29-26 「楽しんで、楽しませて(後編)」
「ところで吹っ飛んだ方の恵斗どこ行った?」
「え、まさかの迷子?」
「あの辺でしょ。ちょっと取ってくる」
樹を置いてひょいひょいと恵斗が吹っ飛んでいった方向へと移動する奏さん。樹を置いて行ったってことは……もう戦闘はないと判断したってことで良いのかな。
「……遊んでくれる、の?」
「お?まぁ何の警戒もしなくていいところでならな。今は無理」
「そうだな。虚卵の中で遊ぶほどの強者じゃねえよ俺達」
俺も樹も鍛錬というか、手合わせ自体は嫌じゃないのよ。タイミングが悪かっただけで。これが布袋さんの街で発生してたなら満足するまでやり合ってたと思う、体力が続くかは別ですけど。
「言っておくが森がフィールドの俺は凄いからな?もうすんごい動き回るしドン引きするくらいテンション高いと思う」
「割といつもじゃね?」
「そんなことないと思うけど!?」
そんな俺普段からテンション高いか?ちゃんと戦闘中はクールに行こうと心掛けてるんですけど……心掛けてるだけでクールに出来てるかどうかは別です。たまにハイテンション過ぎて自分でも良く分かんないことになる。
「楽しみ!」
「おう。楽しみにしとけ」
無邪気に笑う恵斗。確かにこの感情表現の豊かさは赤毛玉っぽいな……。そんなこと考えてたら奏さんが戻って来たので全員視線を向ける。結構遠くまで吹っ飛んだんだね恵斗。
「はいこれ」
「そんな荷物みたいな……」
「持ち方がもう荷物扱いだ諦めろ」
ぺいっとほっぽり出された恵斗がぶつぶつ言いつつ立ち上がる。並んでみるとちょっと違うんだねこの二人。どっちも恵斗ではあるんだけどセコムの方が目つきが悪い。
「……満足したのか?」
「してない!」
「してないのかよ」
「してない、からまだ遊ぶ!今度は外で!」
「……そっか」
何だかとっても兄弟みたいな会話してんなこの二人。セコムの方の恵斗は本体の発言に少しだけ目を見開いた後、柔らかく微笑む。
「分かった。じゃあここから出るために戻ろうか」
「そうだね」
刀を二人で握ればセコムの恵斗は解けるように消える。少しの間微動だにせず目を閉じていた恵斗だが、やがてゆっくりと目を開けた。
「……パーフェクト恵斗?」
「おう」
「大丈夫?約束覚えてるか??」
「ここから出たら手合わせ、だろ?」
「どこまで記憶あんの?どっちも?」
「おう。どっちの記憶もあるよ」
「大分無邪気でしたけどそこんところどう思います」
「忘れてください」
即答かよ。別に良いと思うけどね無邪気でも。俺は良いと思うし多分かすみも微笑ましいものを見る目すると思うよ。なんならかすみは普段より喜ぶ可能性すらある。ほら赤毛玉時代のあれこれがある訳ですし。
「じゃああとは――――」
「ラリマーだね」
そうだね。ラリマーさんだね。あと地味に一志も行方不明継続中なんだよな……どこ放浪してるんだか。
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