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ワイバーン退治

 近隣にワイバーンが出現したという村は、王都から二時間ほど歩いた場所にある。

 俺は、騎士アランと兵士四人に付き添い、その村へと向かった。


 なお、アランは全身に板金鎧プレートアーマーを身につけ、馬用鎧バーディングを装備した軍馬にまたがっている。

 また軍馬には馬上槍ランスがくくりつけられていて、さらにアランは腰に剣をはき、背には凧型盾カイトシールドを背負っている。

 まさに完全武装という様相だった。


 一方、兵士たちは徒歩で、鎧はろうで煮固めた革鎧を装備している。

 武器に関しては、四人のうち二人は長弓ロングボウ小剣ショートソードを、別の二人は槍と方形盾ホプライトシールドを身につけていた。


 そして、おそらく最も異様に映るであろう格好をしているのが、俺だった。


 アランと同様、軍馬に跨っているが、俺はアランのように鉄板で全身をガッチガチに覆う鎧を着ているわけではない。

 むしろ、身につけているのは支給された上等の衣服ぐらいのもので、鎧も武器も装備していない、ほぼまったくの無手だ。


 一応、身なりは騎士らしくということで、水浴びをしたあと、フェティス騎士団長の手配で侍従に髪とか髭とかいろいろ整えてもらったのだが、それでどうにか騎士らしく見えるのかどうなのか。

 侍従の女性やフェティスは男前だと言っていたが、お世辞か分からないので何とも言えない。


 にしてもまあ、何ていうか……俺ってば、いいご身分だなと思う。

 フェティスによると、正式に騎士の地位とか何とかを与えられるのは実はもうしばらく後で、これからいろんな方面にごねごねした交渉をするらしいが、「見た目だけでもそれっぽくしておけば、だいたいそう見えるもんよ」というのはフェティスの談である。


 ちなみに、部隊の指揮はというと、これはさすがにアランに任せている。

 その点に関してはまさしく平民でしかない俺よりも、一日の長があるアランに任せたほうがいいに決まっているし、アランも当然そのつもりのようだった。


 ただ、アランと俺は名目上、同じ立場ということで、俺にはアランからの指示命令に従う義務はない。

 事実上、アランの指揮する部隊、プラス俺、という感じだった。


 さて、一行が村にたどり着くと、まずは村の領主の館を訪れた。

 村から少し離れた場所にある質素な館では、五十歳を越えると思われる老齢の紳士――この村の領主である騎士が、俺たちを出迎えた。


「おお、王都よりの救援、痛み入ります。……しかし失礼ですが、派遣いただいた討伐隊は、こちらの六人ですべてですかな……?」


 応接室で俺たちを出迎えた老齢の領主は、少し不安そうな、失望したような顔で俺たちを見渡す。

 しかしその途中で、俺の右腕にはまった銀の腕輪を見とがめ、驚いた表情を見せた。


「もしやそちらの方は、『魔装使い』の方ですかな……?」


 そう聞いてくるので、俺が「ああ、まあ……」と答えると、老領主はアランを見ずに俺の前に来て、その両手で俺の手をにぎってきた。

 そして興奮しながら、こう言ってくる。


「――おお、これは心強い! 魔装使いといえば、完全武装の騎士の五人にも十人にも匹敵するという話。ならばこの戦力でも、ワイバーンを退治していただけましょう。是非ともよろしく頼みますぞ、若き魔装使いどの」


 俺がそんな熱烈な歓迎を受けて困惑していると、老領主の横から、アランが言葉を返す。


「はい。我が部隊が、ワイバーンの一体や二体、すぐに退治してまいります。安心して吉報をお待ちください」


「うむ、若い騎士どのも、よろしく頼みます。私も自分の領地のこと、退治に同行したいのですが、なにぶん寄る年波には、かないませんで……」


「いえ、構いません。我々も税を納めていただいている身です。その分の働きはさせてもらいましょう」


 アランは老領主に一礼をする。

 そして、俺を含めたアラン以下の一行は、領主の館を出て、ワイバーンがねぐらにしていると目される洞窟へと向かった。


 館を出たとき、アランは憎々しげに俺をにらみつけたが、俺はもちろん無視。

 筋違いの逆恨みもほどほどにしてほしいものだが、腹は立たなかった。


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