化けの皮
三対二の睨み合いが、一瞬で戦闘へと変わった。
リーダー格の男を中心に、三人は無駄のない連携で動いていた。一人が前に出て牽制し、もう一人が側面へ回り込む。残る一人は隙を窺うように距離を保っている。
(――こいつら素人じゃねえな)
冒険者を装ってはいたが、その動きは明らかに訓練された兵士のそれだった。
「――ガロン、右は任せた! 俺は左を崩す!」
「――おうっ!」
声を掛け合うと同時に二人は左右に散った。
側面から斬りかかってきた男の刃を、ルークは具現化した影の刃で受け止める。鍔迫り合いの拮抗は一瞬――そのまま影を波打たせるように変形させ、男の得物を絡め取った。
「――くっ……!?」
武器を奪われまいと踏ん張る男の隙に、ルークは低く姿勢を落とし、足払いを仕掛けた。体勢を崩したところへ、追撃の拳を叩き込む。
一方、ガロンに向かっていったのは、残る二人がかりだった。
「――囲め、二人で仕留めろ!」
リーダーの指示に従い、前後から挟み込むように仕掛ける。だが、ガロンの巨躯は、見た目以上に頑丈だった。
「――そんな挟み撃ちくらいで、おでは止まらねえぞ!」
吠えると同時に、ガロンは前方の男へ体当たりを敢行した。巨体がぶつかる衝撃に、男が大きく吹き飛ばされる。
「――が、ガロン、後ろだ!」
ルークの叫びにガロンが振り向きざま腕を振るう。背後から迫っていたもう一人の斬撃を、太い前腕で受け止めた。
「――ぐっ……硬い!」
「――当たり前だぁ! 熊族を舐めるなよぉ!」
力任せに振り払われた男が、たまらず後方へよろめく。
ルークは、その隙を見逃さなかった。
「――ガロン、そっちに二人まとめて追い込め! 挟み撃ちにしてやる!」
「――合点!」
息の合った連携で、ガロンが男たちを追い立てる。逃げ場を失った二人が後退した先――そこには、既にルークが回り込んでいた。
影が地を這い、鋭利な棘となって突き出る。
「――影棘!」
不意を突かれた男たちの足元から、闇の棘が突き上がった。
「――うわあっ!?」
悲鳴と共に、二人が体勢を崩す。そこへ、ガロンの拳が追い打ちのように叩き込まれた。
残るリーダー格の男が、舌打ちと共に距離を取った。
「――ちっ、思ったより厄介だな」
「――もう終わりだ。大人しく縛につけ」
ルークが構え直すと、男は忌々しげに周囲を見回した。仲間は既に地に伏し、逃げ場もない。背後は鬱蒼とした藪、左右もガロンとルークに塞がれている。ここから逃げ切るには、あの化け物じみた速さで距離を詰めてくる目の前の相手を、まず振り切らねばならなかった。
(――勝ち目もなく、逃げ切れる目もねえ、か)
「――ここまで、か」
諦めたように呟くと、男は武器を取り落とした。
戦いの興奮が冷めやらぬ中、ルークは荒い息を整えながら、ガロンと顔を見合わせた。
油断できないことは二人ともよく分かっていた。地に伏した二人と、武器を捨てて立ち尽くすリーダーの男――油断すればどこで牙を剥くか分からない相手だ。ルークは反撃の隙を与えぬよう、一人ずつ油断なく確認しながら、慎重に縄をかけていった。その間にも、ルークの脳裏には、消えない疑念がくすぶり続けていた。
(――こいつら、一体、何者なんだ




