第十四話 超絶硬い亀がいるって言ったら信じる?
黄金の三日月で1泊、つまりEclipse Horizonをプレイして3日目。超重大で重要なことを思い出してしまった。それは、もう所持金がないということだ。このゲームではどうやらモンスターを倒すだけで勝手にお金がドロップするとかいう都合のいいことはないようだ。
「ねぇミリィ、手っ取り早くお金を稼げるモンスターとかいない?もう今日の分の宿代ないよ。というかアンドレにも借金あるし……」
『それなら任せて!えーっとヨルムンガルド周辺にいるお金を稼げるモンスター……うーん、強いけどいい?』
「うん、任せて!」
『ここから西にずっと行った先にある湖、その周辺にいるアダマンタートルってやつなんだけど……』
「アダマンタートル?どんなやつ?」
『まぁ一言で言ったらすっごく硬い亀かな。すごい強いんだけどめっちゃ儲かるから行ってみない?』
「まぁ、そこまで言われたら行ってみるよ。」
ミリィのアドバイスで金策の目処がたったが、聞いた感じ防御力に全振りしてそうだから今の剣のままじゃ無理だろう。ここらでちょっと武器を変えとくか。流石に街についたのにずっと鉄剣で頑張っていたしね。
ということで私達は再びドルヴェラクの工房へと来た。
「すいませーん、ドルヴェラクさんいますか?」
「ああ、俺だがって嬢ちゃん?どうしたんだ?」
「いやアダマンタートルを狩りに行くんですけどそれに見合った武器が欲しくて…」
「アダマンタートル!?お前さん死ぬ気じゃねえよな?あんな奴ら自殺願望のあるやつでもいかないぞ?」
「いや、私はまあなんというか死なないので。」
まあまだ一回も死んでいないんだけどね。
「嬢ちゃんは探索者ってことか。それならわかった、アイツらに挑んでも武器は死なねえってことだな。よし、好きな武器一つ持ってけ!」
「でも、代金は?」
「いい、これは投資なんだからな。二つ名持ちを軽々と倒し、アダマンタートルに挑もうとする。その熱い心を持つお前さんに期待してるってことだ。もし有名になったときも俺の工房に来てくれればそれでいい。」
「ありがとうございます!」
「いいんだ、気にすんな。それでどんな武器が欲しいんだ?」
「えっと、私は素早く動いて強力な一打をあたえるパワー系ですね。」
「それでったらこの篭手なんかはどうだ?第一アダマンタートルに斬撃は殆ど効かないが打撃は少しだが効く。こいつはすぐれものだぜ。」
アダマンタートルには斬撃は効かないのか。それに今のところ私は剣野スキルは得てない。それなら今のうちにいろいろな武器を試すのはいいことなんじゃないか?
「はい、その篭手でお願いします。」
「はいよ、つけ心地は行く道中で試してくれ。」
そう言うとドルヴェラクはまた作業に戻っていった。これだけ親切にしてくれた彼に報いるためにもアダマンタートルを倒してこよう、そう思った。
アダマンタートルが生息しているのは安眠の湖と呼ばれる城塞都市ヨルムンガルドとその次の都市である交易都市ジョーヌの中腹らへんに位置する湖だ。アダマンタートルは全長2mにもなる巨大な漆黒の亀で獰猛な目つきが特徴的である。アダマンタートルは2つの特性があり、1つ目は普段は眠っているが圧倒的な硬さを誇るということ。2つ目は安眠の湖に他の生物が立ち入ったときに強力な爆発を起こすということだ。
「ちょ、えっ?急に爆発しながらこっちに向かってくる亀がいるんだけど??これおかしくない?」
『だから言ったでしょ、アダマンタートルは強いんだって。』
「いやいや、これもう強いってレベルじゃないって!もう他の次元に行っちゃってるって!」
並の攻撃じゃ歯が立たず、近づくと爆発を起こしながらこっちに向かってくる。しかも回転しながらとてつもないスピードで。それにアダマンタートル自身は爆発でのダメージがまったくない。あんだけ周りの地面がえぐれているのに…これ無理ゲーでしょ。
実を言うとこのアダマンタートルとはゲーム的に見るとプライドばかり増長した初心者プレイヤーの鼻をぼっきぼきに折るためにこの最序盤の地に配置されているモンスターである。これから先のエリアに行くとコイツらをおやつ感覚で食いまくる化物が存在したりするということをそれとなく親切心で伝えてあげているのだ。ちなみにこれだけの強さを誇るのに二つ名持ちとならないのは二つ名持ちモンスターとはその種の中で異常に強い個体を指すものなので種全体が強いモンスターは適合しないからである。それに加えそのエリアに居るモンスターの中でという注釈がつくため二つ名持ちの強さもこの先に進むごとに指数関数的に強くなっていく。つまるところこんな最序盤の二つ名持ちを倒して調子乗ってるやついる?いねぇよなぁ?っていうことだ。
『これはさすがに…』
「運営の悪意をひしひしと感じるね。これ考えたやつゲームバランス考えてなくない?」
だとしてもだ、この亀たちを倒さないと今晩の宿代すら払えない。アダマンタートルの攻略が必要不可欠なのだ。試しにドルヴェラクにもらった篭手を付けてアダマンタートルを殴ってみた。この篭手は名を「英雄への拳戦」といい、着用中のSTRを50追加しつつ相手の防御力を一部無視する装備スキル「崩拳」を手に入れられる有用なものだった。だが、アダマンタートルの漆黒の甲羅にすべての攻撃が阻まれまともにダメージを与えることすらできなかった。
次に考えたのは爆発に巻き込ませる、いわゆる巻き添えだ。しかしいざ試すことでわかったことが存在する。それはアダマンタートル自身が爆破の影響を受けないのならば当然他のアダマンタートルにダメージを与えられないということだ。いちいち自分の歩くことで傷つく人がいるか?そんな人は存在しない、なぜなら自分に危害が及ばないほどの力でしか普段動かないからだ。アダマンタートルにとってあの爆破は歩行、いや爆破による推進力で動いているから歩行の補助扱いなのかもしれない。つまりアダマンタートルを爆破で倒すことはできない。
『こんなのどうやって倒すのー?硬い、強い、怖い、三拍子揃っちゃってるよ。』
「うんうん、そうだね。倒すどころか足止めすら無理じゃないかい?夢物語ってこういうのを言うんだね。」
『確かにこいつを倒せれば金になるんだけど、なぜ効果で引き取られるか考えたらわかったね。』
「そういえばアダマンタートルはどれぐらいで引き取られるの?」
『うーん、たしかね、5000万サリー!』
「え?5000万、本気で言ってる?」
『そうだよ、なんせ王国騎士団騎士団長とか、各ギルド長に配られるような鎧に使われるしね。』
「え、ってことは…アダマンタートルを倒せるのがいるってこと?」
『そうなんじゃないかな。そんなに多いとは考えられないけど、少しはいるんじゃない?』
恐るべし王国騎士団。あの不条理の塊のような存在を倒すことができるなんて。傷つかないだけですごいのに爆発だよ?どんだけすごいかって言ったら1秒に1回のスピードで周囲の地面を破壊する威力の爆発が起きるんだから。戦う身からすれば上から超高火力の爆弾が投下されながら戦うようなもんなだから。こんなの倒せっこないわー。
『えっと、他にも少しは稼げるモンスターいるけど探してみる?』
「うん…」
このあとミリィちゃんの指示に従ってゴールデンウルフ(二つ名持ちではない)を20匹倒してそのドロップアイテムを売り払って無事200万サリーを得た。
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