# 第四十七話 支点の理屈(アウラ視点)
目を覚ましたダレンは、しばらくの間、自分が、どこにいるのか、理解できずにいた。
「坊主か。。?」
やがて、僕が、事情を説明すると、ダレンは、決まりの悪そうな顔で、俯いた。
「情けねえところを、見せちまったな」
「気にしないでください。それより」
僕は、以前、センセイから教わった図を、思い出しながら、切り出した。
「センセイが、ダレンさんの義足の作成を、手伝ってくれるそうです」
ダレンは、鼻で笑った。
「義足だと?今更、そんなもんで、何が変わる」
その投げやりな態度に、僕は、少し、苛立ちを覚えた。
「変わるかどうかは、やってみないと、わかりません。ダレンさんは、それを、確かめもせずに、諦めるつもりですか」
僕の言葉に、ダレンは、驚いたように、目を見開いた。かつて、いつも励ましてくれた側の人間が、今度は、自分が、励まされる立場になっていることに、戸惑っているようだった。
センセイが、木材と革紐を持って、姿を現した。
「歩くという動作は、重心を支える位置が、常に、移り変わり続けることの繰り返しです。片脚がない場合、その移り変わりが、極端になる。だから、うまく歩けなくなる」
センセイは、地面に、簡単な図を描きながら、そう説明した。マレアも、鍛冶の腕を活かし、義足の関節部分の、金属の留め具を、製作してくれることになった。
試作と、失敗の繰り返しが、始まった。ダレンは、最初こそ、投げやりな態度を崩さなかったが、日を追うごとに、少しずつ、真剣な表情を見せるようになっていった。
「ここの角度、まだ、合ってねえ気がする」
三度目の試作のとき、ダレンが、自分から、そう漏らした。かつて、賊との戦闘で、幾度となく、自分の身体の限界と、向き合ってきた経験が、義足の違和感を、的確に、言い当てていた。
義足が、ようやく、実用に耐える形になった頃、僕は、ダレンに、一つの提案をした。
「対練、してみませんか」
「対練だと? こんな脚で、まともに動けるわけがねえだろう」
「動けるかどうかは、僕が、確かめます」
僕は、そう言って、構えを取った。ダレンは、しばらく、躊躇っていたが、やがて、覚悟を決めたように、義足の脚で、地面を踏みしめた。
最初の組み手は、ぎこちないものだった。だが、繰り返すうちに、ダレンの動きに、かつての衛兵長としての、確かな技量が、少しずつ、蘇っていくのがわかった。
「思い出してきたぜ。身体の使い方、忘れちゃいなかったみてえだ」
汗を拭いながら、ダレンが、そう呟いた。その顔には、初めて出会った、あの優しい衛兵長の面影が、確かに、戻り始めていた。
「もう一本、お願いします」
僕がそう言うと、ダレンは、久しぶりに、あの、豪快な笑みを見せた。
「おう、来い、坊主」




