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挿話 少し前の話

「この度は右大将殿直々に話し合いの場に足を運んでくださりありがうございます。」


エルラメド連盟の盟主、パトリック・エルラメドは感謝の言葉ととも椅子を勧める。

椅子を勧めた相手というのは、現在世界で郡を抜く異能力集団のクロックタルリス連合の右大将をしている青年である。

彼は雑面姿に漆黒の長髪をなびかせながら椅子に座った。

現在権勢を誇るクロックタルリス連合との協定を結ぶために話し合いの場を設けたのだが右大将が出てくるのは流石に予想外であったのだろう、パトリックは動揺した様子であった。


「初めましてパトリック殿。我がクロックタルリス連合との協定を結びたいとの要望を受け、参りました」

「お忙しいでしょうにわざわざ右大将殿が来て下さるとは恐悦至極に存じます」


右大将はワイバーンやグリフォンなどの討伐や異能力集団達の紛争の仲裁などで戦場を駆けずり回っていることで有名で公の場に顔を出すことが少ない。

そんな大物とこんな所で出会えるとは思ってもみなかったようだ。そしてそんな人物に赴いてもらったからなのかパトリックの顔に喜色が浮かぶ。エルラメド連盟はクロックタルリス連合にとって目をかけてもらえる組織であると考えているようだ。


「我々としても協定を結ぶことはやぶさかではありません。しかし、1つお願いがあるのですが⋯」


パトリックに緊張が走った。

クロックタルリス連合のほうが格上の存在であり、願いといえば聞こえがいいがこれは命令なのである。

これに応じなければおそらく協定を結ぶことができないだろう。

パトリックは固唾を呑んで言葉を待つ。


「私はエルラメド連盟のありのままの様子が知りたいのです。エルラメド連盟の本拠地はエルラメド家なので私を守護師団に入れていただきたい」


予想外の発言に声が出そうになるが何とか耐えた。


「私がエルラメド連盟のことを一通り知ることができたら協定の締結をいたしましょう」


その提案にパトリックは不安を抱いてしまう。エルラメド家ひいてはエルラメド連盟はお世辞にもいい雰囲気とは言い難い。

ソフィアとジュリアンの婚約の話を持ってしても、まだ好転しきることができずにおり、そんな状況を打破するに協定を締結し内部の結束を強めたいという思惑があった。

しかし、今のエルラメド連盟を見られてしまえば協定に持っていくのは難しいかもしれないと思案するが、右大将殿はへらりと笑った。


「そんなに難しく考えなくても大丈夫ですよ。この協定には我々にも有益なものですから」

「⋯そうなのですか?」


パトリックには分からない主張だと思った。いくら考えても有益なものがあるとは考えがたかったからだ。そのように考えているのを察してか右大将は答えてくた。


「私が言うと少し説得力が落ちてしまうのですが我々は基本争いを好みません。協定の締結は争いの火種を少なくする手段ですから相手に問題がない限り結んでおきたいのです」


パトリックは大きい組織になると見据える先も壮大になるようだと自得する。


「わかりました。守護師団に入れるようにこちらから手配をしておきます」

「ありがとうございます。出来れば多くの人と関わりたいのでそこそこの地位に入れていただければと思います」

「任せてください」

「それではよろしくお願いいたします。私は少しやることがございますのでお先にどうぞ」

「わかりました。お先に失礼します」



淡々としたやり取りであったが無事に話し合いが終わりパトリックは肩の荷を下ろす。

雑面をつけていて顔は見ることができなかったが戦闘に特化している人物とは思えないほど柔和そうな人物であった。

右大将殿をどこに配属させようか思案する。右大将は忙しい方だから短期間の所属でも疑われない配属先はどこだろうかと考えていると、ふと護衛騎士を取っかえ引っ変えしている者がいたと思い出す。

現在その者に仕える護衛騎士は一人だ。ソフィアやライアンには複数人に護衛騎士が着いているため、急に配属されたとしても違和感は少ないだろう。

⋯しかし心配もある。その者は気性の荒く右大将殿に無礼を働くかもしれない⋯が、私の名を使って配属し、後ろ盾があることを示せばあの子も簡単には手を出すことができないだろう。そんなことを思いながらパトリックは部屋を後にした。




パトリックが去っていく後ろ姿を右大将は見つめていた。

「初めまして⋯ねえ」

相手にとってはそうだろうが俺はあの男を知っている。とは言っても一目見ただけであるが、それだけで十分情報は手に入る。

「さて、どうしてやろうかな」

ニヤリと細められた目が妖しく光った。


閲覧いただきありがとうございました。

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