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呪われし魔王の安寧秩序  作者: 鳳仙花
第三章・安寧と秩序
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星の騎士と炎帝の激突

一方、東南の地で同時刻。

ルナと団長はレーヴァテインの力で着地するなり、すぐに炎帝の位置を探し出そうと辺りを見渡していた。

そして数分の間だけ高速で走り探しては、炎帝が燃やしたであろう焼け跡の痕跡を見つけて足を止めた。


「団長、こちらの焼け跡の方が熱いです。おそらく、こっちの方へ走って行ったのでしょう」


「ん、さすがルナだ。これなら追跡と探索でも天狼いらずさ」


「……私のは予想に過ぎませんよ。天狼ならもっと多くの情報を手に入れて、正確な場所を把握します」


「それはそうだろうけど、それはそれで危ういんだけどねぇ」


意味深そうな団長のこの言葉にルナは理解しきれず、どういう意味か訊こうとした。

でもその前に団長はルナが言った方へと走り出してしまうものだから訊くに聞けず、団長の後を黙って追うしかなかった。

やがて走って森を抜けると、小さな砦が見えてきた。

砦は現在進行形で燃え上がっていて、ルナと団長は一気に熱気と熱量を感じることになる。

鼻を衝く嫌な臭いと耳に障るうめき声、そして多くの人間と魔物が争っている光景。

焼けた兵士と魔物が倒れている所を見ると、かなり炎帝は遠慮なく炎を撒き散らしているみたいだ。

すでに戦場となっている砦を見ては、ルナと団長はそれぞれ武器を手にとった。


「……ルナ、ここの兵士の声に混じって炎帝の声も聞こえたさ。ここを突っ切って攻撃を仕掛ける。準備はいいかい?」


「もちろんです。同時に攻めましょう。炎はお願いします」


ルナは二刀の手斧を構えて、団長と共に走り出した。

通り過ぎる間に魔物や魔獣、魔虫を斬っては相手の武器を奪って空へ投げつけて魔鳥すら撃ち落とす。

高速で通り過ぎていくという理由だけでなく、その俊敏なる攻撃に魔物は手を出せずに、容易にルナと団長の突破を見逃すことになっていた。

それほどにルナと団長の戦闘力は突出していて、魔物単体では太刀打ちできるレベルを遥かに上回っている。

この調子で団長とルナが砦を越えると、人間の兵士を焼く炎帝の姿を視認した。

それと同時にルナは速さを格段に上げて、まるでアテナや天狼のような驚異的な加速して、この場にいる生物の中では一番の速さを見せる。

ルナは炎帝の後ろを位置取るなり、目に殺意を宿しては二刀の手斧に力を込めた。

そしてルナは呟く。


「表の型、絶ちる無閃(むせん)


炎帝がルナの言葉を聞くなり、振り向こうとした。

だがそれより早くルナの姿は炎帝の前にあった。

後ろから声を聞いたはずなのに。

そして振り向いたのにルナの姿を目で捉えられない。

ただ、気づいた時には炎と赤い液体が炎帝の体から飛び散っていた。

遅れて発生する突風を感じながらも、炎帝は叫ぶ。

姿は見えなかったにしても、ルナが来たことを理解しているからだ。


「ルナぁ!殺してや…!」


炎帝が怒声をあげながら、全身から爆炎を全方向へ放とうとした。

しかし爆炎は起きなかった。

なぜかと炎帝が戸惑うより前に、炎帝はルナとは別の人間の姿を目にしていた。

それは赤黒い刃を手にして、群青色のマントとフードを羽織った団長の姿だ。

レーヴァテインで爆炎を不発に抑え込んだのだ。

炎帝は次に団長の姿を見るなり、また叫ぼうとする。

でもそれより早くルナが次の攻撃の動きに入っていて、手斧を振りかぶっていた。


「おのれっ!」


炎帝は罵声をあげながらも、ルナの攻撃に対して腕に炎を集中させることで防ごうとする。

するとルナはまた武器を溶かされるのを警戒してか、二本の手斧を振りかぶったまま炎帝に当てずに、手斧を二本とも宙へと投げ飛ばした。

そして二本の手斧を繋いでいる柄に付いてる紐をルナは掴みとり、紐を下へ引っ張っていって姿勢を低くした。

それにより手斧は炎帝の真上から降り落ちる形となり、柄と刃が炎帝の頭に衝突することになる。

続けて団長がレーヴァテインを振り下ろして、炎帝の首を断ち切ろうとした。

炎帝はその斬撃を後ろへと姿勢を動かすことで僅かに首が切れるだけで済ましたが、すかさず団長はレーヴァテインの能力で刃を伸ばして切り上げる構えをとった。

今度は炎帝が炎を纏った腕でレーヴァテインを叩き上げて、力押しで斬撃を防いでみせる。

しかしそれだけで攻撃が済む訳もなく、次にルナが手斧の柄を連結させて武器をダブルセイバーにして切り上げた。

これには対処しきれずに、ルナの刃が炎帝の体を大きく抉り斬った。

しかもルナは片手でダブルセイバーを扱っていて、切り上げることで姿勢を上げ直すと同時にもう片方の手にはクロスボウが構えてある。

ほぼ狙いを定めることもなくルナはクロスボウを撃ちはしたが、炎帝はクロスボウの矢が刺さる直前に燃え盛る手で受け止めた。

そのクロスボウの矢を武器として炎帝はルナに向けて振るい、矢じりがルナの顔に接近する。

それでもルナは慌てることなく素早い手つきでクロスボウで矢を受け止めて、クロスボウが壊れてルナはすかさず投げ捨てる。

同時にルナは手に障壁の式術の札を持っており、障壁を発動させながら炎帝を殴ってみせた。

これによりルナの手は守られながら、比較的安全に殴打できることになる。


「ぐぅっ!」


炎帝は殴られたことで呻き声をあげて、大きく怯んだ。

その隙を団長が逃すことはなく、レーヴァテインで炎帝を突き刺そうとした。

炎帝はそのレーヴァテインの刃に皮膚を切られながらも、手で刃を掴んでは放り投げようとしてくる。

ここでレーヴァテインを投げ飛ばされるのは危険だ。

団長は自ら大きく跳躍することでレーヴァテインを掴む炎帝の腕を捻らすことで手放させ、そのままある程度の距離を取ることになる。

だから続けて炎帝が動させる爆炎はルナには防ぎようがないために、ルナは後ろへと跳躍して同じく距離をとりながら団長の隣に立った。

遅れて巻き起こる炎帝の爆炎を見ながら、ルナと団長は姿勢を直して武器を構える。

そして爆炎が収まると、散っていく炎の中には息を切らす炎帝の姿があった。


「あっははは…、まさか魔人までいるとはな。幸運だか不運だか分からんなぁ?どちらにしろ、こうも人間二人に手玉に取られるとは、全くもって屈辱的だ!絶対にここで殺してやろう!人を殺すのに時間はかからんが、お前ら人外を殺すには時間が必要だ!」


「いっひっひっひ、悪いけど炎帝さん。アンタの命はここで断ち切らして貰いますさ。今の攻撃の中で準備も済んだからねぇ。ほうら、後ろがガラ空きだ」


団長の言葉に合わせて、炎帝の後ろで小さな爆発が起こる。

その爆音と団長の言葉のせいで炎帝はつい振り返ってしまうが、見えたのは式術の札で地面が爆発しだけのものだ。

今の団長の発言と爆発は、単なる視線の誘導だ。

あまりにも単純で子供だましにしかならない。

けれどその僅かな差こそが、実力者での戦闘では生死を決めてしまう。

炎帝が自分の愚かな行動に怒りを覚えながらも、慌てて団長の方へと向き直す。

しかし見当たるのは何かを投げ構えるルナの姿だけで、肝心の団長の姿がない。

視線を外した隙に転移をされたのだ。


「できないと言ったわりには気軽に転移しやがって…!」


炎帝は団長の姿を探そうとしたが、先にルナが何かを投げつけてきたので、それに対処しなければいけなくなる。

ルナが投げてきたのは小さな鉄の塊で、一見石ころのようにも見えた。

クロスボウが壊れたために遠距離での攻撃はそんなものしかないのかと炎帝は思い、その鉄の塊を燃やし溶かそうとする。

しかし考えてみれば、ルナがそんなものを投げつけるなど明らかにおかしいはずだった。

でも炎帝は団長の姿を探すことにしか頭が無かったので、瞬時にそこまでの思考は働かない。

火炎を放射しても鉄の塊は意外にも溶けきらず、炎帝は避けてしまった方が良いかと思った。

けれど火炎放射はルナを容易に近づけないための攻撃にもなっているので、続けて炎帝は火炎で鉄の塊を溶かし尽くそうとした。

そうして鉄の塊が溶けていくと、炎帝の近くで唐突に爆発を起こす。

爆発により鉄の塊は四散しては、鉄の破片が炎帝の体を刺し貫いた。

それで出血と共に炎帝は痛みで苦しみ、傷を押さえるようにして身を屈めてしまう。


「く、くそがぁ…!」


暴言を吐いて自分の浅はかさに苛立ちを感じているとき、一つの影を炎帝は見た。

自分の影に重なっていて、不自然な陰りだ。

雲とか周りの物によるものではなく、ほぼ真上からによる影。

驚いて炎帝が真上を見上げると、そこには真上から落下してくる団長の姿があった。

レーヴァテインの剣先を炎帝に向けていて、すでに避け切れる落下距離ですらない。

団長が転移した先は炎帝の真上だったのだ。


「魔人!お前を焼き殺してっ…!」


炎帝は叫びながら、真上から落ちてくる団長に向けて火炎放射を放った。

しかし当然火炎はレーヴァテインにより切り裂かれて、炎の中から団長の姿が見えた。

次に炎帝が行動する時間はなく、レーヴァテインの刃が炎帝の肩を深く刺し貫く。

溶岩のような血が飛び散るとき、炎帝と団長は不敵に笑う。

まさにこの一瞬を互いに待ち望んでいるみたいだった。


「さようならだ、炎帝」


「まだだ。まだ…これからだ」


炎帝と団長が言葉を交えた瞬間、炎帝は刺し貫かれていない方の腕に全ての炎を注ぎ込んで、団長へ向けて腕を振るおうとする。

同時に団長は落下しながらレーヴァテインを振り切って炎帝の片腕を削ぎ落とし、着地するなり二擊目を振るった。

このとき、炎帝の手には炎の大剣があってレーヴァテインとぶつかり合おうとする。

そうして刃がぶつかり合ったとき、暴風と熱風が辺り一面を吹き飛ばして、火柱と爆炎が炎帝と団長の体を包み込むのだった。

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