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各属性の魔法

「じゃあヘレナ、もう一度さっきのをやってみてくれ」


ついさっきリアムを傷つけてしまったから魔力を放出するのに少し不安を感じるが、ユダが「俺がいるから大丈夫だ」と言ってくれたから気を入れ替えて再び魔力を身体に巡らせる。


「《無属性魔法、発動》!」


魔力の放出は成功したけれど、やっぱり上手くコントロールができない。どうして上手くできないんだろうと焦りを感じ始め、魔力のコントロールが不安定になってきた時にユダが私の方へと手をかざしてきた。

すると不安定だった魔力ががみるみると安定してきた。


「今補助をしているからこの感覚を覚えるんだ」


ユダの補助によってなんとか放出した魔力を球体にすることができた。そして私がコントロールしてないのに魔力の球体が膨張したり凝縮したりしている。


「これが魔力をコントロールする時の感覚だ補助してるから真似してみるんだ」


ユダの補助を受けながら、魔力をコントロールする感覚を覚える。今の魔力の流れと失敗した時の魔力の流れは大きく違う⋯。今は全身を使った魔力の循環を感じる。失敗した時は魔力を出すことに注力しすぎて魔力を循環させるなんてことは頭になかったわ。この感覚を覚えて少しずつ自分で魔力を膨張させたり凝縮させたりしてみる。


「⋯⋯おお、出来んじゃん」

「え?」

「俺はもう補助してないぞ」


じゃあ今やった魔力のコントロールって自分の力でやってたってこと?本当かなと疑ったけど、ユダは手をかざすことを既にやめており、確かにもう補助はしていなかった。


「本当にできてる⋯!」

「良かったな。じゃあ次はどの属性の魔法が使いたいか決めよう。ヘレナはどの属性の魔法が使いたいとかあるか?」

「えっ、突然そんなこと言われても⋯」


正直、私は魔法のことについて聞きかじっただけだ。魔法についての知識は乏しいし、今まで見てきた魔法も少ない。使いたい魔法なんて言われても正直まだ分からない。


「じゃあ実際に魔法を見せながら各属性について説明した方がいいな」


そう言ってユダは魔力を放出し、魔力は赤く染っていったと思ったら瞬く間に炎に変化する。


「火属性魔法は防御もできるが、基本は攻撃特化の魔法だ。火属性魔法を極めればこんなこともできる《火属性魔法、花焔旋舞(かえんせんぶ)》」


辺りに火でできた花びらがハラハラと散っていく光景に見とれていると花びら一枚一枚が舞い上がり合わさって渦巻く炎が発生した。


「だが、水属性や風属性などとは違って自然界から流用することができないから魔力量の消費が激しい点が欠点だな。じゃあ次に行くぞ」


いきなりの出来事に驚愕しているのに間髪入れずにユダは再び魔法の説明を続ける。さっきは赤く染っていた魔力が青色に変わり、ユダの周りには水が漂い始めた。


「水属性魔法は万能型だ。攻撃や防御、サポートもできるし近くに水源があれば魔力消費も抑えられる。変容性が高いからこんなこともできるぞ《水属性魔法、蒼環反刃(そうわはんじん)》」


するとユダの周囲に漂っていた水が円環状になっていった。


「先輩、俺に攻撃を仕掛けてくれ。ああ、離れた状態でやってくれ、そうじゃないと危ないからな」


ユダが一体何をしようとしているのか分からなさそうな様子のリアムだったが、言われた通りに攻撃を仕掛けた。すると円環状の水が攻撃を受け流し、飛び散った水滴が水の刃に変形した。


「水属性魔法の変容性を利用して攻防一体の技を繰り出せる。ただ、ここまで自由自在に水を操るのは難しいことと、他の属性の技より比較的脆弱なことが欠点だな」

「ユダ、後でその魔法教えてくれ!」


ユダの放った水属性魔法にリアムは大いに食いついき、そしてユダはリアムの言葉を快く引き受けた。

そういえばリアムは水属性魔法使いだったことを思い出す。特にユダが見せてくれる魔法はおそらく上級の魔法だろうから興奮するのも無理はない。

いつの間にか辺りには見物人も増えているしその全てが目を爛々とさせている。

見物人達には目もくれずにユダは緑色の魔力を纏い始め、辺りには心地よい風が吹き始めた。


「風属性魔法は攻撃や機動性を上げるサポートが得意だ。どこにでもある空気を流用すれば魔力量が少なくても使えるし、広範囲の攻撃も可能な点もいい所だ。前に見せた《風属性魔法、風斬殺(ふうざんさつ)》もさっき説明したのと同じ要領でやった技だ」


そう言ってユダはかつてワイバーン達を呆気なく打ち倒した《風属性魔法、風斬殺》を披露した。あの時は抱えられていたこともあって何が起こったかよく分からなかったけど今第三者視点で見ると本当にとんでもない技だったと実感する。攻撃範囲もさることながら、風の一閃の威力が強くて空間が歪んで見えるのだ。まるで空間そのものを切っているかのよう⋯。


「でも風属性魔法には防御系の魔法が無いことと広範囲の魔法になるにつれて制御が効かなくなることが欠点だな」


次にユダは茶色の魔力を身に纏い始め、ユダの足元の地面がひび割れていく。


「土属性魔法は圧倒的に防御特化だな。俺は攻撃が最大の防御だと思ってるからあんまり使わないけど、例えば《土属性魔法、金剛隔壁(こんごうかくへき)》」


ユダの周りの地面が隆起しあっという間に大きな壁を作り出した。しかし、ユダは金剛隔壁を披露したらいそいそと地面を元に戻し始めた。ユダいわく、今までの技とは違って物理的で、地形を変える技だからあまり連合内で使わないように言われているらしい。


「もちろん防御だけじゃなく攻撃もできるし、相手から魔力を奪い取る《吸命花(きゅうめいばな)》っていう土属性魔法にしかない技もあるんだが、どっちも今使うと仲間に被害が及ぶ強力な技だから連合内では使えないんだよな。あと機敏な動きがしづらいのが欠点だな」


ユダは説明しながら無事に地形を元に戻し、証拠隠滅完了なんて言ってたけど、証拠隠滅もなにも多数の見物人がいるから証人しかいないじゃないとちょっと思った。

次にユダは黄色の魔力を纏い始めた。


「光属性魔法は肉体の回復がメインでサブに攻撃魔法があるって感じだな。さっきデイジーが言ってたが、回復系の魔法は不得手だから攻撃魔法を見せるな。《光属性魔法、光槍(こうそう)》」


ユダは空中に光の槍を出現させて地面へと降り注がせた。威力が強くて地面が抉れている。


「光属性魔法は日中や光の届く範囲で使うのがおすすめだな。その方が威力が上がる。その代わり、光の届かない場所だと魔法の威力は弱くなるし、さっきデイジーがやった治癒魔法も限度がある。同じところの繰り返し怪我すれば治りが悪くなるし、度合いが酷い怪我を治すのには多大な魔力を消費し、完全に元には戻せないこともある」


ユダはそう説明しながらまたいそいそと土属性魔法で地面を元に戻した。次にユダはは黒色の魔力を纏い始めた。


「闇属性魔法は精神や五感に干渉することがメインの技で、これもサブに攻撃魔法がある感じだな。これは身をもって体感した方が分かりやすいな。《闇属性魔法、五感剥奪・聴(ちょう)》」


ユダがそう唱えた瞬間に何も聞こえなくなった。何をしたのかとユダに向かって言ったけど私自身の声も聞こえないから本当に発声できていたのかすら疑わしい。少し間をあけてユダは何やら口を動かしたと思ったらその瞬間に音が戻ってきた。


「これが闇属性魔法⋯ユダはさっきなんて言って私の聴覚を元に戻したの?」

「さっきは《五感返還・聴》と言ったんだ」


今までのわざとは違って闇属性魔法は派手なものではなかったけど、身をもって闇属性魔法の恐ろしさを感じだ。


「闇属性魔法は確かに恐ろしい技が多いが、怖いばかりじゃないぞ。闇属性魔法は精神を癒す技もあって精神を安定させることもできるし、隠密行動をする時にも重宝する技もある。まあ、魔法を使用する対象の把握が必要になるからその点は難しいな」


ユダは一通りの属性の終え、放っていた魔力を収めた。見物人たちはいいものを見たと満足気に去っていった。


「無属性魔法はやらないの?」

「無属性魔法はピンキリだって教えただろ?無属性魔法には攻撃や防御魔法は威力が他の属性に劣るから実践向きじゃないし、かと言って《瞬間移動(テレポート)》みたいな特殊魔法は難しくて殆どのやつは習得できない。無属性魔法はメインに習得せずに、添えるぐらいが丁度いいことが多いからな」


確かにユダの説明を聞いて言う通りかもしれないと思った。今見せてもらった各属性の魔法から私が使うとすれば一体何がいいんだろう。今までユダが放った各属性の技を私が使っている想像をしてみたけれど、全然使える気がしない。


「お前は魔法を使って何がしたいんだ?攻撃か?防御か?はたまたサポートか?」

「私は⋯」


私は私自身が防御魔法を使っている想像がつかなかったし、ましてや攻撃魔法なんて今のところ一番想像がつかない。だとしたらサポート系の魔法かしら。


「サポート系の魔法なら光属性か闇属性がいいんじゃないか?」


光属性魔法か闇属性魔法か、ユダが見せてくれた《光槍》も、実際に体感した《五感剥奪・聴》すごいと思ったけど、私はさっきリアムの怪我を直したデイジーの姿が忘れられなかった。


「⋯私光属性魔法が使いたい。それも回復の魔法がいいんだけど」

「そうか、でもこればっかりは俺の専門外だからなー⋯ああそうだ、デイジーが所属してる第2救護部隊に教えを乞うのはどうだ?」

「いいの?」

「ああ、話は通しておく」


ここまでで今日の訓練は終了した。そして、ユダが言うには第2救護部隊での修行は3日後からできるように手配したらしい。その間に私はユダに面倒を見てもらいながら魔法のコントロールを完全にできるように訓練に勤しむのだった。

閲覧いただきありがとうございました。

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