うー
まあ、まず問題ないだろう。
魔理沙の協力者と聞いた時、どのような曲者かと身構えたが、いたって普通の青年だ。
歳は私と同じくらい。セリフも普通だ。
なるほど、私は始めかなり警戒していた。だが、彼自体は善良である。どちらかというと、魔理沙がここに連れ込んだことが問題なのだ。
食事のマナーも完璧だった。指摘してやろうと思っていたのだが、まるで非の打ち所がない。それどころか、お嬢様がムニエルを召し上がる時に、食べやすい方法を教えてあげるほどであった。
さらに言えば、彼の手つきがやけに大人びている……というか、保護者のようだった。お嬢様を前に、まるで母親のような仕草をするときがある。
肝の据わった人間だった。
彼は、にこやかなまま、手にはフォークとナイフを取る。食事は半分ほど終わった。
「で、咲夜さんはいつからここで働いているのですか?」
「え……! いや、私のことはお気になさらず」
「いえいえ、女性は皆平等ですよ。どうぞお気になさらず」
お嬢様がムニエルを食し終えた。紙エプロンを整える。
「あら、あなたって以外と紳士的なのね。見直しちゃったわ」
「あれれ〜? 僕って生まれてこのかたずっと紳士だったんでけど気づかなかったですか?」
「まだまだね」
「あちゃ〜」
お嬢様とここまで打ち解ける人間もめずらしい。
「で、先ほど入っていた約束の件なんですが、そろそろよろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ」
約束? 一体なんの話だろうか。
「僕がこの屋敷でしばらくお世話になる話についてですが……」
ええ!? 今なんと!?
「そうなの咲夜、彼はこれから一ヶ月ほどここで暮らすことになったわ。よろしく頼むわね」
「そんな……チョット待ってくださいお嬢様!! 一体なぜそのようなことに?」
「あら? 従者が私に意見するというの?」
「えっ、いえ、そのようなつもりは毛頭……」
「ならいいでしょ。彼も咲夜に手間はかけさせないって言ってるし」
「そうですよ咲夜さん、チョットくらいいいじゃないですか」
どの立場で物言ってるんですか。
ありえない……たった数分前にこの屋敷に侵入した、この人間を屋敷に住まわせるなんて……
「お、お嬢様、ではせめてどうしてそうなったのかだけ教えていただけませんか?」
「いやよ、主人からの命令だと思いなさい」
「あー、さっきマジックのタネ見破れなかったこと言いたくないんですね」
「うー!! やめてよ、赤塚!」
「じゃ、もう一戦やってみますか? 今度はレミリアさんのお願い事聞いてもいいですよ」
「いいじゃないの、やってやるわよ」
大変なことになってる。早速、この赤塚という男が馴染み始めた。いや、別に排除するわけではないのだが……お嬢様に男を近づけるのはチョット……
もし、万が一にも、恋愛という話になったら。彼は外の世界の人間なのだから、トラブルが生まれるに決まっている。
そういえば、彼にもそれくらいわかっているはずだ。なのに、なぜこうも女性をおちょくるような発言ばかりするのだろうか。
この男……なるほど、そういうことだったんですか。お嬢様。
「わかりました、お嬢様。では、早速赤塚さんの寝室を準備いたします」
「頼んだわよ」
「僕も手伝います」
「結構ですので、ぜひごゆるりと」
なるほど、そういうことでしたかお嬢様。
赤塚さんは、色恋沙汰で幻想郷に異変をもたらす、その可能性があるのだ。それを判断すべく単にそばに置くというわけですね。流石です。
私、十六夜は、少しでもお嬢様が赤塚さんのことを好いてしまったのではないかと心配になっておりました。
ですが、そうとわかればこっちのものです。その任務、全力でをお受けいたしましょう。
……そうね。誕生日プレゼントは後でお渡ししましょうか。
「ねえ、赤塚くん。その、レミリアさんって呼ぶのやめなさいよ。堅苦しいじゃない、ね?」
「いや、レミリアさん。さすがに、会ったばかりで呼び捨てはできないですよ」
「何を言うのよ、私はこう見えてもあなたより年上なんだから。気にしなくていいのよ」
「ですが……咲夜さんにぶっ飛ばされそうです」
「……確かにそうね、なら、私たち二人の時だけそう呼ぶってのはどうかしら?」
「じゃあ、レミリアって呼ぶのはさすがに抵抗があるので、レミッチって呼んでいいですか?」
「は!? チョット待って、それならいいのかしら……矛盾してない?」
「いいえ、その方がフレンドリーで、誤解されずにすみませんか?」
「え……そうかしら、いえ、きっとそうね。わかったわ、じゃあそう——」
「やっぱりレミリアって呼びますね。これからもよろしくお願いします」
「うー……わかったわ、よろしく」
僕の計画は動き始めた。




