魔装使いがみんな、クルスみたいなバケモノじみた力を持っているとでも思ってるわけ?
遅い。
駆け寄ってくる山賊たちの動きを見て、最初に思ったのはそれだった。
最初に駆け寄ってきたのは四人。
俺とトニアに向かって、武器を振り上げて襲いかかってくる。
でもそれが、時間の流れを遅くしたかのように、ゆっくりとした動きに思えた。
横でトニアが、スッと動いた。
比較的、自然な動き。
彼女だけには、俺の体感と大きく隔たりのない速度で、時間が流れていると感じた。
トニアが手にした二振りの剣が閃く。
あっという間に、二人の山賊が切り捨てられた。
トニアの剣は、何か柔らかいものでも切るように、山賊たちの体を斜めに深く切り裂いていた。
二人の山賊は、悲鳴と血しぶきをあげて倒れた。
それを見ていた俺は――つまり、よそ見をしていた。
でも、そのよそ見が、致命的な何かになりうるわけがないと、どこか確信していた。
大人が幼児の戯れを、本気で恐れることがないのと同じように。
向かってきたうちの一人は、よそ見をしたまま盾でぶん殴った。
するとその男は、猛牛の突進でも受けたのかという勢いで宙に舞い、きりもみしながら数メートル吹き飛んでいった。
一方、もう一人の山賊が振り上げた戦斧は、俺の肩口へとたたきつけられた。
ガンッ、という音がして、俺が身につけた鎧の、肩当ての部分にぶつかる。
「なっ……!?」
山賊が驚きの声をあげる。
両手持ちの渾身でたたきつけたのであろう斧の刃が、俺の鎧を断ち切ることはもちろんなかった。
それどころか、斧の刃の一部が、砕けて欠けていた。
そうして俺の目の前には、斧を振り下ろしたままの姿勢の男がいる。
そして俺の右手には、剣がある。
簡単だった。
俺は剣を振るい、目の前の男の両腕を切り落とした。
「うぎゃあああああああっ! 腕が、俺の腕があああああっ!」
叫ぶ男を無視して、残る二人の山賊のほうに向かう。
しかしそのときには、そこにすでに駆け込んでいたトニアが、その剣で山賊のリーダー格の男の心臓を貫いていた。
「がはっ……ば、バカな……」
リーダー格の男は、怨念の込められた手をトニアへと伸ばすが、トニアはさっと後ろによけて、男の手を自らの体に触れさせることすら許さなかった。
男は前のめりに倒れ、そして動かなくなった。
そうして、残るは一人。
「ひっ、ひいっ……!?」
その気弱そうなひょろい山賊の下っ端は、悲鳴をあげて背を向け、一目散に逃げていった。
それを目で追いながら、トニアがふぅと一つ息をつく。
「ま、彼は臆病そうだし、追いかけることもないでしょ。足を洗ってくれるといいけどな」
ほかの山賊たちも、みんな動かなくなるか、逃げ出すかしていた。
戦闘が終了したところで、トニアは「リムーブ」とつぶやく。
するとトニアの手にあった二本の剣が、バンと弾けて光の粒となって消えていった。
俺もそれを真似する。
俺の手にあった剣と盾が、トニアの剣と同じように光の粒になって消え去った。
「それにしても……」
トニアは、俺が盾で吹き飛ばした相手のもとに歩み寄って、その姿を見て「うわぁ……」と引いた顔をする。
そこには、吹っ飛んだ後さんざんっぱら地面を転がり、ボロ雑巾のようになった山賊の姿があった。
「……着装状態のクルスって、とんでもないパワーだね。何これベヒーモスの体当たりでも受けたの?って感じだし……。ナイト系の魔装って、どっちかっていうと防御力がウリのはずなんだけど、パワーだけとってもこれだもんなぁ……」
「ん……? トニアでもこのぐらいできるんじゃないの?」
「いやいやいや! 何言ってんの、無理だし。クルスは魔装使いを何だと思ってるの。魔装使いがみんな、クルスみたいなバケモノじみた力を持っているとでも思ってるわけ?」
えーっと……ちょっと思ってた。
実際はそんなでもないのか。
「もう、いじけたくなってくるよ……。ボクだって、魔装使いの間でも一目置かれるぐらいの強さのはずなのに……」
トニアが何か、地面にのの字を書いてしょげていたので、俺はとりあえずフォローの言葉をかけてやる。
「ん、まあ、なんだ……ドンマイ!」
「うわあああん! クルスのばかあああああっ!」
よく分からないけど泣かれた。
乙女心っていうのは、難しいもんだな。
魔装データ
魔装『ソードマスター』
魔装ランク:B
▼ステータス
パワー :B
スピード :A
テクニック:A
アーマー :B
マジック :C
レジスト :C
▼武装解放
双剣形態(基本武装)
大剣形態
魔装『ゴッドナイト』
魔装ランク:S
▼ステータス
パワー :S
スピード :A
テクニック:S
アーマー :SS
マジック :A
レジスト :S
▼武装解放
長剣形態(基本武装)
ランス形態




