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イケメンを拾うと世界が変わる  作者: ろみ


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【閑話】期間限定のあれ 後編

 私はその後、ABCマートでスニーカーを1足買った。

 今日の支払いはセイが全部してくれてるんだけど、何やら端末に顔認識させてから指先で操作をしている。電子・・・。魔国に電力は無いから魔力?魔力マネーなの?

 まだまだ魔国には私の知らない事があるなあ。

 お話をしながらブラブラしていると、どうにかマックのお昼ごはん分の消化が出来たような気がする。

 今日の食後のデザートはサーティワンアイスクリーム!

 甘い物はセイも好きなので2人でキャッキャしながらフレーバーを選ぶ。

「俺はバニラとチョコ、スモールダブルのコーンで」

「う、ううう・・・私は、ポッピングシャワーとストロベリーチーズケーキとキャラメルリボンをトリプルポップでえ!」

 やってしまったかもしれない。

 少しは腹ごなしが出来たとはいえ、私、食べられるだろうか。

「食べきれなかったら手伝うから」

 出来過ぎた私の夫は、私のお腹の塩梅などお見通しである。

 セイの予想通り私は半分ほどでトリプルポップをギブアップした。残りは全てセイが美味しくいただいてくれました。

 そして時刻は丁度午後のお茶の時間。

 そろそろノエイデス家に差し入れする甘味も選ばなければ。

 手土産の購入先はミスドです。

 ミスドのドーナツの箱を見るだけで幸せになれるよねえー。私の旦那様は一万年遊んで暮らしても使い切れない程に資産があるそうなので、遠慮なくお土産のドーナツを選ぶ。なんと60個も!大人買いしちゃったなあー。今日は王城の公休日でお兄ちゃんもトーコちゃんもブランパパも家にいるはずだし、ノエイデス家の使用人さん達の分もあるからなあー。

「千紘はアイスも食べたいんじゃない?」

「さ、サーティワンのお土産も、か、買っちゃう?」

 すごい贅沢!

 普通どっちか1つでしょう!ど庶民の私からしたら物凄い散財ですけど!

 セイは私の手を取り、サーティワンの店舗まで引き返していく。

 結局お金持ちのセイに30個ほどアイスクリームもテイクアウトで買ってもらう。

「俺のお金は奈津のお金でもあるんだけど」

 支払いのお礼を言うとセイが笑いながらそんな事を言う。

 えへへ。2人で1つのお財布ですからね。

 ちなみに私の資産も癒やし手の働き分が私の口座なるものにかなり入っているらしいんだけど、残高を確認した事が無かったなあ。お金の確認の必要が無いって、日本に居た頃は有り得なかったけど、それだけ私はセイに守られて生活してるんだなとしみじみ思う。

 ドーナツ60個とサーティーワンアイスを30個持ったセイの両手はさすがに塞がっている。私はセイの後ろから腰に抱き着いた。

「掴まっててね」

 そうセイに言われた次の瞬間にはノエイデス邸の玄関前に私達は立っていた。



「きゃああああ!」

 いつも通りににこやかに私達を迎えてくれたちーちゃんは、ミスドのドーナツとサーティーワンのアイスの箱に我を失った。

「ミスドのドーナツとサーティーワンアイスが食べられるなんて!」

 簡単にお城のショッピングモールで手に入りましたよ。

 思うに、私とちーちゃんは魔国に来た当初から魔国最高権力者のセイの庇護下にあったので、逆に庶民の皆さんが行く場所に縁遠かったという事情もあったよね。

「ちーちゃん、フレンチクルーラーあるよ。チョコが掛かってるのもあるよ」

「た、食べ、食べていいの?」

「もちろん」

 玄関ホールで大興奮しているちーちゃんを連れて私達はノエイデス家のサロンに向かった。サロンにはお茶の時間という事もあり、みんなが揃っていた。

 興奮継続中のちーちゃんをまずはソファに座らせて、お目当てのドーナツを手に取ってもらう。ナプキン越しにドーナツを取り、ちーちゃんはサクリとひと口、大好きなフレンチクルーラーを齧った。

「おいしい・・・」

 目を瞑ったちーちゃんはうっとりとフレンチクルーラーを堪能している。

 名家の奥様としてはお行儀が悪いかもしれないけど、ミスドのドーナツはエイダお祖母ちゃんも多めに見て欲しいな。なんて思っていたら、エイダお祖母ちゃんはドーナツの箱の中身に興味津々だった。これは何です?とセイにずっと質問している。

 そうだった。エイダお祖母ちゃんは結構チャレンジャーだった。鈴カステラに齧り付いていたお祖母ちゃんならミスドも余裕でいけるよね。

 双子はちょうど起きていて、狂乱のちーちゃんをポカンと見つめている。クリスはトーコちゃんに、エリカはお兄ちゃんに抱っこされている。しかしエリカはセイを発見した瞬間から、お兄ちゃんの腕の中で掴まれたウナギのようにジタバタし始めた。

「アアーーッ!!」

 エリカは声も超大きい。

 まだ見た目は全然赤ちゃんなんだけど、エリカの自己主張は非常に明確で力強い。パパもママもお祖母ちゃんも好きだけど、セイが現れた瞬間にエリカの一番はダントツでセイになってしまう。

 ちなみにお兄ちゃんはエリカにとって、誰もいなければ抱っこされてやってもいい位のポジションっぽい。しかしお兄ちゃんはエリカの不意を突いては抱っこしに行っている。隙を突かれてうっかりお兄ちゃんに抱っこされちゃうエリカも可愛らしい。今も自分を抱っこしているお兄ちゃんを認識して、エリカがハッとしていたもんね。もう少しエリカが大きくなったら、今度は本気で遊んでくれるお兄ちゃんの事が大好きになるんじゃないかなー。

「わかった、わかった。セイ、エリカを頼む」

「うん」

 お兄ちゃんの腕の中でエビ反りになっていたエリカは、本人のご希望通り無事セイの腕の中へ。セイに抱っこされると、今度はセイの髪に手を伸ばし始めるんだけど、サロンに入る前にセイは髪をお団子に纏めているので抜かりはない。セイの髪を触れないエリカは、今度は熱心にセイの顔を見つめ始める。向かい合ってじっと見つめ合う2人は何とも微笑ましい。

 かたやクリスは全く人見知りしない子で、誰にでも抱っこされてくれる。今はトーコちゃんの腕の中で、静かに自分の右手を左手で掴んで何やら考え込んでいる。一人遊びがとっても上手なクリスだった。

 クリスは赤ちゃんに触れあいたいノエイデス家の大人達に大人気で、家族や使用人の皆さんは入れ替わり立ち替わりクリスに抱っこさせていただく日々。誰にでも面倒をみさせてくれるクリスにはちーちゃんもとても助かっている。

「エリカはセヴェルカルムの顔も好きだよな」

「セヴェルカルム様が男性の基準になったら将来苦労するでしょーよ。結婚できないかもよ」

「それならずっと家に居ると良い。結婚なんかしなくていい」

 相変わらず親バカをこじらせているブランパパの、ノエイデス家女性陣にご注意受けそうな発言だったのだけど、幸いちーちゃんとエイダお祖母ちゃんはアイスクリームのフレーバー確認に忙しかった。

 そのブランパパは、何だかちょっと元気なくソファに沈んでいる。

「チヒロ、ショッピングモールでは君の思い出の味を楽しめるのだね。少し考えればわかりそうなものを、私は君を日本の店に連れて行こうなんて思いつきもしなかった。気の利かない私を許しておくれ」

 なんとブランパパはミスドとサーティーワンに歓喜したちーちゃんを見て落ち込んでしまったようだ。

 ちーちゃんはアイスクリームから離れて、ブランパパの隣に座りパパの手を取る。

「ブラン、ごめんなさい。そんなにしょんぼりしないで?あなたとの生活には満足しているわ。ノエイデス家の食事は美味しいし、元の世界の食べ物なんて思い出さない位だったの。でも今日は、ちょっと懐かしくてはしゃいでしまったわ。あなたを傷つけるつもりは無かったの」

「ブラン、俺もまったく思いつかなかった。奈津が月見バーガーを食べたいって昨日居間を転げまわっていたから、今日ショッピングモールに連れて行ったんだよ」

 セイの暴露にトーコちゃんが爆笑して、お兄ちゃんが呆れた顔をしてこちらを見る。

 私が煩悩に塗れて悶え苦しんでいた事を、ここでばらさなくっても良くない?!

 でもこんな話でブランパパが元気になるならいいですけども!

「ブラン、今度2人でショッピングモールにデートしに行きましょう。私が好きな物を教えるわね。あなたが好きな物も見つかるかしら?楽しみだわ」

「ありがとう。それは素敵なお誘いだ」

 ちーちゃんとブランパパが手を取り合い、微笑み合っている。

 はー良かった良かった。

 差し入れでブランパパが凹んでしまうとは予想外だった。

 しかしちーちゃんとブランパパ、新婚の私とセイよりもよっぽど熱々です。

「お嬢様、帰りにこちらをお持ちください」

 セバスチャンさんがワゴンに乗せて白い箱を持ってきた。

 箱の中身はシブーストケーキ。今日の午後のお茶と一緒に出す物だったらしい。

「ごめんなさい。何も考えないで差し入れ持ってきちゃった」

「何をおっしゃいますか。奥様も大奥様も大変なお喜び様で、よろしゅうございました。私共にまで差し入れを頂きまして、ありがたく頂戴いたします」

 ノエイデス家の方々が食べきれないものは、使用人一同で楽しませて頂きますのでご心配なく。との事だったので私も一安心だ。

 シブーストケーキは、明日お爺ちゃん達が来る日なので残しておいてあげよう。

 お土産も渡せたし、もうそろそろ帰ろうかとエイダお祖母ちゃんに声を掛ける。

「・・・ごめんお祖母ちゃん、ドーナツ2個だけもらっていい?」

 小声でエイダお祖母ちゃんにちょっと恥ずかしいお願いする。

 自分達の分のドーナツを買うの忘れちゃったんだよね。ミスドのドーナツも久しぶりに食べたい・・・。

 エイダお祖母ちゃんは私を突然ぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。

「まったく!私の孫はどうしてこんなに可愛いのかしら!」

 私の子供じみたお願いが、エイダお祖母ちゃんの保護欲の琴線に触れてしまったようだ。

 エイダお祖母ちゃんはドーナツを5個もくれた。

 わーい。ドーナツもお爺ちゃん達と分けて食べよう。

「ちーちゃん、再来月はグラコロが期間限定だよ」

「もう!そんな事を聞いたら、絶対食べたくなるじゃないのー」

 ブランパパとちーちゃんのマックデート。なかなか面白そうである。

 是非2人で楽しんできて欲しい。


 お土産のケーキを貰い、さらに手土産で渡したはずのドーナツも分けてもらい、私達は清川家に帰った。

「今日は更に暴飲暴食の限りを尽くすぞー」

 今日はお昼から午後のおやつまで、欲望に任せて暴食を限りを尽くした私。

 けれどもなんとこれから、私は夜ご飯を食べずにミスドのドーナツとケーキを食べるつもりなのだ。理性の欠片もない、悪虐非道の行いだ。

 でも大丈夫、明日はローカロリーのトランお爺ちゃんお魚定食でリセットするんだ。

「明日はウォーエンドッドが良い肉でとんかつ定食出すんだって」

「ええー!」

 何という事。

 ドッドお爺ちゃんのトンカツは、パンチと軽さが奇跡の共存をしていて、いくらでも食べられる大人気メニューだ。まあお爺ちゃん達のメニューは全部大人気なんだけどね。その日出せる最高の食材で最高のメニューを出してくれるので、お店に行くまで何があるのか分からないのもお客さん達は楽しいらしい。

「ううう、トンカツは食べざるを得ない・・・」

「なんでも奈津の好きに食べたらいいじゃない」

 唸る私をセイは爽やかに誘惑してくる。

 セイと寿命を半分こして、私の体はほぼ魔族となった。

 切り傷、打撲とか怪我は普通にするけど、病気には全くならない。風邪すらひかない丈夫な体になった。しかしこんな頑丈な体になったけれど、不摂生は如実に体に反映されるのだ。食べるの大好きな方々はぽっちゃりしているしね。私も、セイに抱っこされてばっかりの時期があって、ちょっと、体のラインが、心なしかぼんやりと・・・。

 セイは私に対して激甘なので、例え私が今より体重が30キロ増になったとて、「好きに食べたらいいじゃない」とニコニコしながら絶対言う。

 だから自己管理は絶対に必要だ!

 でも、明日のトンカツを食べてからダイエットは頑張ろう。ダイエットは明後日からとします。

「俺も今夜は奈津と一緒にドーナツとケーキにしちゃおうかな」

 セイは可愛く笑うと清川家の台所にコーヒーを淹れに行ってくれた。

 マックのハンバーガーセットに始まり、サーティーワンアイス、ミスドのドーナツ、お土産のシブーストケーキといった私のフードトライアスロンにセイは嫌な顔一つせず付き合ってくれる。

 セイは私の最高の恋人で、最高の親友で、最愛の旦那様だ。

 セイと一緒ならこの先数千年、毎日楽しく笑って暮らしていける自信がありますよ。

 私達の楽しい1日はまだ終わらない。

 私とセイはいそいそと背徳の夕食の準備を始めるのだった。


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