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Eclipse Horizon ―電脳世界で女子高生が「死の戦乙女」と呼ばれるに至るまで―  作者: 野兎
第一章 青天の霹靂

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第十八話 猪の狩猟番

 一つ嬉しい誤算があった。それは地図を確認したいときにわざわざ「ガイア観測地図」を開かなくても良くなったということだ。どうやら一度閲覧したことのある書物、特に地図はウィンドウを開いたときに右上に現れるミニマップに統合されてミニマップを拡大することで見ることができるらしい。ちなみにウィンドウを開いたりミニマップを拡大したりするのは意識するだけでいいので戦闘中でも十分扱うことができる。


 『地図を手に入れたことだし次は何するの?』


 「食品は後回しにしていいかな。最悪当日の朝に買えばいいだけだしね。ということでこれからはモンスターを倒していくことにします!」


 『おぉぉ!!!で、何を倒すの?』


 「そりゃもちろん強そうなやつよ。あ、アダマンタートルみたいなバケモノじゃなくて手頃な強さのやつね。体感で言ったらゴールデンウルフの少し強いぐらいのやつがいいな。」


 『むむむむむ、手頃な強さのモンスターでここらへんにいるのは……あ!一つあるよ!それは大きな体を持っていて固くて、それでいて力が強いの。』


 「それって…?」


 『ワイルドボアだよ!たしかアルメリア平原の奥の方にいたはず。行ってみない?』


 「了解!じゃあワイルドボアを蹴散らしに行こう!」


 『おー!!』


 こうして私はワイルドボア狩りに行くことにした。アルメリア平原に行く道中に私はミリィにワイルドボアについて聞いた。いわく、ワイルドボアというのは獲物を見つけたら直進して行くという習性があるらしい。直進する間はなぜか驚異的なスピードを出すことが可能であり、しかも急な方向転換も可能だという。よくあるような直進してくるやつをうまく木にぶつけて撃退!なんていうのはありえないらしい。というか現実にそんなやついないしね。とにかく獲物を逃さない追跡力と強靭な肉体、そして圧倒的パワーを持ったワイルドボアはさぞかし強いのだと思う。

 そのような話をしながら私達はアルメリア平原に到着した。ここアルメリア平原というのは起伏がほとんどなく、見晴らしが良い平原であり初心者におすすめのスポットらしい。目を凝らしてみるとちらほらプレイヤーと思わしき姿が見える。薬草の採取であったり弱いモンスターを倒していたりと和気藹々としていた。この先に手を出してはいけない黒い亀がいるということも知らずに。

 というのは冗談であるがたしかに私も他のプレイヤーと一緒にこのゲームをプレイしてみたいなと思う。ここまで自由度が高いゲームであるならマルチプレイをするのも他のゲームと比べて一段と楽しいはずだ。いつか学校の後輩や友達でも誘って「Eclipse Horizon」をやってみようかなと思った。


 『あー!あそこ、あそこにいる赤いのがワイルドボアだよ!』


 遠くを眺めてみるとたしかにものすごい速さで移動する赤い物体がいた。平原を高速で駆け回るイノシシ。あの速さは余裕で私のAGIを超えているな…おそらく私が二つ名持ち相手に処刑宣告(ネメシス)でAGIを引き当てた状態でようやく並ぶか少し劣るかぐらいだと思う。

 そう考えていたらワイルドボアが私の眼の前に迫っていた。私のスキルの殆どは二つ名持ちがいる状態じゃないと使えないもの。であるがゆえにワイルドボア相手には天翔龍と断罪執行(ヴァーディクト)しか使えない。

 とりあえず戦闘開始時に使える断罪執行(ヴァーディクト)を発動。ワイルドボアの体のスピードが少し落ちる。それと同時に横にズレて攻撃を受け流す。しかし「猪突猛進」という言葉が似合うこのモンスターは以外にも小回りが利くようで私に向かって攻撃をし直してきた。

 まずい――咄嗟の判断で剣を前に構える。そして一瞬の空白のあと大きな衝撃が私の体に来て、ワイルドボアから離れた位置まで一気に飛ばされてしまった。

 凄まじいな。速さは力というように高速で移動する物体というのはそれだけで脅威となりうる。それに加えて自分の数倍もの質量を持っているなら尚更だ。お陰で最初期から使い続けている無名の鉄剣がひび割れる。もうこの武器はなまくら以下の何者でもない。折れた剣じゃリーチ不足で攻撃はもちろん防御にも転用は難しいだろう。

 

 若干愛着が湧いていた破損した無名の鉄剣をインベントリにしまうとそこから新たに一振りの剣を取り出した。その名を「始まりの鋼鉄」といい量産型であるが耐久力とSTR増加の効果を併せ持つ序盤で多くのプレイヤーが使うであろう武器の一つである。せっかくヨルムンガルドについたのだからメインウェポンの品質強化に務めるのはある意味必至である。

 

 始まりの鋼鉄、鋼鉄剣を構えながら天翔龍を発動する。強化されたことでようやく並んだスピードを利用して剣を振る。しかし、隙があると判断したかのようにワイルドボアのすばやさのギアが一段階上がり私を食い殺さんと向かってきた。――それが罠であるということにも気づかずに。


 「グギャァ!!」


 星の位相(ステラ・レゾナンス)を発動し一瞬、わずか0.1秒ほどのみあたり判定が消失する。しかしそれだけ時間があれば十分。高速道路で対向車線の車が早く見えるように、とてつもない速さで互いに向かう者たちがすれ違うのはほんの一瞬。星の位相(ステラ・レゾナンス)の効果時間のうちに私はワイルドボアの体の中を通り抜ける。それと同時に当たり判定の消失から外れた鋼鉄剣が圧倒的スピードでワイルドボアの体を切り裂く。


 それだけでは足りなかったのか、HPが多いワイルドボアが起こった表情でこちらを振り返る。私に向かって牙を向けてくるがこちらに顔を向けた瞬間に目を狙って切り落とした。視覚を封じ、HPも削られたワイルドボアは最後のあがきかのように私に向かって巨体でタックルをしてくる。

 だが、息も絶え絶えで素早さも落ちている相手など私の相手ではない。

 

 向かってくるワイルドボアの足の腱と顔、そして心臓を狙って三連突きをする。耐久力と切れ味が鋭くなった鋼鉄剣はワイルドボアの硬い皮膚を突き破り的確に急所を突く。


 「ボ、ボアァァァ……」


 ワイルドボアが全身から血を流して地に伏せる。そして粒子状に消え始めてドロップアイテムが残る。ワイルドボアの皮とワイルドボアのスキルルビー。スキルルビーを集めることでより強力なスキルを得ることができる人族にとってこれは垂涎の品だ。

 ほかにドロップがないかをくまなく探して確認する。あたりに敵がいないことを確認すると安心してほっとひといきつく。


 「ふぅぅ、意外と手強かったなワイルドボア。」


 『でっしょぉ!でもアインなら勝てると思ったんだよね。それにー私の仮面のスキルを使ってくれたのも初めてだったよね?どうだった?』


 「まぁ、悪くはないんじゃない?色々と戦闘にも使えるし…」


 『やったぁ!』


 隣で喜ぶミリィを横目に時間を確認する。現在時刻は12時、アルメリア平原からヨルムンガルドまで15分ほどかかることを考えると18時には帰りたいところ。そして今の戦闘でかかった一体のワイルドボアあたりにかかる時間は20分。単純計算で18体は倒すことのできる予定だ。


 「良し、ミリィ。今日はあと19体ワイルドボアを倒すよ!」


 『了解、アイン隊長!!』


 それからアルメリア平原を回ること6時間、ワイルドボアの倒し方についてコツを掴んだのか30体も倒すことに成功した。

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