第5話 笑いが止まらない
「ふぁ……。あ、そうかかえってこれたんだっけ」
ゲートの中から帰ってきて次の日。私は自分の部屋で目を覚ます。いつもの自分の部屋、白い壁にDモンのキャラクターのポスターが飾られてる。
私の好きなキャラクターはリミンというモンスター。狼のユニークモンスター。
ユニークモンスターはそのモンスターの亜種、つまるところ強い版。つまり狼の強いモンスター。
ピンクの毛並みがとてもプリティーで最高なのよね~。モフモフしたい……。
「あ、そうか。いつかリミンにも会えるかもしれないんだよね。カード化できれば仲間に出来るかもしれないけど……。無理なんだよな~」
正直なところゴブリンをカード化できなかった時、かなりショックだった。モンスターをカード化できれば出来ることがかなり増えたしね。
戦うのなんて私できないし、代わりに戦ってくれる人かモンスターが居れば万事解決できたしね。
「そうだ。会社に行かないと。やめるために会社に行けるのはかなり嬉しいな~」
私が辞めるなんて言ったら神崎課長どんな顔するだろう。今から楽しみ。
「手荷物は財布とスマホだけでいいか。カード化すれば全部バッグに入っちゃう。便利~」
会社でこの力を見せびらかしたいな~。ってレア度の高い能力だから極力使わないようにしないとね~。
財布とかはカード化しないで行こう。
「カード化か~。合成して強くすることもできるんだよね~。……なんでもできるのかな?」
ウズウズ……。
私は興味本位で冷蔵庫のビールを一本手に取る。そして、カード化。
「キンキンに冷えたビール。これを二つ用意しまして~」
ーーーーー
【ビールを複数確認しました】
【合成しますか?】
【YES/NO】
ーーーーー
透明なウィンドウに言われてYESを選択。カードが光り輝いて一つになっていく。
「ビール+1……。ごくりっ」
朝っぱらからビール。これは最高の休日の楽しみ。そこもプラスされたビール。旨さもプラスされているのだろうか。
「アユミ。ダメよ。これから会社に最後の挨拶をしに行くんだから……。ビールの甘い言葉に負けてはだめ……」
私は自分の欲望に勝とうと呟く。しかし、やめる会社に朝っぱらからビールを飲んで行っても別にいいかと思い立つ。そして、ビールをプシュッと開ける。
「んぐんぐんぐっ! プハッ~! これよこれ~。って味はそんなに変わってないように感じるな~」
もっと美味しくなっていると思ったけれど、そんなに変わってない。まあ、ビール会社の努力をそんな簡単に上回れないわね。
「あ、あれ……。なんだか体が軽い?」
ふと体の異常に気がつく。起きたばかりの体の重さがなくなっていることに気がつく。
「もしかしてビールのおかげ? プラスした物の検証が必要かもしれないわね~」
まだまだ分からないことだらけだわ。色々と試してみないと。
「おっはようございま~す!」
支度をして会社にやって来た。元気よく挨拶をするとみんな素っ気なくお辞儀をしてくる。
「あ? サカキか。お前やめたんじゃねえのか?」
「あ、はい! 最後のあいさつに来ました。これつまらないものですけど」
「東京バハマか。ほんとつまらねえな~」
「はい?」
神崎課長が私に気がついて声をかけてくる。既に会社には通知が来ていたようだ。
私はお払い箱と言った感じ見たい。それでも今まで一緒に働いた人にこんな対応するかな?
「神崎課長。もう少し言葉をどうにかできないですか?」
「あ? 何言ってんだ? もうお前はこの会社の人間じゃねえんだからそんなもん必要ねえだろ?」
「はぁ?」
会社に勤めていても言葉遣い荒かったでしょうが。心の中でそう叫び睨みつける。私よりも小さな男神崎課長。見下ろしてやると彼は見上げてくる。
「な、なんだ? サカキのくせに生意気な」
「神崎……。今までどうもありがとうございました。これからはその小さな器を大きく見せるように頑張ってくださいね」
「はぁ? てめえサカキのくせに俺を見下ろすのか?」
「神崎のくせに生意気ですよ」
睨みあう私と神崎。オフィスにピリリと緊張が走る。
「ちょ、ちょっとサカキさん」
このオフィスの最後のオアシス、星野さんが止めに入ってくる。おっとりしたお姉ちゃんの彼女は私を慰めてくれていた。このオフィスのプラスの部分は彼女だけよ。
「星野さん。止めないで、こいつには最後に言っておかないといけないことがあるから」
私はそう言って再度神崎を睨みつける。
「神崎。あんた口が悪すぎるのよ。それじゃ新人はすぐに辞めちゃうわ。早くやめなさい。それと、ペンをカチカチするのやめてくれる? 子供だからいじっちゃうのはわかるけど、迷惑なのよ」
「こど! ……てめえ、本気で殴られたいのか?」
「どうぞ、やってみなさい。まあ、もうできないけどね」
「なめやがって!」
神崎は顔を赤くして殴り掛かってくる。ゴブリンと比べても遅い拳。私はため息をついて人差し指で止める。
「な!? 動かない!?」
「聞いてなかったんですか? 私、冒険者になったんですよ。それもレア度5の冒険者です! つまりはあんたなんて片手で倒せるんだからね~」
神崎の顔が面白くて言っちゃった。でも、普通の人はレア度のことなんて知らないよね。
でも、最高の気分。顔を青ざめさせる神崎が見れた。
「お、お前なんてうまくいくはずないだろ! またここに帰ってくるのがオチだ!」
「はぁ? そんなわけないじゃん。だって、日当100万円の冒険者だよ~」
「は、はぁ!? ひゃ、100万!? う、嘘だ!」
「嘘じゃありませ~ん。私の机の私物を回収させてもらいますね~」
あ~、笑いが止まらない。神崎の顔が赤くなったり青くなったりして楽しすぎる。下剋上ってこんな気分なのね。最高。




