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呪われし魔王の安寧秩序  作者: 鳳仙花
第二章・侵攻、そして防衛
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撤退を阻む者たち

振り下ろされる拳、ぶつけられる悪意、踏みにじってくる足。

あぁ、私は結局なにもできていない。

あまりにも弱いから無力と同じで、居場所を守ることができていない。

こうして痛めつけられるだけで、私は抵抗もせずにいる。

魔王、ごめんなさい…。

私はやっぱり魔王のために何かできるような存在じゃなかった。

想っているだけで何もできない。

私は……私は………、悲しい。


地面へと這いつくばると何度も蹴られる。

一撃一撃が本気でないにしろ、痛みがはしる。

全身が痛い。


「う……うぅっ…!」


誰か助けて。

痛い、痛いよ。

そして怖い…。


シャルは服の内側にしまいこんでいる結晶石に手を当てる。

付加魔法による自室への転移は、魔城が燃えているために不可能だ。

ならなぜ結晶石に手を当てたのか。

それはたったひとつの簡単な理由。

魔王に助けを求めているのだ。

別に魔王にこの願いが届くわけではない。

けれど、シャルは魔王への想いを強くすると無意識に結晶石に手を当てていた。

少しでも魔王の力を感じていれば、助かる気がしたから。

想いが伝わる気がしたから。


助けて、魔王。

私を守って。

約束通り守って。

お願い。

こんな苦しい気持ち嫌だよ。

寂しいよ、痛いのは嫌だよ。

私に魔王のような力があれば、助かるのかな。

魔王のように魔法が使えれば、付加魔法だけでもなんとかできるのかな。

私に力があれば……。


シャルは付加魔法を発動させようとしたが、すでに精神が安定しないだけではなく痛みで集中できていなかった。

シャルに魔力があればの話だが、付加魔法だけで攻撃に転じることは可能だ。

だが、今はアルコルの攻撃を防御できる基本的な付加魔法すら扱えていない。

今のシャルには何もできなかった。


「あんた達、何してるのよ?」


森の方から服を血だらけにしたオレンジの長髪の女性がでてきて、シャルをなぶる星の騎士たちに声をかけた。

その現れた女性の姿をレグルスは見て、平然とした顔で受け答えるのだった。


「アケルナルか。よくここが分かったな。しかしずいぶんと血が着いてる。お前の血か?」


「魔城内で厄介な敵に会ってね。不甲斐なくも、腹部の血はほとんど私のだよ。それで、何してるんだい?」


アケルナルが再び同じ質問をなげかける。

それに対して、今度はシャルに暴力をくわえていたアルコルが愉快そうに笑って答えた。


「この生意気な半精霊だかを捕虜として連れて行こうとしたんだけどさ。生意気に抵抗するから痛めつけていたんだよ」


「……そう。私から見たら気を失っているように見えるけど?」


「え?あぁ…、ほんとだ。なんだこの半精霊。本当に弱っちいなぁ。いくら希少種でも魔王の大事な部下とは思えないよ。雑用か何かじゃないの」


アルコルが不満そうにしてレグルスへと文句をつけだした。

だがレグルスは特に気にする様子はなく、当たり前かのように思っていることを話すだけだ。


「そんなこと知るか。でもそのローブといい、ただの雑用だとは俺は思わん。どちらにしろ何かに使えはするんだ。さっさと連れて引き上げるぞ」


「あっそう。ならレグルスがこの生意気な半精霊を持って行ってよ。僕は荷物運びは嫌なんでね。それに僕、一応ケガ人だし」


「大して負傷してない癖によく言う。まぁ、わかった。俺が背負う」


「あー!やっぱりレグルスはそういう趣向のお持ちなんだね!あたしもいつか手を出されるかも!」


レグルスが気絶した小柄な体型であるシャルを背負うと、ミザルは突然大声をあげだした。

この言葉に反応するのはアケルナルだった。


「なにそれ?何の話よ」


「馬鹿かミザル!いつまでその話を引っ張るつもりだ!俺はルナの方が好みだといっただろう!」


レグルスの叫びにアルコルが悪ガキそのものの表情を浮かべた。

いやらしい卑劣な顔だ。

そして明らかに意図的に嫌味ったらしく言葉を口にした。


「へぇ…その言い方だと、レグルスは小さい子も嫌いではないってことだよね?それともルナが大好きって捉えた方がいいのかなぁ?あっははは」


「はぁ…、お前らガキどもは本当に何なんだ。言葉遊びはしりとりだけにしとけ。いい加減に行くぞ。ほら、早くしないとお前ら全員置いていくからな」


「あー!待ってよレグルスぅ!ほら、アケルも行こう!あたし、魔城がどんな内装だったか話聞きたいな!」


「いいわよ。別に部屋を回ったわけではないから大した話できないけど、教えてあげるわ」


シャルを背負ったレグルスを先頭に、遅れてミザルとアケルナルも追って走り出した。

それからアルコルは倒れたままの大悪魔を一瞥してから、動きに変化がないのを遠目に確認した後に続けて走り出す。

全員は俊敏に動き、森の中を駆け巡っていく。

もはや魔物たちも彼らに襲いかかることはなく、今頃は燃えている魔城であたふたとしていることだろう。

そして森を抜けて広大な草原へと出たとき、強大な電撃がレグルスの目の前に落ちた。

耳を衝く爆音が全員の鼓膜を突き抜ける。

とっさにレグルスは足を止めて、俊敏に後ろへと跳び下がる。

そしてシャルを片手に背負ったまま大剣を引き抜いた。


「やれやれ、ここでこいつと会うとはな。しかし、魔王を相手するよりは楽か」


レグルスに続いて、星の騎士団全員が武器を手にした。

ミザルは弓を、アルコルは鉄の輪を、アケルナルはヌンチャクと曲刀を。

そして戦闘態勢をとる星の騎士四人が見据えた先には、雷撃を身に纏う馬の魔物が一体いた。

更にその馬の魔物の上に一体、翼と尻尾が生えた悪魔のような女性が乗っている。

銀髪に妖艶なる瞳と艶やかな肌。

その女性の魔物はシャルの姿を見て、一瞬だけ怒りの表情を見せてはすぐに冷酷な顔となって叫ぶのだった。


「シャルちゃん!なんであの子が人間に連れ去られてるのよぉ。普通なら自室に籠っていてもおかしくないのに…。………どうやら手遅れだったみたいねぇ。なら仕方ないわねぇ。ここであいつらを仕留めるのがせめての反撃かな。雷帝様ぁ、あの半精霊の女の子を救出を優先に、敵を殺しちゃって下さいなぁ」


「心得た、サキュバス」


雷帝と呼ばれた馬の魔物は、背中に乗せていたサキュバスを降ろすと体中から電撃を放出させた。

すでに電力は溜まっていて強力な雷撃を発生できる。

だからサキュバスは急いで雷帝から距離をとって離れながらも、シャルを助ける瞬間を探り始めた。

そして星の騎士団はアルコルが前に出て、号令をかけるのだった。


「星の騎士団総員!これから僕を主力に雷帝を撃破する!みんな頼むよ!さぁいくよ!」


その叫びに、ミザルとレグルスとアケルナルは大声で了解の言葉を返した。

そしてその言葉がこだまして聞こえなくなるよりも早く、雷帝は頭にある角に電撃を集中させてから一気に放出させた。

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