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呪われし魔王の安寧秩序  作者: 鳳仙花
第二章・侵攻、そして防衛
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小さき星の騎士団員

大悪魔は大きな腕で魔城の正面扉を開けると、身が凍えるような冷風とかすかな雪が流れてきた。

人間にはとても冷えるだろうが、大悪魔にとっては何てことない寒さだ。

そして大悪魔は広大な大地と山脈を前に、すぐに辺りに目をこらしながら耳を澄まして敵の位置を探った。

すると魔物の叫びが遥か前方の地上から聞こえてきたので、翼を広げてそこへ向かって飛び出す。


「側近の言った通りだな。なかなか勘の鋭い奴だ。いい部下を持ったものだな魔王は」


大悪魔は楽しそうな顔をしながら鷲の側近に感心しつつ、猛スピードで森へと飛んでいく。

これなら数分と経たず敵と接触できるだろう。

そう思った矢先だった。

二本の矢が大悪魔を目掛けて飛んできた。


「む?もう気づかれたか?」


大悪魔は悪魔の虫達を呼び出しては潰し、血の結晶剣を即座に作り出す。

その血の剣で飛んでくる矢を切り落とし、再び最初の目的地へと向かい始める。

しかし、何事もないように矢を撃ち落とした大悪魔の姿を見上げていた者が遥か遠くにいた。

見上げていた者は群青色のマントとフードを身につけていて、先程から人形を操っている金髪の少年の近くにいた。

手には弓を持っていて、その人間が撃ったのは明白だ。

ただ矢を撃った人間は金髪の少年同様にとても小柄で、少年と同じ金髪と青い瞳をしていた。

でも金髪はとても長く、その長髪をリボンでまとめている。

それに顔や体つきは明らかに少女で、金髪の少年以上に華奢で小さな体をしていた。

弓を持った金髪の少女は、人形を操る金髪の少年に声をかける。


「アルコル、空に偵察の時に会った魔物がいるよ!」


アルコルと呼ばれた金髪の少年は視線を前方から移さず、そのまま手を動かしながら言葉を返した。


「あっそう、撃ち落とした?」


「ダメだった!ただ撃つだけじゃあ駄目みたい!」


弓を持った金髪の少女は明るい声で、にこにこと愛想笑いをしながら結果を口にした。

それに対してアルコルという金髪の少年は、顔をしかめながら嫌味を含めた口調で喋るのだった。


「ふーん、そいつ生意気だね。ミザルの矢を落とすなんて…、なら二人で仕留めようか。僕とミザルだけでいけるよ。あんな生意気な魔物、敵じゃないね」


「うん!あたし頑張るよ!」


ミザルと呼ばれた弓を扱う金髪の少女は笑顔で応えて、張り切るポーズを取ってみせた。

それから遠くを覗き込むように片手で視界に影を作るような仕草をして、大悪魔の動きを探る。


「ミザル、そいつどこに向かってる?必要なら人形で誘導するよ」


金髪の少年のアルコルの質問に、ミザルは小さな胸を張って元気な声で答えた。


「うーんとね!今アルコルが操作している人形の所に向かっているみたいなの!このままで大丈夫だよ!」


「よし、ならミザルはそのまま弓で撃ち抜いてやってくれ。僕が人形でサポートするよ」


「うん、わかった!あたしにお任せあれ!」


華奢で金髪の少女のミザルはとても素敵な笑顔をしたまま、矢を取り出して弓を構える。

森の中の射撃は星の騎士団の副長であるルナもゴブリンとの戦闘時にやっていたが、ミザルのは訳が違う。

ルナの射撃は敵が隠れていたとは言え、近距離の静止した魔物を打ち抜いていただけだ。

でも、ミザルのは超遠距離による射撃。

それも高速で空を移動している魔物にだ。

そしてミザルは手から矢を放す瞬間だけ、それは狩人らしい目つきとなり冷徹なものとなる。


放たれた矢は放物線ではなくほぼ直線に飛んでいき、木々の隙間を掻い潜って大悪魔へと高速で飛んでいく。

どういうわけかさっきの矢よりずっと速く、空を飛んでいた大悪魔は矢に気づくのに遅れてしまった。

確かに耳には矢独特の空気を切り裂く音が大悪魔には聞こえていたのだが、聞こえた頃には手遅れだった。

とっさに大悪魔は血の剣を盾に変えて、矢を防ごうとする。

すると矢は血の盾に弾かれるのではなく、血の盾の表面に突き刺さった。

大悪魔の血の結晶の高度は鉄と大差ない。

それなのに刺さるということは、よくあるような素材で作られていないだけではなく、威力も並外れていて狙いが完璧だということになる。


「あー!またあたしの矢が防がれた!」


「…サポートするって言っただろ。全くほんとミザルは我慢知らずなんだから。まるで、ば……」


アルコルが、ばという言葉を発しようと瞬間にミザルは過剰な反応を見せてヤケクソ気味に叫ぶのだった。


「今、馬鹿って言おうとしたでしょ!お姉ちゃんに向かって馬鹿なんて言ったら駄目なんだからね!罰としてアルコルのおやつ抜きにするんだから!」


「はいはい。おやつ抜きでもいいからさっさと倒すよ、ミザルお姉ちゃん。あの生意気な魔物、すぐに僕好みの死体にしてやるんだから」


お姉ちゃんと言われてか、すぐにミザルはにっこりと幸せそうな笑顔をして弓を構え直す。

この二人、アルコルとミザルは年齢が同じで姉弟(きょうだい)という関係だが何も義理の姉弟という関係ではない。

確かに血の繋がった双子なのだ。

そして名前も二人で双子星を意味している。


「星の騎士団員ミザル、空の魔物を優先にいきます!」


「星の騎士団員アルコル、同じく空の生意気な魔物を優先にいくよ」


星の騎士団員の最年少の二人。

この金髪の少年アルコルと金髪の少女ミザルの双子は、完全に大悪魔に狙いを定めて戦闘を仕掛けていくのだった。

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