートルに攻撃能力があるだなんてどの文献にも乗ってなかったはずだが…もしや、突然変異か?いや、攻撃能力を持つ個体にあったものは全員生きては帰れなかったということなのか?」
ドルヴェラクが早口で考察を述べていく。もうこの人は鍛冶師より考古学者か何かにでもなったほうがいいんじゃないか?こんなにアグレッシブな鍛冶師など他に存在するのだろうか。
「おーい、ドルヴェラクさーん?先に飛行船の日程を取りましょうよ。明日にはドワルニアに行きたいですよ。」
「おぉ、そうだったな。任せておけ、私がお前さんの分までチケットを買っておいてやろう。代金はいい。」
「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせていただきます。まだ昼ぐらいなので夜になるまでソルジェ樹海でモンスターでも倒しておきますよ。宿のことは気にしないでください。」
「ああ、了解した。」
ドルヴェラクとの旅も明日の飛行船に乗るまでは一旦止まる。そうならば早くソルジェ樹海に向かってフォレストモンキーの素材をいくつかもらっていきたい。最近ステータスを割り振っていないがフォレストモンキー程度今のままでもいいだろう。
そう思っているとミリィがとても不安そうな顔をしてこちらを向いてきた。
『あ、アイン…早くここから離れないと…死ぬよ?』
グルゥゥワァァァァ!!!!!!!!
【モンスター急襲 交易都市ジョーヌ防衛戦 が開始されました】
え?モンスター急襲?それは一体何なんだ?
周りを見渡してみると同じように何も無い空中を眺めている人が大勢いた。おそらくあれはプレイヤーなのだろう。プレイヤー以外にシステムアナウンスが見えるはずがないのだから。
「モンスター急襲だってよ!どんなモンスターが来るんだろうな。」
「もっと先の街にいるって言われてた二つ名持ちモンスターって奴かもしれない。」
「それよりこれってどういうこと?攻略最前線の人たちでも経験してないものじゃないの?」
「フラグは何なんだ?人口?この街を通過した人の人数か?それともプレイヤーの総数か。」
あたり一面でプレイヤーと思わしき人々が次々と喋りだす。ふと、ミリィを見てみると。
『だめだよ。あの存在は今のアインたちじゃ無理…なんで?もっともっと後にしか《第一級秘匿事項》たちは干渉してこないはずなのに…』
ミリィが少しパニックを起こしている。今までこんな状態になったのは…ジグルドと遭遇したときか。つまり、今から来るのはジグルドと同等かそれに近い存在なのだろう。脅威であることには変わりない。
まだモンスターの姿が見えないうちにステータスの編集を行う。現在のレベルはワイルドボアとフォレストモンキー、そしてジョーヌまでの護衛任務中の大量のモンスターのお陰で35となっている。この際VITに振れるBPがないので防具自身の防御に任せる。HPは少し上げて残りをMP、STR、AGIに割り振っていく。STR、AGIは言わずもがなだが装備スキルでMPを消費する関係上MPを上げるのは必須。
《アイン・人族》
レベル:35
保有SP:120
保有BP:0
HP:44
MP:95(135)
STR:145
AGI:95(135)
VIT:1(201)
装備品
・星祓いの妖面
・風纏の獅子
【スキル】
・天翔龍
〈職業スキル〉
・断罪執行
・処刑宣告
・月下葬送
〈装備スキル〉
・星の位相
・風弾
圧倒的STRとAGIを手にしてしまった…MP、AGIは補正無しでも100近くになり、STRに関しては補正無しで150に迫ろうとしている。急な速度の変化に慣れが必要だろうが使いこなす前に先程のモンスターが到着するだろう。一つ心惜しいのは道中で集めたスキルルビー、SPを利用したスキル作成をする時間がなかったことだ。
ふと見てみるとプレイヤーが城門付近に集まっていたため近づいてみる。
「おっとと、えーっとここはさっきの急襲に対抗するためのメンバーなの?」
今までにないほど急激に上がった速さに足がもつれながらも近づく。
「ああ、そうだ。一応聞くけど君もプレイヤーだよね?」
「うん、もちろん。私はアイン。」
「良かった、このゲームではNPCとプレイヤーの違いが分かりづらいからね。一応噂ではインベントリを使うのはプレイヤーだけだ!って言われてるけど収納魔法とか普通にありそうだし。ああ、僕はケイン。一応ここでまとめ役してるんだけどちょっと荷が重そうでね。君のレベルは?」
「私は35だよ。」
「「「35!!!!」」」
一気に周りから羨望の眼差しで見られる。もしかして私のレベルの上がり方は異常なのだろうか。
「すごいね、そんなレベルならもしかして君も攻略最前線組かな?」
「こうりゃくさいぜんせん?なにそれ?」
「ってことは違うのか…攻略最前線組っていうのはこのゲームにおいてトップを行くプレイヤーたちのことだよ。もうすでに3個先の街まで行っている人までいるらしいよ。」
「そんなに早く行く人がいるだなんて、すごいな。」
「いやいや、君も十分すごい―――」
ガルゥゥワァァァァ!!!
城門側を見ると天にまで達しそうなほど巨大な体を持つ純白の獅子がいた。
【モンスター急襲 特異二つ名持ちモンスター 南風のノトスと接敵しました】
こうして激戦の火蓋が切って落とされた。
すいません、昨日寝込んでしまい毎日更新ができませんでした。体調が回復したので今日は投稿します。
皆さんの応援が執筆の励みとなります。もっと読みたい!続きが気になる!面白かった!と感じたらブックマークと高評価をお願いします。




