第4話 政府管理
「さっきは名乗りもしないですまない。私は【司祭】の職業を持つ冒険者の上田 和樹」
「あ……。私はサカキ アユミです。さっきはありがとうございました」
お礼を言うと彼はニッコリと笑う。秋葉原から車に乗り込んで新宿へ。誰でも知ってる都庁に入っていく車。
冒険者って都庁に施設があるんだ……。なんだか緊張してきた。
「あまり緊張しないで大丈夫だよサカキさん」
「あ、はい~……」
車から降りてエレベーターへ乗ると更に緊張が走る。足が震える……。エアコンの風が体を冷やしているように感じる。ってエアコン冷たすぎ、流石都庁。銀行みたいだ。
「ミズキさん。新たな冒険者を連れて来たよ」
「あ。ウエダさん。えっと、そちらの方ですね。ではこちらで登録をしてください」
ウエダさんが声をかける。ミズキと言われた女性が案内するのは銀行の受付のような席。普通に名前と職業を書くだけの紙が目の前に置かれる。
「スキルの名前も記入していただけるとありがたいです」
「あ、はい」
ミズキさんに言われるままスキルをかいていく。
「え? カードゲーマー? スキルカード化?」
記入して手渡すと彼女は首を傾げる。どうやら、知られていない職業とスキルみたい。
「えっと。どういったものなんですかね?」
「見せた方が早いですかね」
首を傾げるミズキさんにゴブリンのこん棒のカードを見せる。カードをこん棒にして見せると、彼女は驚いて何度もこん棒をつつく。
「これはインベントリなどと同じくらいのレア度ですね。星はいくつですか?」
「……5です」
「え? 5?」
「……5です」
何度も聞いてくるミズキさん。嘘をついたら恐ろしいことになりそうなので素直に答えた。本当は答えたくない。だけど、怖いので答えた。彼女は手を震わせ始める。
「ご、ごごご、5ですか?」
「……残念ながら」
「残念じゃないですよ! 凄いじゃないですか!」
「はぁ~……残念だと思いますけど」
ミズキさんが褒めてくれるんだけど、私は嬉しくなかった。だって、政府に管理されてしまうんだもん……。
「はぁ~。日本政府は嫌われてますよね~。知ってましたけど。色々説明させていただきます。誤解を解くために」
ミズキさんは大きなため息をついて大きな本を取り出す。
「え~、サカキさん。五つ星のスキルを持っている方だけが政府に管理されているわけではありません」
「え。そうなんですか?」
「はい。先ほどのウエダさんは三ツ星のスキルの回復魔法を持っている方です。政府が管理する冒険者の一人です」
ウエダさんもそうなんだ。思ってみれば政府も冒険者を擁立したいと思っているわけだから、色んな人に声をかけてるのか。
アメリカとかもそうだけど。インドの件で世界は知ったんだよね。冒険者を多く擁立している国が勝つって。
「日本政府は冒険者を優遇しています。無理無茶をさせたりなどはしていません。出来る範囲でのゲート封鎖を目指しています」
「ゲートって時空の歪みですか?」
「はい。時空の歪みでは名前が長いということで政府ではそう呼んでいます」
そうか、政府管理になってもそんなに無理な難題を出されることもないのか……。って騙されますか! 今の会社だって、みんな笑顔で元気に働いてま~すって言ってたんだからね。
「政府管理になりますと、日当が出ます」
「へ? 日当? ……いくらですか?」
「五つ星スキル保持者は。安くても100万」
「え? ええ!? 100万? 日当で?」
「はい! 100万です」
驚愕……私は言葉をなくした。声が音が聞こえなくなるほどの驚き。ミズキさんが口をパクパクさせているけど、全然聞こえない。
「サカキさんの今の会社のお給料は」
「100、100万……」
「サカキさん?」
「え? あ……。今の会社の給料ですか? えっと、手取りで30万です。月給で」
ミズキさんの質問に気が付くのに少し時間が必要だった。目の前にぶら下がる100万円の札束が見えていたので。現実の月給なんて忘れかけてた。
口にするだけで今の私の給料が安いことに気が付く。あんな課長にパワハラを受けているのに30万しかもらえない。うん、私政府の犬になる。
「私を管理してください!」
「え? あ。え?」
「政府の管理下に置いてくださ~い!」
ミズキさんの両手を掴んでお願いする。彼女は困っているみたいだけど、お構いなし。
お金がすべて、お金がすべてなの。新しいDモンもたくさん買いたいし。
「分かりました! わかりましたから落ち着いてください」
「は~い」
ミズキさんの声に素直に答えて席に座りなおす。
「カード化というのはどんなアイテムでもできるんですかね?」
「ゲートの中ではゴブリンのこん棒だけしか触ってなかったので」
「ではこちらの普通のナイフをやってもらっていいですか?」
「あ、はい」
果物ナイフを手渡してくるミズキさん。私が触れるとこん棒の時と同じ文字が浮かんでくる。
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【ステンレスナイフを確認しました】
【カード化しますか?】
【YES/NO】
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私はYESと答える。するとナイフがカード化される。
「出来ましたね。このポーションもやってみてくれますか?」
ミズキさんが手渡してくる赤い液体の入った瓶に触れる。ナイフと同じように文字が浮かんでくる。
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【回復ポーションを確認しました】
【カード化しますか?】
【YES/NO】
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再度YESと答えるとカード化される。
「ん~、反則じみてますね。そのカード化したものを他の方に手渡しても大丈夫なんでしょうか?」
ミズキさんの疑問に答えるようにカードを手渡す。持つことは出来てもウィンドウなどは出てこないみたい。
「カードから元に戻せないっと。わかりました。今日の所はこれで大丈夫です。事故で疲れているでしょうから。明日は一日休んでください。元の仕事場に別れの挨拶をしてもいいと思いますよ」
「あ、はい。ありがとうございました」
「タクシーを手配してあります。都庁を出たところでお使いください」
ミズキさんは何から何まで気を使ってくれた。流石というかなんというか。信頼しかなくなっていく。
私はウキウキでタクシーに乗り込んだ。そして、新しいDモンのパックを手に入れた……と言いたいところだけど。売り切れていました。
お金があっても買えないものはあるんだよね。




