ユダ邸でのあれやこれ
「すごい綺麗な街」
私とユダはヒメルアウトに乗って街の景色を堪能していた。街を行き交う人々の満ち足りたような表情を見るといい街であることがわかる。
「そうだろー、まだ街ができて2年しか経ってないからな。まだ建設中のところも多いからもっと大きくなるだろうな」
「2年!?」
結構な大きさの街を2年で作るなんて普通できないわよね。一体どうやって⋯。
「何でこんなに発展してるかというと、この街に住む奴らの多くは連合に所属する魔力持ちだから建物の建設が普通よりも早くできること。連合の始まりが元々は力を持つ家門同士の集団だったっていうことがでかいな」
この街に住む大抵が魔力持ちってとんでもないわね。連合は実力主義の集団としても有名なところだし、実力も人材も揃っているとなるとここまで街が発展しているのも納得だわ。
「そろそろ見えて来る頃だな、あの小高い丘にあるのが俺の家だ」
そう言ってユダは丘の方に指を指した。指を指した方をむくと町外れにあり、本部から大分遠くにある。
「どうしてこんな町外れに家があるの?」
右大将という地位にいうのに本部から結構な距離があり、街からも距離がある。ユダは瞬間移動を持っているとはいえだいぶ不便なんじゃないかしら。
「ああ、力の強いものが万が一襲撃を受けたとしても迎え打てるようにうちの組織では力を持つものが街のいちばん外側に住むようにしてるんだ。大将やアシェル、ルイスも例外じゃない。」
なるほど、防衛の要として配置されているのね。まあ、ユダたちのような実力者達が襲撃に待ち構えていたら襲撃してきたものにとって悪夢でしょうね。
「着いたぞ」
そうこうしているうちにユダの邸宅まで着いた。使用人はいないと言っていたから一人暮らしだったんだろうけど、この大きさの屋敷を一人で?
そう思案していると、私たちの気配を察知してか中からリアムが出てきて出迎えをしてくれた。
「お待ちしてましたよヘレナ様、ユダ」
「待たせたわね」
「遅くなってすまない先輩、どうだった俺の家は」
「立派なのは間違いないが、生活感無さすぎて本当に住んでるのか分かんなかったぞ」
「ほぼ寝に帰ってるだけだからな、ここ」
そういえばエルラメド家にディアモンド様が来た時に仕事量が異常だとかユダが言ってたわね。相当なワーカーホリックだわ。
「部屋まで案内しよう。二人の部屋は一応俺が整えたが気に入らなかったら自分好みに改造してくれ」
そう言ってユダは家の中へと入っていき、私達もユダに着いていく。玄関の正面にある両階段を上り左に行くと美しい意匠の扉が見えた。ユダはその扉を開いて私に入るように促す。
「ここがヘレナの部屋だ」
白を基調とした部屋で天蓋付きのベットに猫脚家具が取り揃えられており統一感がある。そしていつの間にか私の荷物が積まれていた。
「荷物いつの間に⋯」
「エルラメド家から連合まで瞬間移動した時に荷物にはこの部屋に行くように別の瞬間移動の魔法陣を展開してたんだ」
二つ同時の魔法陣展開ができるなんてユダは本当に凄まじい実力の持ち主だと改めて思う。
それにしてもこんなに私好みの部屋を設えてくれるなんて⋯もしかして真理眼で私の好みを知ったのかしら。
「ありがとう、気に入ったわ」
「好みにあったようで何より、明かりを調整する魔法道具に部屋の温度調節をする魔法道具は扉横にある棚に置いてある」
本当に文句のつけようのないし、ここから改造なんてしたら逆にダサくなるんじゃないかしらこれ。
「じゃあ俺は先輩に先輩の部屋を案内するから荷物の荷解きでもしててくれ」
そう言ってユダとリアムは部屋を出ていき、私は荷物へと目を向けた。
積み上がった荷物をこれから荷解きしないといけないのかと思うと少し憂鬱ね⋯。やっぱり荷物をもっと厳選するんだったかしら。
✶ ✶ ✶
あれからだいぶ時間が経ち、山のような荷物の荷解きと夕食、入浴を終えて談話室でリアムと話していた。なぜ自室ではなく談話室にいるのかというとユダに呼び出されているからだ。
まだかなと思っていると風呂上がりのユダがやってきた。しかも半裸で。見慣れない男の人の体に思わず顔が赤くなりそうになる。
「ち、ちょっと!服着なさいよ」
「えーあづー、やだー」
ユダはごねていたけれど結局リアムに羽織るものをかけられ仕方なく着た。そんなに暑いのに何で雑面を外さないんだろうと思う。
暑さを少しでも軽減させるためにユダは長い髪をひとつに纏めて首元を露出させたのだが、髪を纏めたため耳も露出した際に左右にピアスが幾つかあった。全部バラバラで全く統一感がない。ピアスといい、雑面のといい、なんだか顔周りがゴテゴテしてるわね。
「そんなに暑いなら雑面を外せばいいじゃない、何で外さないの」
「うーん、色んな事情が絡まりあってて説明が難しいな。強いて言うならある人物達から俺の素顔がバレないようにってところかな」
身を隠しているってこと?ユダみたいな反則級に強い人がそんなことを気にするなんて⋯相手方は相当な手練とかなのかしら。
「まあ、お前たちに見られて困ることは無いが⋯見たいのか?」
「「見たい!」」
リアムと言葉が被った。実はずっとユダの顔がどんな感じなのか気になっていたのだが、どうやらリアムも気になっていたようだ。
「俺の素顔を知ってるのは連合でも上層部の限られた奴らだから他言無用にしておいてくれ」
そう言ってユダは雑面に手をかけた。ユダの顔って極秘扱いなの?そんなことを言われたら少し緊張してきたわ。でも好奇心の方が勝ってる。
ユダがタートレイとしてエルラメド家にいた時とどう違うのかしら。でも人は変わっていないから表情とかは変わらないかも。
期待を寄せながらユダの顔を見つめていると、ユダはゆっくり雑面を外し、前髪をかきあげた。
綺麗⋯。
目の前には浮世離れしたそれはそれは美しい顔があった。雪のように白い肌に血のように赤い瞳が映える。また、垂れ目がちな目と上がり気味の口角が朗らかな印象を与えているのに加え、泣きぼくろにある黒子が大人っぽさを演出している。まさに理想の顔だわ。
そして何より、おでこにある赤い紡錘形の刺青のようなものが1番目を惹いた。
「おでこのは刺青?」
「いや、生まれつきあるものだから痣に近いと思う」
そう言ってユダは前髪を下ろした。体つきは筋肉が付いていて男性的だけど長髪も相まって顔だけ見たら女性と勘違いしてしまいそうだ。男女両方を魅了してしまいそうな容姿に畏怖さえ覚える。
「確かにこれは隠した方が良さそうだ。こんな顔の奴が戦場にいたら絶対になめられる」
私はユダの美しさに畏怖すら感じていた時にリアムときたら侮られそうな顔だなって思ってたの?やっぱりリアムってどこかズレてるなと感じたけれどその感性のおかげで私とも上手くやっていけているのだろうと思った。
「雑談はこれぐらいでいいだろう。そろそろ本題に入るぞ。リアム、実はヘレナに魔力が発言したんだ。だから、ヘレナに魔法の使い方について教えてあげてほしいのだが」
「えっ!?いつから魔力が発現したんですか!?」
リアムは心底驚いた表情をして私に質問してきた。上手く答えられない私に代わって、ユダは魔力因子適合実験のことは伏せ、私の魔力が眠っていたこと、そしてユダの影響によってその魔力は目覚め始めたと説明した。今までのユダの偉業を間近で見てきたためかそんなことがあるんだとすんなり納得してくれた。
「俺が魔法についてヘレナに教えられればいんだが、あいにく今は仕事がまたりすぎててまずい状態だから代わりに魔法の基礎をヘレナに教えてほしい」
「そういう事なら任せてくれ、ユダほどとはいかないだろうが魔法は得意だからな」
「じゃあ本部の訓練場の使用許可を出しておくから自由に使ってくれ」
そう言って私達の話し合いは終わり、各々自室へと戻って行った。なんとも情報量の多い日だったわね。まだ私の匂いがしない新品のベットに横たわり、火属性、水属性、土属性、風属性、光属性、闇属性、そして無属性、それぞれのまほうを使う自分を思い浮かべる。私は一体どんな属性の技が得意何だろう。まだ自分の魔力すら感じ取れないような段階にいるのに、妄想だけが膨らんでいく。
そして私はワクワクで眠れなくなってしまい、翌日盛大な寝坊をかましてしまうのだった。
閲覧いただきありがとうございました。




