29-25 「楽しんで、楽しませて(中編)」
恵斗の詰めてくる距離は俺が普段渡り合う距離より一歩近い。微妙に崩されるリズムをどうにか取り繕いつつ、一歩分の距離感を反復横跳びする。打ち込みが浅くなるから下がってほしい切実に、普段の恵斗の間合いが一歩分近いとか感じたことないから絶対これわざとですよ。
「つかこんだけ斬れるんだったらそりゃ虚卵も一発だっただろうな。納得したわ」
「そうだね」
「……もしかしてそれで暴れ足りなかった?」
「そうだね!」
そうか消化不良……!じゃあ最初の無気力っぽさってやる気低下状態だったってこと?やる気がないのに攻撃の狙いが的確だったのは動きが本能レベルで染み付いてるからなんでしょうか。これでフラグを立てなかったら大人しいままだった、とか言われたら完全に俺が犯人です。
「それで?もう大分暴れてると思うけど」
「楽しいねぇ!」
「まだやりたいってかバトルジャンキーめ」
人数的に不利とかそういうの一切考えてなさそう。実際この人数差でも互角だからな……どうにかして戦況をひっくり返したいとは思ってるが、戦い続けるためならいくらでも本領発揮する相手に為す術がない。じゃあどうするか?剣が駄目なら口を回すよ俺は。
「どうせならっ!!!もっと楽しいことをしたいと思わんか!」
「そうだねぇ」
「ぶっちゃけるとこの状況下で俺は本気を出せねぇ」
「?」
「俺は障害物が大量にある……森の中が一番強いんだよ」
嘘は言ってねぇぞ嘘は。実際育ったのが森だったからそういう場所の方が動きやすい。俺の言葉にじゃあ、と恵斗が動く前に言葉を畳みかける。
「お前はやっぱセコムが入ったら出て来れねぇの?恵斗に変わりはないけど普段の恵斗とは別?」
「別――――ではないけど、普段は違うねぇ」
「自分の意思では出て来れない?」
「そういう訳では……ない、ね?」
「じゃあ布袋さんの街で改めてやろうぜ。あそこなら設定次第でいくらでも変えれるし。お前だって本調子じゃない俺に勝ったところで嬉しくないだろ」
「……そう、だね?」
何かすっごい丸め込んでる気がする……!ゆっくりと戦闘意思がなくなっていく恵斗に、俺も慎重に言葉を選びながら会話を続ける。これひとつでも間違ったら即戦闘再開!になりそうでちょっと怖いです。
「あ、でももしかしてその刀が特別製とかある?外出たらお前が本領発揮できない?」
「そうだねぇ」
「それはちょっと困るな……ステラさん分裂できたりしない?無理?」
「それならその刀持って帰ればいいだろ」
「出来るの?」
「やります」
「さっすが樹!」
わぁい援護射撃。いつの間にか傍に来ていた奏さんと樹がちょちょいのちょいで恵斗が持ってた刀に勾玉を括りつける。良く分かんないがこれで現実世界にもこの刀を持って行けるらしい。もしかして最初から準備してました?
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