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イケメンを拾うと世界が変わる  作者: ろみ


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二人の癒し手 4

 その後高橋さんと彼女を連れ出した男性は王城に連行された。二人は王城の地下牢に拘留されたと聞く。

 そして、王城で異界人が起こした騒動に対しての裁きが下されることになった。

 その日私はお城の侍女さん達にまたも目一杯捏ね繰り回されて、お城の謁見の間の王の椅子に座るセイの膝の上に座っている。王の椅子を中央に、左右には幹部の皆さんが続々と整列し始めている。王の椅子から一段下がって、セイの左手にはブランパパが、右手にはお兄ちゃんが控えていた。

「パパ、パパ」

「どうした、ナツ」

「私の居る場所おかしいでしょ」

「そんなことはないが」

 私がこそっとブランパパに話しかけると、ブランパパは良く通る良い声でお返事してくれる。おかげでワイワイと整列していた幹部の皆さんがこちらに注目する。

「ナツ、俺にも原因の一端があるが、あの騒動で「黒頭巾の癒やし手」の正体がバレ始めている。下手に隠すよりは、今日公表して完全にお前を魔王の庇護下に置く」

「ええー・・・」

 お兄ちゃんから今日の目的が伝えられた。

 そうかー。いよいよカミングアウトかー。

「ナツ、そんなに不安がるな。魔王の宝玉を、我ら臣下が必ず守り通すと誓う」

 ブランパパがカッコいい事を言ってくれるけども。

「奈津、覚悟を決めて。魔王の俺と添い遂げてくれる?」

「は・・・、はい」

 て、照れる!

 目の前のスパダリが私をキュン死させようとしてきて、色々始まる前から酷く疲労感を覚える。整列している幹部の皆さんの目も心なしか生温かい。トーコちゃんはめっちゃ笑顔でこちらに手まで振っているし、フォークさんはニヤニヤしている。

 王城の謁見の間はとても広く、左右に並ぶ幹部の方の下には各部門の職員の皆さんも並んでいて、一度見た王城会議に比べると今日の集まりはとても大きいものだった。

 高橋さんの裁判が始まる前に、サクッと私についてセイから話がされた。

「俺の玉は魔障害の全てに有用な力を持つ。噂になっていた「頭巾の癒やし手」は俺の玉の事だ。重篤化した魔障害のみ、俺の玉の治療を受けさせる。希望あらば宰相に申し出ろ」

 以降問答無用、とばかりにセイからの私の説明は終わった。

 会場は静まり返っている。

 これ、会場理解できてる?玉って、私ですよー。

 言葉少ないセイの声明内容に不安を感じつつ、その後高橋さんの裁判が始まった。

 謁見の間の大扉が左右に開き、高橋さんと、彼女と一緒に拘束されていた男性の2名が衛兵に付き添われ、人々の間をこちらに向かって歩いてくる。

 私とセイまであと10メートルという辺りで高橋さんと男性は膝を付かされ、跪く態勢を取らされた。高橋さんはチラリと私の顔を見たけど、この前の元気はなく、少し目線を下げて前を見つめていた。

 まず最初に罪状認否がされた。男性は言われるがままに罪を認め、高橋さんは黙ったままだった。高橋さんが黙秘していても、現場を魔国将軍の2人が抑えているので裁判はどんどん進んでいく。

 そして、残すところ、二人の罰について魔国から決定が下される所まで来た。

「だる・・・、ウッザ!!」

 それまで黙っていた高橋さんが突然大きな声を出した。

「はー、もういいわ。テンション下がる。ここ出ていけばいいんでしょ?さっさと家に帰してくんない?」

 高橋さんはそう言い放った。

「そこの人!帰してくれるって言ったよねぇ!さっさと元の世界に戻してよ!!」

 高橋さんはお兄ちゃんに向かって声高に叫ぶ。

 高橋さんのあまりな態度に会場がざわつき始めるが、ブランパパもお兄ちゃんもセイも、無言で高橋さんを見つめ続けている。

「か、帰してくれるって言ったじゃん」

 無言の時間が続くと、途端に高橋さんは弱気になった。

「お前を元の世界には戻せない」

「えっ・・・」

 セイの返答に高橋さんが言葉を失った。

「この世界の血肉がお前と混ざり合い、お前はこの世界の理に縛られた。お前はその腹の子と一緒にどこぞで生きていけ。魔国より追放を言い渡す」

「え・・、何?嘘・・・。やだ、嘘でしょ・・・」

 セイから高橋さんへ処罰が下された。

 驚くべき結末に、私も無言で成り行きを見守ることしかできない。

 妊娠をすると元の世界に帰れなくなるなんて、思いもよらない事だった。望んでそうなるならこの上なく幸せな事だろう。でも、この魔国を小説かゲームの世界のように思っていた節のある高橋さんは、子供が出来る可能性すら考えていなかったのではないか。

「隣の男はお前の子の父親か。せめて一緒に追放してやろう」

「誰が父親かなんて、知らないし!」

 高橋さんの隣で男性が肩を揺らした。

「言葉も通じない訳分かんない場所に突然飛ばされた!自分を守るために体を使って何が悪いわけ?!」

「辺境といえど、異界人の保護は手厚く行われたはずだ。お前も辺境の森ですぐさま保護されたと聞く。保護施設で言葉の習得もすぐに出来ただろう。衣食住も保証され不自由は無かった筈だが、体を取引に使う必要がどこにあった?」

「私は被害者でしょ?!ダメ出し止めてくんない?!こんなところ来たくて来たわけじゃない!周りが私を助けてくれるのが当然でしょ!一回ヤレば誰でも私のいう事聞いてくれたし!」

 ブランパパにも高橋さんは食って掛かる。

 もう高橋さんの言っている事は滅茶苦茶で、聞いているのが辛い。

「ふざけんなよ、清川ぁ!お前、人見下ろしてんじゃねえよ!!」

 突然高橋さんの矛先がこちらに向いた。

「清川のくせに何なんだよ!その服全然似合ってねーし!そこ降りろよ!」

 高橋さんが衛兵の手を振り払い、こちらに走り寄ろうとした瞬間、その姿はかき消えた。

「耳が汚れたね」

 セイが私をギュッと抱きしめて、頭のてっぺんにキスを一つ落とす。

「あれの言い分など聞く必要もない。王都で犯したことが全てだ。お前はあれの後を追うか?」

 セイが取り残された男性に尋ねた。

「叶いますなら」

「物好きなものだ」

 静かな笑みを湛えた男性が次の瞬間には姿を消した。

 魔国の周囲には3つほどの人が治める国がある。国境の外まで魔国軍が送り届けた後は、魔国と国交も無いいずれかの人の国を目指して、あの二人は過酷な旅をしなければならないということだった。

 どうにもならないけれど、なんとも後味の悪い幕切れだった。


 王都の癒やし手の噂は、噂の当人の高橋さんが居なくなったことで鎮静化するかと思ったら、私が顔出しカミングアウトしたことで「癒やし手はいる」、「頭巾を被った癒やし手が居る」と情報が錯綜しているそうだ。

 治療院のカールさんにも癒やし手について問い合わせが殺到しているそうで申し訳ない。業務に支障が出る位かなと心配していたのだけど、「お気になさらず」とカールさんは涼しい顔をしている。ブランパパが窓口だとあの場で言った筈なんだけど、ブランパパには申し出が全くないようで、何だかなーと思いながらも私は穏やかな生活に戻っている。


 高橋さんの裁判が終わって、しばらくしてフォークさんとその部隊が辺境に戻る事になった。

「ナツ様には大変お世話になりました」

 お兄ちゃんの執務室でフォークさんからお別れの挨拶を受けた。

 高橋さんと追放されてしまった男性は、フォークさんの部下だったそうだ。その件も含めて部隊長として、フォークさんは色々大変だったと思う。本人は「俺の処罰は半年の減給で済みましたー」なんてカラッと笑っていたけど。

 アイザさんもフォークさんもしなやかで強い。

 強かったり、弱かったり。泣いたり、笑ったり。

 色んな人がいて、魔国の人達は現実を生きている。


 高橋さんとの再会はショックも大きかったけど、一つの心の整理がついたと思う。

 そしてもう一つ気がかりだった事を思い切って片付けることにした。

 清川家のお墓をセイにお願いして神域に持ってきてもらったのだ。

 元の世界には親戚も友達もいないし、これで未練は一切無くなった。

 縁も所縁もない魔国にお墓を持ってきてしまって、お爺ちゃんとお祖母ちゃんとお母さん、お父さん、みんな驚いたかもしれない。ごめんね、これからはこの土地で私がお墓を守っていくからね。いずれ私が居なくなったら、私の新しくできた家族に守ってもらうようにするからね。

 お墓のお引越しをする際、高橋さんの一件もあったので、私はまだ元の世界に戻れる状況か確認してみた。

「まだ大丈夫」

 というセイの返事だった。

 まだ。

 そうだね。いずれ戻れなくなる日もくるかもしれない。

 とっくに決めたていたことだし、状況がどう変わっても全く構わない。

 私は魔国で、大切な人達と生きていく。


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