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呪われし魔王の安寧秩序  作者: 鳳仙花
第三章・安寧と秩序
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星の騎士団長とアテナ達

炎帝と魔人の戦闘から六日後の早朝。

勇者アテナ、星の騎士団副長のルナ、青い大狼の天狼、アテナの幼馴染であるセイラの三人と一匹は中央地を越えて東の地へと入ろうとしていた。

アテナ達は川原で焚き火を燃え上がらせつつも順番に睡眠に入り、今はアテナが寝ずの番をしている。

そして近くには荷物と共に括りつけた馬三頭と、草原の地面が柔らかい所で、ルナと天狼とセイラが眠っていた。

川が近いせいか少し流れてくる風が肌寒く、アテナは焚き火の熱気で体を暖めながら辺りを警戒している。

木々が日差しを遮っているから薄暗いおかげで、警戒する神経が研ぎ澄まされていた。

暗いと自然と集中力が増していて、無意識的に警戒心が高まっていくためだ。

アテナが空を見上げると、少しだけ空が白く染まり始めていて、夜明けが近いなと察することができた。

白い息を漏らしながら、アテナは特に誰に言うまでもなく独り言をこぼした。


「もう少しで王様に会えるな…」


現在、アテナ達は人間の軍事力が唯一残された東の地へと移動を始めていて、今日には合流できる予定だった。

どうも人間達は東の地には南の地にあった多くの物資の運搬をしていたようで、人間の王族もそこへと避難していてどうしても速く行く必要があった。

そこまで急いで行動を起こしたのは王族がいるという話だけではなく、東の地まで制圧されては、人間はまさに打つ手が無くなるのが一番の理由だ。

もし魔王を倒したとしても、東の地が魔族に落ちてしまっていたら意味がないというほどに、今では東の地が重要で人間に残された希望の地となっている。

だからこそ、アテナ達は病み上がりだろうと関係なく急いで移動をしていた。


「……誰だ?」


アテナは何者かの気配を察して、隣に置いてあった魔剣を手に取った。

セイラや天狼が立てているかすかな寝息に混ざって、別の誰かの存在を感じる。

ルナや馬達が寝息を立て始めたとかではなく、遠くからやってきて混ざってきた気配だ。

明らかに一人分だけ増えていて、アテナは辺りへと視線を回す。

場所は分からないが、こうも慎重にして気配を殺していることを考えれば、野良の動物では無さそうだ。

だからアテナは息を潜めて気配を探り出す。

その状態が数秒続くと、やがて軽薄な笑い声が聴こえてきた。


「いっひっひっひ。そういきり立つなって。別に襲おうと思っていないさ」


男の声だ。

アテナは魔剣を引き抜き、声が聞こえた方へと鋭い眼で睨みつけた。

するとそこにはアテナ達が乗っていた馬を撫でる一人の男性の姿があった。

服装は群青色のマントとフードを羽織っているがために詳しくは分からないが、丈夫そうなブーツに群青色のマントの端には星の模様のような刺繍が織り込まれていた。

顔は綺麗に手入れしているのかヒゲとかはなく、喋り方の割にはなかなか勇ましい顔つきをしている。

その既視感ある服装に、アテナはすぐにその人物がどこに所属している者か理解する。

あの群青色のマントとフード、それとルナが履いてるのと同じブーツは星の騎士団が身に付ける物だ。

つまり現れた男性は、星の騎士団に所属してる人物ということになる。

現れた男性は腰に刀身が薄く長い剣を鞘に納めて差しており、他に装備している様子は見受けられなかった。


「もしかして星の騎士団の方、ですか。なぜこんな所へ?」


いくら星の騎士団であろう人物でもアテナは警戒の手を緩めず、魔剣は手にしたまま声をかけた。

そのことを配慮してなのか男性はそこから一歩も動かず、大声で言葉を返した。


「あんた達を迎えに来たんだ。王族の所へと案内しにさ」


男性からアテナへの呼びかけに、天狼とルナは目を開けた。

ルナは元から起きていたようだったが、天狼は声で仮眠から目を覚ます。

そしてルナは男性の方へと視線を向けるなり、驚いた表情をして立ち上がった。


「団長!?なぜここに!」


ルナのこの一言により、アテナも天狼もぎょっとして、ルナに団長と呼ばれた男性を目を丸くして見つめた。

ルナの言い方からすると、この男性は星の騎士団の騎士長ということだ。

まさか星の騎士団長だと思っていなかったので、ついアテナは黙り込んでしまう。

そのことをお構いなしか団長はルナの方へと、にこやかな顔をしながら歩き出し、近づいて話だした。


「おお、ルナ。元気にしてたかぁ?傷は大丈夫さ?」


「え、えぇ…団長の武器のおかげさまで。しかしここにいて大丈夫なんですか?それにその格好…」


「そうだなぁ。このマントとフードとか、道具の装備もずいぶんと久々に身につけたな。とは言っても、レーヴァテインしか自分は扱わないけどねぇ。レーヴァテインは三百年前から使ってる道具だし、今更他の武器なんてまともに扱える気がせんよ」


ルナと団長が話だしてる間にアテナも歩み寄り、大声で話す必要がない距離へとなる。

そこでちょうど三百年という意味が不明な言葉を聞いて、思わずアテナが呟いた。


「三百年…?」


「ん、あぁ気にすんな勇者さん。それより、よく無事に生きてたもんだ。レーヴァテインで腹部の傷を無かったことにしたにしても、あのまま息を吹き返さない可能性は充分にあった。…変な話、選ばれた人物だからこそ、生き返って当然と捉えるべきなのかねぇ」


「すみません…、何を言っているのかさっぱり理解できないんですが…」


団長の言う言葉にアテナは全く理解できないので、困り気味に言葉を漏らした。

それに対して団長は軽薄に笑うだけだった。


「いっひっひ、分からないなら気にすんなって。さて、ここでだらだらと談笑していてもいいけど、まずは転移して王族の所まで行こうか。全てはそれからだ」


「転移?…えっと、魔王が使っていた不思議な力のやつでしたっけ。一応目の当たりにしたことはありますが、あんなことが可能なんですか?」


アテナの質問に団長は懐からガラス玉の結晶を取り出して、更にレーヴァテインを鞘から引き抜いてみせた。

鞘から引き抜かれた剣は赤黒い刃で、その禍々しさを目にしてアテナは敏感に恐ろしい物だと感じ取った。

一般人どころか歴戦の兵が見ても普通ならただの刀身の薄い剣だと思うものだが、今のアテナの身には魔力と呪いの力を宿している。

だから言葉不要に、この剣には特別な力があるのだと直感的に理解してしまう。

そして団長はガラス玉の結晶を、手元で遊ぶように回しながら簡単に説明をしだした。


「さすがに魔王のように手ぶらで転移は無理さ。転移には私のレーヴァテインとガラス玉を使うんよ。実はこのガラス玉はある半精霊が持っていた結晶石を使ったものでね。その半精霊を捕らえた時に頂いて、それを利用させて貰っているのさ。本来はマーキングした所にしか転移できない代物だったんだけど、それはレーヴァテインの力を使えばどうにでもなるもんよ。まぁ体験したほうが分かりやすいかね。とりあえず全員ここに集めてもらっていいですかねぇ?」


そう言われてルナは馬達を引き連れて団長に近寄り、天狼は尻尾でセイラの頭を何度か叩いて無理矢理に起こした。


「ふわっ!?なになに…?なんか私の顔にふんわりとしたものが、何回もぶつかってきたんだけど」


寝ぼけ眼で起きるセイラに、天狼は冷めた目つきと声色で命じるのだった。

その様子を団長は楽しそうに眺めながら、また軽薄に笑っている。

何度も笑っている姿を見ていると、アテナからしたらとてもあの星の騎士団の長とは思えない。

それほどに、気が抜けているような印象を受けてしまう。


「気のせいだ、セイラ。それより来い、移動するぞ」


「うぅん、もう行くの…?ってあの人誰?」


セイラだけが状況が全く飲み込めない中、集まると団長は手に持っている長刀を赤く輝かせ始めた。

すると一瞬の暗転と共に視界が全て切り替わり、見慣れぬ場所へとアテナ達は着地する。

そこは広めの部屋ではあるが、華やかさはない質素な部屋だ。

居間のように大きなテーブルと椅子が置いてあるくらいで、他にめぼしい物が目に付くことはない。

ただランプの灯りで部屋を明るくしているだけのよくある一軒家の部屋だ。

そしてそのテーブルに隣接した椅子には、市民の服を着用した威厳のある老人と容姿の良い若者が居座っていた。

その威厳ある老人と容姿が整った若者は全員に見覚えがある。

老人は王様で、若者の方は王様の第二子である王子だった。

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